カイロ・タイム ~異邦人~ (2009) カナダ

[1013]イスラム文化が作りだしたカイロの風景に陶然としてしまうよね ★★★★★☆

画像


偶然手にして観たエジプト・カイロ観光映画。

観光映画だからといってバカにしないでね(笑)。
コレは、あまりお目にかかれない、素晴らしき観光映画なんだから。
そのあまりの美しさにきっと魂消るよ。痺れるよ。

カナダの女性雑誌編集者ジュリエット(パトリシア・クラークソン)は、
国連で働いている夫マーク(トム・マッカムス)と合流して
休暇を過ごすため、カイロを訪れる。

が、空港で出迎えたのは夫ではなく、
かつて夫の下で警備員として働いていたエジプト人、
タレク(アレクサンダー・シディグ)という男だった。

画像

夫はガザの難民キャンプで働いているのだが、
トラブルが起きて来れなかったのである。

ジュリエットはナイル川沿いのホテルに投宿し、
夫を待つことになる。

画像

が、夫はなかなか現れない。

彼女は仕方なくひとりで街に出てみるのだが、
男たちがしきりに近づいてくるので、怖いし、めちゃ疲れる。

で、タレクの経営するコーヒー店に駆け込み訴えをする。

なんなのよ、この街の、カイロの男たちは!
気が狂いそう。この店の客も変よ、
私をジロジロ嘗めまわすように見て! と(笑)。

なんのことはない、
コーヒー店は女性入店禁止だったんだよね(笑)。
え~、そんな店ありかよ!? と私だって驚くわな。

画像

よく考えりゃエジプト人の大半はイスラム教徒だから
当たり前と言えば当たり前だし、

素肌を晒してひとり街を闊歩するジュリエットのほうが、
かれらから見ると変な訳だね。

男を誘ってると見られて、
男たちに「おい、おれとヤろうぜ」と
声をかけられても仕方がないってことになる。

でも観光気分が先だって、ジュリエットも私も
ここは「異なる国」だってこと忘れちゃってるから
イチイチ動転させられるわな(笑)。

タレクは、カナダ人マークの下で働いていたので、
西洋文化を生きてるジュリエットの
動転する気持ちがすこし理解できる。

で、旦那さんマークが迎えに来るまで
私が、と街の案内役をかってでる。
彼女の話相手をつとめる。

画像

ほれ、ナイル川だよ(笑)。
美しいだろう、異国情緒たっぷりだろう。

画像

タレクにガイドされながら
ジュリエットは少しずつイスラム教徒たちの生活、文化に
触れていく。

中でも彼女が一番関心を抱いたのは
ストリート・チルドレンの多さなのだが、
不思議なことにその映像は一度も現れないんだよね。

エジプト側が撮影制限を行ったのかなあ。

ちなみに私たち日本人は彼女同様、
ストリート・チルドレン=不幸とみなす傾向にあるが、
近年私は、それはヨーロッパ的世界観の表れで、
もしかしたら一元的すぎるのかもしれない
と思うようになってきている。

これも韓国映画の影響かもしれんなあ(笑)。

画像

ここは唯一、それに近いシーン?
10歳前半の子供たちが工場で絨毯を織っている。

ジュリエットは、
貧しくて学校にも行けず、かわいそうに、と思う。
タレクには当然異和を抱かない。

画像

タレクにガイドされながらカイロを歩いたり、
かれの友人たちと話したりしているうちに
ジュリエットの中に微妙な変化が生まれてくる。

カイロの風景に惹かれていくのだ。

画像

その国の風景はどんな風景であれ、
すべてその国の文化が作りだしたものである。

この映画は全編カイロを舞台にしてる訳だが、
ここに現れるカイロの風景はすべて
イスラム文化が作りだしたものなのだ。

そしてカナダ人のジュリエットや、観てる私が
そのカイロの風景を美しいと感じるのは、
まさにそれが「異なるもの」だからである。

目の前の異なる風景に触れることで、
遠くへ、異なる世界へ誘ってくれるからである。
風景がそのチカラを持っているからである。
だから「美しい」と感じるのだと言ってもいい。

画像

この変容は、
ジュリエットとタレクの関係にも訪れる。

キリスト教文化を生きているジュリエットと、
イスラム文化を生きているタレクは、
ものの感じ方も、考え方もずいぶん違う。異なる。

が、異なるがゆえに、
互いが互いを確かなひとと感じはじめるのだ。

性的なことで言えば、
異なるがゆえに、互いが互いに「異なる性」として、
つまり異性として現れてきて、惹かれあうようになるのだ。

ま、はやい話、好きになっちゃう訳さね。

画像

やっぱり旅はヤバイよねえ。
アバンチュールさせちゃうよねえ。
ましてカイロだもんなあ、クレオパトラだもんなあ…、と私は思う(笑)。

しかし二人とも成熟したおとななので、
血気盛んな青年たちと違い、互いに告白しない(笑)。
キスもしない。見つめあいはするが。

画像

代わりに二人はそのままピラミッドに向かう。

画像

ここはじつは、ジュリエットが
二人で行こうと夫と約束をしていた場所なので、
それまではけっして行こうとしなかった場所なんだよね。

画像
画像

このあと二人は、彼女が投宿しているホテルへまた帰る。
このままベッドインするんだろうなあ、
と、つまらぬことを考えていると、

画像

お~っと、難民キャンプ場にいるはずの夫マークが
迎えに来ていたのだった!

画像

おまえ、来るなよ、もう来なくていいんだよ、異性でもないくせに。
おらがジュリエットが可愛そうじゃないかよ…、
と思うよねえ(笑)。

しかし、ホント、タレクを前にすると
全然「異性(男)」に見えなくて笑っちゃうよねえ。
気をつけようぜ、世の夫諸君、
われわれは妻の目にはこんなふうに見えてるんだからね。

というお話(笑)。


監督は、カナダのルバ・ナッダという女性監督で、
父はシリア人、母はパレスチナ人なのだという。

とにかくカイロの風景描写が素晴らしい。
異邦人ジュリエットの目に映る
「異なる風景」としてのカイロを見事に積み重ねてみせてる。

同時に異なる性とはなにか
ということをさりげなく、しかも見事に語ってみせてる。

カイロの風景も堪能できるし、
これはちょっとした、おとな向けの、おすすめ作品だよ。

画像

ちなみにこれは「白い砂漠」。

画像

これはジャン=レオン・ジェロームが描いたクレオパトラ。

あ、関係ないか。
観てたら超久しぶりに、
そう言えばクレオパトラどうしてんだろう
と思いだしたもんだからさ(笑)。


■90分 カナダ/アイルランド  ドラマ/ロマンス
監督: ルバ・ナッダ
製作: ダニエル・アイロン デヴィッド・コリンズ
製作総指揮: チャールズ・パグリーズ クリスティーン・ヴェイコン
脚本: ルバ・ナッダ
撮影: リュック・モンテペリエ
音楽: ナイアル・バーン

出演
パトリシア・クラークソン ジュリエット
アレクサンダー・シディグ タレク
エレナ・アナヤ キャサリン
アミナ・アナビ ヤスミン
トム・マッカムス マーク

エジプトの首都カイロを訪れたヒロインが、仕事で遅れた夫に代わり街を案内してくれたエジプト人男性との淡く儚いアバンチュールに胸を焦がすさまを、美しくエキゾティックな映像とともに綴る大人のロマンティック・ストーリー。主演は「エイプリルの七面鳥」のパトリシア・クラークソン、共演に「シリアナ」のアレクサンダー・シディグ。監督はシリア人の父とパレスチナ人の母を両親に持つカナダ人女性、ルバ・ナッダ。
国連職員の妻で雑誌編集者のジュリエットは、パレスチナのガザ地区で働く夫と一緒に休暇を過ごすため、エジプトのカイロへと降り立った。ところが、現地で落ち合うはずの夫は仕事のトラブルで遅れることに。代わりに空港で出迎えてくれたのは、夫の旧友でエジプト人のタレクだった。彼は、異国の地で夫に待ちぼうけを食わされ、時間を持て余すジュリエットを気遣い、自ら案内役を買って出る。最初は異文化の洗礼に戸惑いと不安を感じていたジュリエットも、タレクの案内のおかげで少しずつこの国の文化と魅力を学んでいく。そしていつしか、紳士的なタレクに思いがけず心惹かれていくジュリエットだったが…。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック