砲艦サンパブロ (1966) アメリカ

[852]スティーヴ・マックィーンとキャンディス・バーゲンの仄かな命が触れあう反戦映画の大傑作
★★★★★★

画像


スティーヴ・マックィーンの代表作にして、超名作。
月見草さんとsinoさんが大好きだとおっしゃるので
十数年ぶりに観ることにした。

じつを言うとこの作品がすこし苦手なので
観るのに多少ためらいもあったのだが。

なにが苦手なのか?
はい、あまりにも切なすぎて正視に堪えられないのです(笑)。

正視に耐えられる月見草さんとsinoさんがなんとも羨ましい。
あ…、と言っても、正視に耐えられるのかどうか
まだお聞きしたわけではないぞ…、ごめんなさい(笑)。

画像

監督は、傑作「傷だらけの栄光」や
「ウエスト・サイド物語」「サウンド・オブ・ミュージック」を撮った
ロバート・ワイズである。

先に言っておくと、
ベトナム戦争をはじめた自国アメリカにたいする
反戦映画と言われている。

それから
上映時間195分という超大作である。
ゆえに途中で休憩が入る。超懐かしい。

画像

舞台はチャイナ(中国)、時は1926年~27年3月にかけて。

27年3月というと、
歴史に詳しいひとはすぐにピンとくるはずである。

蒋介石の率いる国民革命軍が南京に入城し、
外国領事館と居留民を襲撃するという
第二次南京事件が起きた年月である。

ちなみに私はあまり詳しくないので、
Wikipediaでちょっと調べながら書いている。偉い!(笑)

事件を扇動したのは中国共産党で、
狙いはじつは国民革命軍を壊滅させるためだった
と言われている。

物語は、簡単に言うと、
米国の威信を誇示すべく揚子江に配置されていた砲艦サンパブロが、
最後、南京事件が発生して孤立してしまったアメリカ人宣教師と、
伝道女教師を救出に向かうというお話である。

画像

砲艦サンパブロ…、
きゃ~、クラシカル、可愛い、観光船みたい。
乗りた~い!乗せて~!なんて声かけたくなっちゃうでしょう。(笑)

じつはアメリカがスペインとの戦争でぶんどった木造老船。
エンジンはほとんど前世紀の遺物(笑)。

画像

1等機関兵のジェイク・ホルマンは、
砲艦サンパブロに転属を命じられ、
上海に下りると、揚子江上流に停泊している艦に向う。

その船上でかれは、やはり上流の伝道所に向う
アメリカ人宣教師ジェームソン&伝道女教師シャーリー・エッカートと
知り合いになる。

左、ジェイク…、われらがヒーロー、スティーヴ・マックィーン。
右、シャーリー…、われらがキャンディス・バーゲン。
その奥、宣教師ジェームソン…、ラリー・ゲイツ。

そう。南京事件が発生して、
ラスト、砲艦サンパブロが救出に向ったというのは
この宣教師ジェームソンと、伝道女教師シャーリーのことだ。

画像

揚子江…、広いよねえ、ほとんど海だよね。
といってもロケ地はじつは香港、台湾だったとか。

画像

ジェイクが降りた港の様子。
映画はいたるところで当時の中国の様子を再現してみせている。
それだけで圧巻…、偉い、感動。

画像

ジェイクが砲艦に着任してみると、
実際に艦を動かしているのは中国人クーリーたちだった。

マシーンが大好きなS・マックィーンは…、
もとい、1等機関兵ジェイクは それが気に入らず、
クーリーのリーダーや、ほかの砲兵たちと折り合いが悪くなる。

画像

機関室の中国人リーダーが事故で死ぬと、
ジェイクは若い中国人ボーハン(マコ岩松)を可愛がり、
機関室リーダーに育てようとする。

画像

が、ボーハンはある日、
共産党が煽動する暴徒たちに裏切り者としてリンチされる。

画像

ジェイクは全身を切り刻まれるそのボーハンを見ていられず、
艦長の命令を無視し、艦上から自分の手でボーハンめがけて銃を
発射する。

ジェイクが上海に着いたころはまだそうでもなかったのだが、
蒋介石軍、共産党軍、そして学生革命軍と、
群雄割拠の状態にある中で、
次第に民衆の外国人排斥の暴動が激しくなっていくのである。
いわば南京事件直前の様子?

映画はそうした背景をもとに、二つのロマンスを描いていく。

画像

ひとつは、
艦内で唯一ジェイクの友人である2等機関兵の
フレンチー(リチャード・アッテンボロー)と、
酒場の女メイリー(マラヤット・アンドリアンヌ)のロマンスである。

右がそのメイリーなのだが、
演じているマラヤット・アンドリアンヌは
のちに小説「エマニュエル夫人」を書いたエマニュエル・アルサン
そのひとである。

私もそのことを知ったのは後のことだが、
この映画を観ると、
あの「エマニュエル夫人」の出自がよくわかるようで嬉しい。

画像

詳細を紹介する余裕がないのが残念だが、
じつはこの二人のロマンスが私にはとても切なく、
苦しいのである。

メイリーはゆえあって200ドルで身を売った女である。
彼女に一目惚れしたフレンチーは、
その200ドルを必死になって工面し、彼女の身柄を解き放つ。

画像

メイリーもフレンチーの誠実な愛に惹かれ、
教会で二人だけの式を挙げる。
二人の愛に手を貸しつづけてきた友人ジェイクと、
伝道教師のシャーリーに見守られながら…。

やがてメイリーが妊娠するのだが、
民衆の外国排斥暴動がはげしくなり、
砲艦サンパブロの乗組員たちは上陸を禁止される。

画像

と、フレンチーは深夜ひそかに艦を抜け出し、
揚子江を泳ぎ渡り、愛するメイリーのもとへ向う。

たまたま上陸の命を受けたジェイクは、
脱走同然にいなくなったフレンチーとメイリーの身を案じ、
二人を尋ねる。

と、居酒屋の二階で身を潜めながら暮らしていたフレンチーは、
すでに風邪がもとで死亡し、そのそばには
なす術もなくただかれに寄り添っているメイリーの姿があった。

画像

ここなんだよねえ。
私が悲しくて、切なくて、正視できなくなってしまうシーン
その1は…。

このあと身ごもっているメイリーも中国人兵士に連れ去られ、
射殺されてしまう。

しかもかれらはジェイクがメイリーを射殺したことにし、
砲艦サンパブロの艦長にジェイクの身柄を要求する。
ジェイクを疫病神のように思っている乗組員たちも
かれらの要求に応じるべきだと艦長に迫るのである。

だが艦長はひとり、
星条旗の威信にかけても渡すわけにはいかないと、
中国兵士たちを威嚇射撃する。

画像

写真を盗りそこなってしまったのだが、
切なくなって正視に堪えないシーンその2はここ。

追い詰められてただなす術もなく成り行きを見守っている
ジェイクの表情を…、S・マックイーンの表情を見てると
私は胸をかきむしられてしまうのだ。

なにもしていないのに、
国家同士の対立に勝手に利用されて…、同胞にまで裏切られて、
もうなにも信じるものがないよね。

画像

いや、あった、ひとつだけ。
たったひとつだけ…、シャーリーの存在が…。
彼女が自分に寄せてくれるほのかな愛と、自分が彼女によせる想い。

この二人の関係は、
ロマンスという言葉ではちょっと言い表せないものがある。

恋人同士には違いないんだろうけど、
それすら超えたなにかもっと大きなもの…?

二人を接近させたのは、
フレンチーとメイリーの国境を越えた愛なのだが、
かといって二人ほど熱いわけではない。
むしろ、かすかで、仄かなものである。

暗闇の中でほのかに、静かに灯る、命と命とが
そっと触れ合うような…。

画像

二人はこうやってそっと見つめあい、静かに話すだけである。
故郷のことなど、たわいないことを…。

そうした二人のシーンを見ていると、
私はまた途方もない切なさに襲われて
とても正視できなくなってしまうのである。

言いかえると、
二人がこうやって静かに愛しあえば愛しあうほど、
戦争の残酷さが浮かび上がる仕掛けになっているのだ。

シャーリーを演じるキャンディス・バーゲンはこのとき、
なんと若干19歳。
しかもデビュー作(2本目?)というのだからほんとうに驚く。

画像

だがジェイクはシャーリーに別れを告げる。
自分は艦に、シャーリーは伝道所に戻る身。
愛し合うと、いずれフレンチーとメイリーのような運命を
辿らざるをえないかも知れないと思うからである。

画像

そして南京事件が起こり、
砲艦サンパブロは孤立した宣教師ジェームソンと
シャーリーの救出に向うことになる。

途中、ジェイクは、シャーリーの教え子を戦闘で殺してしまい、
伝道所に到着すると、艦長に、
自分は脱走してシャーリーや宣教師とともに伝道所に留まることを
告げる。

ついに
艦を故郷にしてきた自分に別れを告げる決心をしたのである。

が、宣教師と艦長が暗闇に乗じて現れた中国兵に銃撃され、
死亡。

画像

と、ジェイクは、自分が戦っている間に逃げろと、
シャーリーと兵2名を伝道所から逃がすことに…。

画像

ジェイク、銃撃戦の末…、異国にて、死亡。

画像

揚子江を下る砲艦サンパブロに
はたしてシャーリーが乗船できたのかどうかはわからない。

戦争に運命を翻弄される二組の恋人を
ここまで切なく必要があるのかと
私は胸をかきむしられながらロバート・ワイズに抗議したくなる。

でも、あるよね。戦争に抗議するには。
いや、こんなに切ない抗議にすら戦争は耳を貸さない…?

スティーヴ・マックィーンの青い目に
このうえない孤独と寂しさと、そして愛が漂う名画です。
キャンディス・バーゲンもほんとうにステキです。

どんな切なさにも耐えうる自信のある方は
絶対に観ておくべき作品でしょう。


●月見草さん
やっとブログの書き込みができるようになりました。
いやあ、ビッグローブ、ひどいですねえ。
PCの老舗ともあろうものが、前代未聞の障害事故起こしちゃって。
月見草さんにウェブリブログ開設をおすすめした手前、
私はもう十和田湖に身を沈めてお詫びするしかないような気持ちです。
十和田湖というのは、まあ、同じ身を沈めるなら
あの美しい十和田湖がいいなあと思ってるからなんですが。
「砲艦サンパブロ」、月見草さんとsinoさんのおかげで
久しぶりに観ることができました。
物語の展開のさせ方、シーンの作り方、おっしゃるように
ほんといかにもロバート・ワイズのミュージカルといった感じです。
それにまあキャンディス・バーゲンの美しいこと、切ないこと。
こういう女優さんにはもうめったにお目にかかれないですねえ。
「早瀬野ダム」、月見草さんのブログで、こうなってたのかあ、
時間があったら近くまで行ったのになあ、といま頃泣いています(笑)。
それになんですか、sinoさんとお二人して、
岩木山の、あの宇宙を目の当たりにしてるかのような夕景色を見、
語り合ったりして…、二人占めにするな~、わ、私にも見せろ~!
と悶々しちゃいますよねえ。
じつは数年前、岩木山に沈む夕日を見たとき、
持って行ったデジカメのファイルがすでにいっぱいになってて、
仕方なく携帯電話のカメラで撮ったんです。
そのころはまだ画質も全然だめで…。
なので、この次は絶対カメラを忘れないでくださいまし!{%泣くwebry%

●sinoさん
ほとんにすみません、うちのビッグローブのやつが…。
私もローソクの炎の中で手紙を書き、
宛名のない手紙をポストに投げ込んでるような気分でした。
そのうち仄かなローソクまで消えちゃって…(笑)。
そうですか、sinoさんのスティーヴ・マックィーン像、
この映画が原点ですか。そりゃ水兵服に参っちゃうはずですねえ(笑)。
ちなみに私はもっと古くて「荒野の七人」という西部劇です。
黒澤明の「七人の侍」を西部劇にしたものですが、
「七人の侍」を見たのは「荒野の七人」より後でした(笑)。
ラスト、sinoさんがおっしゃる通りで切ないですよねえ。
ただ、画面が暗いので、昼間の戦闘にして、
もっとカックイーンとキャンディス・バーゲンの顔見せろ
と言いたくなるところがありますよねえ(笑)。

ところで城ケ倉大橋、
sinoさん、あの橋の上からあの深い深い谷底を覗けるんですか、
びっくりしましたあ…!
私も一大決心をして
とりあえず橋の中央を10メートルくらい歩いてみたんですが、
もうそれだけで怖くなって這うように上のほうへ戻りました(笑)。
でも、手前の休憩所から眼下に眺めた山々、
もう気持ちよくて気持ちよくて、1時間くらいあそこで休んでいました。
八甲田さんの麓のほうから行くと、あのあたりで急にパッと
視界が広がるんですよねえ!
途中温泉もいっぱいあって、なんでおれは今日東京に帰らなくちゃ
ならんのだろうと泣き泣き帰ったものです(泣)。
ともあれこのたびは重い腰をお上げいただいて
ほんとにありがとうございます!
うちのビッグローブも治ったようなので、ここはひとつ、
ドンとばかでかい写真を、私の愛する岩木山と城ケ倉大橋を
ズラリズラリ!と並べてほしいなあと
ワクワクしながらお待ちしています。
月見草さんもどうぞひとつよろしくお願いします!

●たまねぎさん
そうですか、たまねぎさんも! 嬉しいですねえ。
しかし女性にこんなに人気のある作品だとは…。
いま観ると当然だと思いますが、
若い時分はホント想像もできませんでした。

ありがとうございました。


■195分 アメリカ ドラマ/戦争
監督:ロバート・ワイズ
製作:ロバート・ワイズ
原作:リチャード・マッケナ
脚本:ロバート・アンダーソン
ロバート・ワイズ
撮影:ジョセフ・マクドナルド
編集:ウィリアム・レイノルズ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演
スティーヴ・マックィーン
リチャード・クレンナ
キャンディス・バーゲン
リチャード・アッテンボロー
マコ
サイモン・オークランド
フォード・レイニー

1926年の中国。
楊子江沿いの閑港長沙に駐留する米海軍のオンボロ砲艦サンパブロ。
異国の果てのヒマな任務に慣れ切った乗組員達は、毎日秩序のない怠惰な生活を送っていた。しかし、中国国民党と学生達の一斉蜂起が勃発、否応なしに歴史の過酷な渦に巻き込まれていく。
名匠R・ワイズ監督の三時間に及ぶ大作で、題材を第二次大戦前の中国にとりながらも、製作当時激しさを増していたベトナム戦争への強烈な批判が見てとれる。
大国による海外派兵の愚かさを、出先で犠牲となる水兵達の視線を通して活写、安易に戦闘シーンに流される事無く、艦内の人間模様に重点を置いた演出は堂々たるもの。
主役の機関兵を演じたマックィーンは勿論、マコ、R・アッテンボロー、R・クレンナ、S・オークランド(彼は後に「ブリット」でもマックィーンと共演)と、出演者の多くが見事な演技を披露、見応えのある仕上りになっている。

 

この記事へのコメント

月見草
2012年11月01日 12:07
うおっ「砲艦サンパブロ」だぁ~~~嬉しいな!
ロバートワイズ監督とは知りませんでした。道理で映像が綺麗で、まるでミュージカルのようでした。あの中国女性役メイリーさんが「エマニェエル夫人」の作者とは驚きです。
昨夜てつさんへ早瀬野ダムの返信しようしましたが、アクセス上手くいかなかったです。
月見草
2012年11月01日 12:17
てつさんのブログは今コメント出来たので、もう少しお借りして、sinoさんにも返信します。ほんとに昨日の夕焼けの岩木山素晴らしかったですね!青森からの高速道路で、夕日が静かに沈み、あたり一面茜色に染まり、岩木山が黄金色からしだいにピンクがかった何との言えない色に変化していく様子がパノラマのように車窓から見え、まるでレンブラント?の絵のような・・・すいません志賀直哉、いや我がふるさとの太宰治のような表現力がなくてこんなコメントしかできませんが、本当に美しく感動しました~
月見草
2012年11月01日 12:25
またまた調子に乗って、てつさんのブログお借りしてしまいました。月見草のブログはうんともすんとも言ってくれません。sinoさんと同じ時刻に岩木山を眺め、てつさんとは昨夜同じ時間に同時にコメントしたのですが、月見草のは届かなかったです。
でもでも、不思議なトライアングル、三角関係ですねぇ~無意識のなかの意識的関係と申しましょうか・・・・・?
とにかく早瀬野ダムにてつさんが佇んでいたということは同じ大鰐で同じ空気を吸っていたということですね!それだけでもう感激・・・・です。
sino
2012年11月06日 00:16
やっと、回復しましたね~。ためしに「もう、いいか~い?」を何度打ち込んだことか!。…(笑)

この間、今年撮った写真をプリントしました。岩木山や夜の雲、城ケ倉大橋からの眺めなどです。まだ月見草さんには連絡してないのですが、近日中には見ていただけるかな?。お楽しみに!。私の写真などを見たいと言ってくれるのは山崎さんぐらいのものです。貴重な方!。…(笑)
これからも、ご贔屓に。…(笑)

「戦艦サンパブロ」ありがとうございます。
実は、一度きり、テレビで観ただけなのです。解説を読んで、大人になった私には、確かに切ない、為すすべもなく切ないと感じる映画だな~、と思います。若い頃は、実感が伴わないから観れていたものが、この頃はとんと、観れなくなっていますね~。主人公の最後がやはり印象深く、現実の死は、こんな風にあっけなく、訪れるのか、彼が何を思おうが、知る者もなく、報いる者もいない。消え行くのみ。あんなに青い瞳が美しかろうが、心が美しかろうが
戦争みたいな粗雑なものの前では、無価値ですもんね~。
それにしても、マックイーンの水兵服、似合いすぎ!。
このイメージが初期の彼のイメージでしたね~。
たまねぎ
2012年12月15日 20:05
とても印象に残ってる映画です。
思い出したら、また、切なくなりました・・・

この記事へのトラックバック