もう我慢できない (2009) 韓国

[934]30代前半の男と女の複雑な心や悩みを描いた秀作
★★★★★☆

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「シングルズ」「お熱いのがお好き」
「ワンダフル・ラジオ」などを撮っている
クォン・チリン監督の作品。

う~ん、悪くないんだけどもう一個だよなあ
という感じの作品が多かったんだけど、
この作品は、監督にドンピシャ、いいじゃん!

原題は「耐えられない」。
内容もジャケットではえらく扇情的に広報されてるが、
そういう映画じゃなく、
生真面目すぎるほどのおとなの愛のドラマ。

DVD化に際して監督はもう
タイトルや情宣にたいする権限がないのかもしれないが、
歪曲されてちょっとかわいそうだよね。

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ジフン(チュ・ジャヒョン)は出版社のチーム長である。

すでに32歳。
長い付き合いの恋人(売れない歌手)はいるが、独身。
このまま編集者をやっていてもしようがない
とも思っているが、さりとて将来の設計も描けない。

そんなある日、
ある作家の原稿が予定通りにとれなかったとして
突然会社に解雇を言い渡される。

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あたまにきて同僚たちと居酒屋で飲んでいたら、
ヤクザまがいの男二人に絡まれ、泥酔の勢いも手伝い、
焼酎瓶で男どものあたまをかち割る(笑)。

まではよかったが、警察に拘留され、
示談金を工面するためマンションまで売っ払うことに。
ああ、32歳にしてついに野宿者に転落(笑)。

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ちなみに彼女、
拘置所でこんな格好をしてメシを食らう野生女なんだよ。
う~ん、なんかめちゃ可愛いんだけど。

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しようがないわね、しばらく家においでよ、
と彼女に手を差し伸べたのは、
無二の親友のキョンリン(ハン・スヨン)。

彼女は
ジフンとは正反対に生真面目なお嬢さんタイプで、
すでに優秀な医師ミョンウォン(チョン・チャン)と結婚している。

夫とともに妊娠を待っているのだが、
なかなか妊娠をしないのでいま
夫の勤務する病院でいろいろと検査をしている最中だ。

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遠慮というものに縁遠いジフンはさっそく居候生活を開始。
おいこら、ジフン、なんじゃその格好は!
だよね。

生真面目なエリート医師ミョンウォンにすれば、
突然、わが家に野生ザルが侵入してきた感じ(笑)。

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ジフンは編集者としての就活をはじめるが、なかなか仕事はない。
長年付き合ってきた恋人からも別れを告げられる。

二人とも、長い春に終止符をうつことで
人生を新しく始めなければといった焦りが
そこはかとなく現れていて、このあたりもけっこういいんだよね。

ジフンは元上司の先輩に会い、小説でも書こうかなと呟く。
学生時分、彼女は相応の才能を発揮していたのだ。
先輩はやっとその気になってくれたかと、
内心おおいに期待する。

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ある日、ミョンウォンは可愛がっている後輩医師の
トンジュ(キム・フンス)を家に連れてくる。
キョンリンはドキリとする。

病院でかれに検査をしてもらったりしているのだが、
心の鎧をすべて脱ぎ捨てたかのようなトンジュに
惹かれている自分がいるからだ。

ある日、彼女はトンジュに
夫の目の前でいきなりプレゼントを差し出される。
ひとりになって覗いてみると女性用下着である。

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キョンリンはバカにされた怒り、職場に突っ返しに行く。
と、トンジュは来るのがわかっていたかのようにキョンリンを抱く。

彼女ははじめ抵抗するが、
トンジュの強引さに引きずられたかのように
自分の欲望を剥き出しにし、かれにすがりつく。

セックスはそう言ってよければ人間をやめることである。
日常的な、社会的な束縛を一切放り出して
ケモノに戻ることである。自由になることである。
そうした瞬間がないと、ヒトは束縛の中で窒息死するしかない。

夫のミョンウォンはたしかにやさしいが、
かれは生真面目なため、
セックスのときもキョンリンを自由にしてくれない。
ケモノにしてくれない。キョンリンの生真面目さを壊してくれない。

二人とも身体的になんの問題もないはずなのに、
なかなか妊娠しないのはその「喩」である。
二人がイキモノになれないからである。

キョンリンがトンジュに惹かれるのは、
トンジュが相手なら自分も壊れることができると思ったからだ。
この日を境にキョンリンは
ひそかにトンジュと逢引をはじめる。

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一方、ミョンウォンは…、
高度成長期の日本のサラリーマンみたく、
帰宅すると生真面目にテレビの野球中継を観ている
くそおもしろくもないエリート男である(笑)。

ジフンも超苦手な、「ムカつく」人種だが、
彼女はキョンリンと違い、酒が入ると野ザル丸出しにして、
生真面目なミョンウォンをからかったりする女である。

なのでミョンウォンのほうも
彼女といると次第に貧しい家系の地がひっぱり出されてくる(笑)。

はやい話、
「ジフン-ミョンウォン」の関係は
「キョンリン-トンジュ」のちょうど裏返しの関係になってるのだ。

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ある時、ミョンウォンはすこし本心を洩らす。

子供のころ、家が貧しくて嫌だった。
医者の息子の家に遊びに行った。
プール付の豪邸で、高価な野球道具が泥まみれのまま
あちこちに放り出してあった。

以来、医者になってあんな家に住みたい、
家を買って子供とキャッチボールしたい。
そう夢見てひたすら勉強してきた。
友だちにガリ勉とムカつかれても仕方がないほど。

まあ、望みどおり医者になれたのだが…、と。

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ある日、ジフンはミョンウォンが車の中で
トンジュと激しく抱き合っている姿を目撃する。

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ジフンにはキョンリンの気持ちもわかる。

絵に描いたような幸福を夢見ているミョンウォンに「仕え」ていると、
ムカつくだろうし、窒息するだろう。
でもキョンリンは優等生だから、お嬢さんだから
とても夫ミョンウォンには正面から反抗できない。

で、浮気するのはしょうがないかなあ。
浮気するだけでも彼女の進歩かもなあと思い(笑)、
さりげなくキョンリンに忠告する。
浮気ばれないようにしなさいよ。
もしばれても言い訳は一切しない。夫を傷つけるだけだから、と。

キョンリンは笑う。
トンジュとの関係は浮気ではなくて愛なのだ、少なく彼女にとっては。
それも離婚覚悟での。

もちろんジフンも彼女の性格をよく知っているので
そうではないかと内心、心配をしている。
そうなったらそうでしようがないかもしれないが、
ただどうも相手の男が、トンジュが虫が好かないのだ。(笑)

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ジフンとミョンウォンは、
帰りが一緒になってたまに酒場で飲むようになる。

そんなある時、
ジフンがたまたま将来にたいする不安をクチにする。

と、ミョンウォンは
信じられん、君にも不安があるのかといった感じで(笑)、
話をする。

じつはぼくも怖い夢を見ることがある。
いまの幸せは全部夢で、
朝起きてみると家は以前と同じボロボロの家なのだ、と。

ミョンウォンは結局、
それが怖くてガリ勉時代の自分を、
自分の生真面目さを壊すことができないでいるんだよね。

ジフンは、ミョンウォンのそんな心を知って、
なんだ、こいつ案外可愛いじゃないかと思ってしまう(笑)。

も少し言うと、
彼女は将来にたいする不安を抱えているものだから、
ミョンウォンの中にある不安に親近感を覚える。
と同時に、かれの中に自分にはないものを見て
ちょっと惹かれてしまうのだ。

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その帰りのタクシーの中。
酔って例のごとく野ザルと化したジフンは、
ミョンウォンにしなだれかかり、すり寄り、果敢にキスをする(笑)。
このときのミョンウォンの戸惑いが可愛いぞお(笑)。

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さらに自宅マンションのエレベーターの中。
野ザルが小悪魔と化し、友人の夫を誘惑する(笑)。

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と、友人の夫はその誘惑に堪らず、彼女の唇に吸いつく(笑)。

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ととととと…、ジフンは、まだまだそんなものじゃだめ、
ホラ、その生真面目さ優等生なんか脱ぎ捨てなと言わぬばかりに、
ミョンウォンのワイシャツを脱がせ、
ネクタイごとからだを引き寄せ、かれにむしゃぶりつく(笑)。

そうなんだよねえ。
アホな野ザルに見えるが、じつはものすごく繊細な心の持ち主で、
そこにはとても複雑な感情が入り混じっている。

かれを好きになっているのは事実だが、
妻に浮気されてる可愛そうなやつという思いもあれば、
あんたがその生真面目さを脱ぎ捨てないからキョンリンに浮気されるのよ。
しっかりしなよ、あたしが脱ぎ捨てさせてあげるからみたいな思いも、
キョンリンにすまないという気持ちもある。

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その翌日の夕方、バッティングセンターにて。
「すまない。夕べは魔がさして。
キョンリンを愛している。理解できるよね」と謝るミョンウォン(笑)。
「説明するな。理解したくない」と怒り、黙々とバットを振るジフン(笑)。

ジフンに限らず、たいていのおとなは
こういう複雑な感情を生きてると思うのだが、
この映画は
そういうおとなの複雑な感情をとてもよく表現してみせてるので、
けっこう見入っちゃうんだよね(笑)。

さて、この四人の関係はどうなるのか?
あとはどうぞ自分の目で確かめてくださいな。

意外といえば意外な、
意外でないといえば意外ではない結末に
けっこう感動したりするかも(笑)。

ちなみに私の言葉で言うと、
この映画のテーマは男女の、夫婦の「相性」ってやつですな(笑)。

というと呆れられそうだが、
この世で相性ほど大事なものはないのだあ~!

いまや先進国の離婚率は
どこの国でも異常なほど高くなってしまったが、
そのいちばんの原因は「恋愛婚」の幻想が蔓延ってしまったから。

恋愛婚おおいにけっこうだが、
恋愛婚ってやつではなかなか「相性」を見極められないんだよね。
だから結婚したとたんうまくいかなることも多い。

いちばん「相性」を見極められるのは誰か?
昔で言えば隣近所によくいた「お見合いおばさん」ですな(笑)。

あの娘さんとこの青年なら相性バッチシ。
結婚してもうまくいくでえ!
と、お見合い結婚をさせてまわっていたおばさん。女性。

相性ってのは本人たちの無意識の問題。
本人たちには意識できない問題。
他人のほうがよく見える、わかる問題。

無意識は家庭で作られるものだから、
あそこの家庭で育った娘と、ここの家庭で育った青年ならうまくいくわ。
というのが相性を見極めるコツで、
それは両方の家庭をよく知るひとのほうがわかる。

この映画の場合だと、
「ジフン-ミョンウォン」「キョンリン-トンジュ」のほうが相性がよくて、
結婚してもお互い自由になれるってことだよね。

でも恋愛婚になると最初からはなかなかうまくわからない。
なので家庭に入るといろいろと衝突が起きたりして悩みが多くなる。
その現代的な悩みをけっこううまく捕らえながら、
しかもけして後味の悪くない作品に仕立てあげてるんだよね。

おとなのかたにはおすすめの一本かも(笑)。

チュ・ジャヒョンもチョン・チャンも
私が観た中ではこれがいちばんステキだったなあ。


●月見草さん
おっ、来ましたねえ、月見草さん。
家族はもうひとえに「食」なのだあ!
といってもいいんじゃないでしょうかねえ。
最近の子供たちに異変が起きはじめたのは、
家族の「食」が壊れ始めたからです~と
家族論の先陣を切って私が言ってきたことなので、
あ、誰も言ってくれないから自分で言ってるんですが(爆)、
もう間違いないと思いますねえ~(笑)。
私は九州生まれでラーメンは子供のころからとんこつラーメンで、
いまだに関東の醤油ラーメンが食えません。醤油うどんも(笑)。
そのくらい「食」の問題は大きいんだぞお~と叫んでます。
夫婦がうまくいくようになる一番手っ取り早い方法は、
かあちゃんが、とうちゃんがでもいいんですが、
連れ合いに自分の作った食はうまい!と
思わせることだとおもいます(笑)。
食が合う=相性が合う。コレです!(爆)
しかし月見草さん、最近はお見合いおばさんを!応援します!(笑)
あ、映画、この夫婦は元には戻りません(笑)。
離婚するんですけど、結果的にはお互いの理解が深まり
後味のよい別れになります。
浮気相手の男も悪い男に見えるけど、
じつはけっこういいやつだったりします。
野ザルのジフンもいい小説が書けて、ミョンウォンと…(笑)。
ただし一番の見所は、この二人の女の深い友情なんですよね(笑)。

ありがとうございました。

■114分 韓国 ドラマ/ロマンス
監督: クォン・チリン
脚本: ハン・チャンソン キム・スア
撮影: チェ・ジンウン
出演
チュ・ジャヒョン
チョン・チャン
キム・フンス
ハン・スヨン

挑発的で率直な二人の女が生涯初めて感じる胸のときめきの瞬間を感覚的かつ写実的な映像で描き出した映画。
作家を夢見る出版社職員チフンは,単にシングルという理由だけで職場で一番最初に解雇され,7年つきあったボーイフレンドからも離別を通知される。
酔った勢いで,腹立ちまぎれに犯した事故で,すっからかんになったチフンは,結局,年齢32歳にして友人キョンリンの家に頼って暮らす屈辱を体験する。
キョンリンの優秀な夫ミョンウォンとの同居は窮屈だったが,偶然に室内野球練習場でミョンウォンと会ったチフンは,意外に素朴な夢を持った彼に魅力を感じて,次第に心が動き始める。
成功している医師の夫を持つキョンリンは,誰もが羨む安定した生活を送っているが,繰り返される日常に息がつまっている。
そんなある日,彼女の前に魅力的な年下の男が現れる。自分に向かってストレートに近づく夫の職場の後輩トンジュ。彼の猪突的な魅力に陥ったキョンリンは,生まれて初めて感じるビリッとしてハラハラする危険な恋を始める。

 

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この記事へのコメント

月見草
2013年05月13日 13:25
山崎さん、結婚は相性が一番・・・・にまたまた反応してしまいました~
「相性って本人たちの無意識の問題、無意識は家庭で作られる」・・・・なるほどなぁ~わかるような気もします。
価値観の相違、性格の不一致、いろいろあるでしょうが、そんなの一致するはずないかぁ~「相性が合わなかった」もしかして一番いい納まりどころかも?昨今よけへわ(余計な世話を焼くこと)の近所のおばさんいなくなったもんね!てつさんもう一つ、食の相性も結婚生活には重要なポイントと思いますが、長~く生き抜くためにはやっぱこれも大事でしょう(笑)
それにしても結末知りたいなぁ~不倫が不倫でなくなり相性の良い同士で?それとも元のさやに丸く納まったってこと?月見草の推測だとヒントは相性、…ピンポンかな?

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