ケシ畑の小さな秘密 (2012) コロンビア

[967]子供たちは、地雷の埋め込まれた森の向こうにある湖に向かった ★★★★★★

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途方もなく長い内戦が続いているコロンビア。
9才の少年シモンは、農夫の父親エミリオと、
ゲリラ(コロンビア革命軍)の襲撃を逃れ、山へと避難した。

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母親、兄、弟がいた。
しかし三人は、車で出かけた日、ゲリラと間違われ
民兵に殺害された。

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父親は、遠く離れた町に住む従兄弟のウィルソンを頼った。

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ウィルソンは快く二人を受け入れた。
かれは、ケシ(=アヘン)を栽培するボスのところで働いていた。
この町も内戦に巻き込まれ、仕事などなかったからだ。

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ウィルソンはエミリオをボスに紹介し、
エミリオはケシ畑で働くことになった。
かれは息子シモンをけして畑に連れて行こうとしなかった。

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シモンは隣家の少女ルイサと仲良くなった。
彼女は仔犬を拾い、ルフィーノと名づけ、飼っていた。

しかし飼い主が現れ、ルフィーノは引き取られていった。
淋しがるルイサを見て、シモンは名案を考えついた。

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飼い主の女性は昼間、働きに出ていた。
その留守中に、家の塀によじ登り、こしらえたカゴでルフィーノを吊り上げ、
そうしてルイサの所へ連れて行き、
飼い主が帰宅するころ、また庭へ戻せばいいのだ、と。

シモンは実行し、それを毎日続けた。

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ルイサは喜んだ。

そうして「こんど、山頂にある、秘密の湖に連れてってあげるね」
とシモンに約束した。

ある日、シモンは仕事にでかける父の後をこっそり追い、
ケシ畑に行った。

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ボスと部下に捕まり、スパイかと疑われた。
父が事情を話し、許しを乞うた。
ボスは許した。

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どころかシモンをひどく可愛がるようになり、
銃の撃ち方を教えたりした。

1年前、ボスは、ケシ畑を襲撃されたとき息子を射殺されていた。
シモンはその息子代わりだったのだろう。

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そんなある日、
従兄弟のウィルソンは、エミリオに相談を持ちかけた。

近い日にゲリラが町へやってくるという噂だ。
民兵もやってきて銃撃戦がはじまるだろう。巻き込まれたら危ない。
シモンにヤクを盗ませて、町を出よう。
ボスに可愛がられているので、シモンなら倉庫に入っても調べられない、と。

エミリオは見つかったら殺されると反対する。

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ウィルソンはほかにも事情を抱えていた。
金を借りて妻子を危険な町からよそへやった。
その金を返せと、借金した相手に迫られていたのだ。

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ある日、突然、ゲリラが町を襲ってきた。
噂はほんとうだった。
エミリオとシモンも巻き込まれたが、なんとか難を逃れた。

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数日後、シモンとルイサは、
一足違いでルフィーノを飼い主の庭に戻しそこねた。

飼い主が、ルイサの仕業だろうと怒鳴り込んできた。
ルイサは、ルフィーノをシモンに託し、
屋根からシモンを逃がした。

それが別れになるとも思わずに…。

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直後、民兵たちがルイサの家に押し入ってきた。
ルイサの父親は慌ててルイサを引き戸に押し込んだ。
かれらは父親と母親を広場へ連れ去った。

静かになったあと、ルイサは戸を開けた。
家の中にはまだ民兵がひとり残っていた…。

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シモンはルフィーノを受け取ったあと、父のいるケシ畑に行った。

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そのころ、ルイサは父や母、ほかの一家と一緒に
広場に立っていた。立たされていた。

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背後の民兵たちが銃を構えた…。

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翌日、シモンは、
町にいくなという父の目を盗み、町へ下りた。

町へ行くと、広場のほうから
「人殺し!」「神様!」という悲鳴と、泣き声が聞こえてきた。

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広場にはいくつもの死体が転がっていた。
その遺体にすがりつき、みんな泣いていた。

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シモンは、その遺体の中にルイサを見た。
声も、心もとうに失い、ただ見た、
きのうまで一緒だったルイサを、そこに…、目の前に…。

ルイサ一家や、ほかの一家が射殺されたのは、
父親らがゲリラに通じていると民兵軍が疑ったからだった。

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シモンはケシ畑に帰り、水で顔を洗った。
水の冷たさで心が戻った。涙が流れた。

叔父のウィルソンがやってきて、この間の話だが、と言った。
ヤクを一袋持ち出してくれと、すでに頼まれていた。
シモンは「わかった」と答えた。
もうすべてがどうでもよい気がした。

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ウィルソンと倉庫へ入った。
かれはシモンのポケットにヤクを一袋ねじこんだ。
父エミリオがたまたまそれを目撃し、止めた。

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が、すでに遅かった。
見張りの手下たちに捕まり、ボスの前に突き出された。

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ボスは裏切りものにすこしも容赦なかった。
あんなに可愛がっていたシモンに銃を放った。
1発目は幸い、急所を外れた。

再度銃を向けたとき、倉庫から突然炎が上がった。
ボスの片腕の男が内戦で危険な町を出るため、
騒動のどさくさに紛れ、ヤクを盗み、火を放ったのだ。

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エミリオとウィルソンはその隙をつき、
シモンを連れてケシ畑を脱出した。

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三人は、ヒッチハイクをし、内戦の危険のない
どこか遠い町を目指そうとした。

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シモンは、ルイサを想った。

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いつだったかルイサは約束通り、
地雷の埋め込まれた森を潜りぬけ、

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山の谷間にある秘密の湖へ連れて行ってくれた。

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二人の前には、エメラルドグリーンの湖が広がっていた。
静かで、美しい、大きな湖だった。
シモンとルイサは、そこに「平和」を見た。
殺し合いのないコロンビアの村を、町を、国を。

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あそこは天国だったのかもしれない。
ルイスはいまあそこに、
あの湖にいるのかもしれないと思った…。


1964年のゲリラ蜂起以来、
コロンビアはじつに長い間、内戦に苦しんでいる。
そう言ってよければ、左翼ゲリラ、右翼民兵、麻薬組織の三つ巴戦だ。

そうした中で生きることを強いられている子供の姿を
じつに見事な筆致で描いた傑作である。

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映画の技法も、
アキ・カウリスマキ監督の「ル・アーヴルの靴みがき」より
さらに単純だ。

こうした単純な技法でこんなにも素晴らしい映画が撮れるのは、
やはり、みんながここに描かれているような苦難を、
ドラマを現実に生きているからだというしかない。

FXだ3Dだなんて言ってやってるハリウッドが
いかに呑気でノー天気な国かよ~くわかるよね。
日本も右に倣えだが、

そういうことに命を賭けるのは結局、
その人間の中が空っぽだからなんじゃないかとおらは思う。(笑)

実際は、震災などで苦しんでいるひとたちも多いのにさ。

ぜひ観てください。
この二人の子供の演技も、ほんとうに素晴らしいです。


■86分 コロンビア ドラマ
監督: フアン・カルロス・メロ・ゲバラ
脚本: フアン・カルロス・メロ・ゲバラ
撮影: イバン・キニョネス
出演
ルイス・ブルゴス
カルロス・ウアルパ
ルイス・ロサーノ
パウラ・パエス
フアン・カルロス・ロセロ

内戦状態が続くコロンビアで、農夫エミリオと9歳の息子シモンはゲリラの襲撃を逃れ山へ避難する。いとこのウィルソンを頼って行った村では仕事もなく、非合法栽培のケシ畑で働くしかない。
シモンは隣家の女の子ルイサと仲良しになる。ルイサが、可愛がっていた迷い犬を飼い主に引き取られ悲しんでいると、飼い主が出かけている日中だけ犬を盗み出してルイサを喜ばせる。だが、二人が遊ぶのは地雷の埋まった森の中、ケシ畑には空から散布される農薬の雪が降り注ぐ山の暮らし。
ある日、父の後をつけてケシ畑に迷いこんだシモンは、一帯を仕切る麻薬カルテルのボスに見つかってしまう…。

 

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