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zoom RSS 少女は自転車にのって (2012) サウジアラビア

<<   作成日時 : 2014/07/14 16:20   >>

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[1036]映画館のないサウジアラビアに生まれた傑作 ★★★★★☆

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サウジアラビアで初めて女性が撮った
として話題になった映画。
ようやく観ることができた。

最初に感想を言っておくと、
小学生が書いた作文を素人がそのまま撮ったような、
ある意味ひじょうにつたない作品である。

が、この「つたなさ」は、
じつは私たちが一番大事にしなければいけないものだ
と教えてくれる…、そんな作品。

世阿弥は「初心忘るべからず」と言ったが、
言ってみればその「初心」を秘めていて、
凡百の映画を吹き飛ばすチカラを持っているのだ。

原題は「ワジダ」。
主人公の少女の名前である。

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授業中、コーランの勉強もせずよそ見ばっかりしてるので、
先生に、炎天下に立たされてしまうこの女の子。

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彼女はある日、
空中を走る無人の自転車を見て、
あの自転車は私に乗ってほしいのだ、私を待ってるのだ
と直感する。

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種を明かすと、トラックが荷台に乗せて
この店に運んでた訳だけどさ(笑)。

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彼女にはちょっとばかし仲のいい男の子がいる。
立派な自転車を乗り回して、
なにかとちょっかいを出してくるアブドゥラである。

で、私も自転車を買いたい。
自転車で競走してアブドゥラ打ち負かしてやる!
と、危険な小遣い稼ぎなどをして
お金を貯めている最中なのである。

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その危険な小遣い稼ぎのひとつ。
上級生が書いたラブレターを相手の男に届け、小遣いをもらう。
これは「郵便屋さんちょっと」といった可愛い仕事ではなく、
ウラ社会で言う「運び屋」。

イスラム社会のサウジでは、
女性が男性にラブレターを出したことが発覚すると
処刑されかねないからである。

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これもそのひとつ。
ひそかに海外のラジオを聞いて、
流れている音楽をテープに収録してクラスメートなどに売る。
立派な密売。これも発覚すると処刑?

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これは例の自転車を売っている店の主人に、
「あの自転車は私が買いにくるまで誰にも売らないで」
と言い、そのカセットテープで買収するシーン(笑)。

おじさんが喜んでいるのは言うまでもなく、
彼女に「カセットテープ」で稼げるという非合法手段を
伝授してもらったからである。

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こんな可愛い顔をしてるのに、やることは凄いのよ。
が、そんな小遣い稼ぎではとうてい追っつかない。

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で、おかあさんに自転車買ってとねだってみるのだが、
当然、女の子が自転車だなんて、と即却下される。

サウジでは女性が自転車に乗ることも禁止されてる?
女性が自転車に乗ってるシーンは出てこないし。
ちなみに女性は車の運転はできない。

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これは彼女のパパ。
おみやけだと彼女に「火山石」をあげるシーンがあるので、
石油発掘現場で仕事をしてるのかな?
そのせいかどうか知らないが、家にはほとんどいない。
一夫多妻制で四人まで妻を持てるので、
あるいはほかの妻と住んでいるのかも。

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これはパパの家の家系図。
ただし男だけであなたは入っていないとママに教えられ、

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ならば、と、こうやってその家系図に
自分の名前を書き加える(笑)。

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そんな彼女にビッグ・チャンスが訪れる。
優勝者は1000リヤルもらえるという
学校主催の「コーランの暗誦大会」だ。

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ワジダは、校長先生に
「大会に参加します。私は心を入れ替えることにしました」と
報告する。
そう報告しないと参加させてもらえないほど
彼女は素行不良生徒と校長先生に睨まれているのだ(笑)。

ちなみに女子生徒に聖典を叩きこむこの模範的な校長は、
なんの因果かしょっちゅう泥棒に家宅侵入されている。
生徒たちの間ではもっぱら
その泥棒は彼女の恋人だという噂である(笑)。

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彼女はさっそく宗教クラブに入会し、
聖典の暗誦朗読を開始する。

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自宅では貯金をはたいて購入したビデオで
聖典教義について日々勉強。
そして頭の良さはこれまでの素行からもわかるように
天下逸品なので(笑)、

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見事に大会で優勝、賞金1000リヤルを獲得する。

のだが、
校長先生に「賞金は何に使いますか」と聞かれて、
「自転車を買います」と答えてしまったものだから、

「パレスチナに寄付して、
みんなに心を入れ替えたことを見せましょうね」と、
あっさり賞金を没収されてしまう。

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話を聞いたアブドゥラは彼女と一緒に落ち込む。
そして言う、「ぼくの自転車をあげるよ」と。
もらっても意味がないと、ワジダは断る。
そう。彼女はアブドゥラと競争したいのだ。一緒に走りたいのだ。

アブドゥラは帰っていくワジダの背中に声をかける。
「ワジダ、いつか結婚しよう」と。

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ショックが重なる。
その夜、遅く帰ってきた母親に、
パパが結婚したことを聞かされるのである。
「これからはママと二人で生きていくのよ」と。

この映画は観ていてもよく了解できないところがたくさんある。
私がサウジの事情を詳細には知らないせいである。
ここもそのひとつである。
夫は、2人目か3人目か知らないが、新たに妻を娶った。
2人は、第2家庭に追いやられたということなのかな?

新たに妻を娶った理由は?
想像の域を出ないのだが、息子(男の子)を欲しがった?

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そう考えるとこの家系図の登場の意味がよりわかるような
気がするのだが…。

ついでに言っておくと、
この映画でよく了解できないところは私にとっては
ひとつの魅力になっている。
わからないからより引っ張り込まれてしまうのだ。
いいことだよねえ。

翌日、
男の子たちと遊んでいるアブドゥラの前にワジダが現れる。

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「あなたは私の宝物。世界一幸せになって」と、
母親が例の自転車を買ってワジダにプレゼントしたのだ。

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夢が叶った。

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二人の競争が始まる。


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疑わしき商売をしている自転車屋おじさんも
ワジダが走る姿を見て嬉しそうだ。

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「わたしを捕まえて!」

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いきなり乗れるのは変?
変じゃないよ。内緒にしていたが、じつは前からこっそり
アブドゥラの自転車で稽古していたのだよ(笑)。

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ビューン。

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エッチラ、コッチラ(笑)。

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突き当り。

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ワジダの前には、左右に、大きく、道が開けていた…。


物語は、
女の子ワジダが自転車を手に入れるまでの
ある意味小さな物語である。

その小さな物語の中で、
サウジ・イスラム社会で生きている女性たちの状況が
さりげなく描かれていく。
そう言ってよければ女性を軽視したサウジ社会の姿が…。

その手法は名作「自転車泥棒」を彷彿とさせるところがあるが、
観ているときに気になったのは、
いいなあと思う映像と、「?」と、
ちょっと首をひねるような映像とが混在してることだった。

もう少し言うと、
カメリハなしにいきなり撮ったのではないか
と思わせるような映像が多々見られたのだ。

観終わっていくつかのサイトを見たら、
監督が車内からカメラマンに無線で指示しながら撮った
ところがあるとのこと。

女性が男性と言葉を交わすこと自体が禁じられているので
そうした方法しかなかったのだろうが、
ああ、それでか、と少し納得がいった。

つなぎの絵が足りないと思ったのも、
十分に撮るチャンスがなかったせいなのかもしれない。


ところで若いひとたちにイスラム社会を描いた映画を見せると、
みんなほぼ間違いなくこう言う。
「日本に生まれてよかった。幸せだ。彼女たち可愛そう」と。

私もそうは思うが、時に反論することもある(笑)。

「それは彼女たちは不幸と言うことか?
もしそう思っているんだったら早計というものだ。
差別社会、不自由社会の中で生きながらも、
それなりに幸福を感じながら生きているひともいるかもしれない。
幸か不幸かは本人が決めることであって
第三者がとやかく言うべきことではないのだ」と。

この映画の場合だったらこうも付け加えるだろう。

見ろ、このワジダと母親の家族愛を。
ワジダとアブドゥラの友愛+初恋心を。
そしてなによりも生き生きとしたからだと心を。

なのに、なんだ。
自由の国に生まれたはずの君たちの、日本人の
その精気のなさは。死んだような顔は。

それでも君たちは彼女たちより幸福だと言う自信があるのか。
私にはとてもそう思えんぞ。
ワジダらのほうがよっぽど幸福に見えらあ。羨ましい!
と(笑)。

もちろんあらゆる社会において人間はみな平等だ、
平等を理念とし、目指さなければいけない。
社会の前では男も女もない。
ただ等しく「人間」があるだけだと考えている。

そう。私は隠さない。
私は永遠にマルクス信奉者なのだ(笑)。

あ、そんなことはどうでもいいや。
とてもいい映画なのでぜひ観てほしい。

と私が言えば言うほど観られない傾向にあるようで、
素晴らしき作品たちにじつは恐縮している
きょうこの頃である(笑)。


■97分 サウジアラビア/ドイツ ドラマ
監督: ハイファ・アル=マンスール
脚本: ハイファ・アル=マンスール
出演
ワジダ ワアド・ムハンマド
ワジダの母 リーム・アブドゥラ
ワジダの父 スルタン・アル=アッサーフ
アブダラ アブドゥルラフマン・アル=ゴハニ
校長先生 アフド

宗教的な理由から西欧諸国に比べて女性の権利や自由が制限されているイスラム国家サウジアラビアで、初の女性映画監督となったハイファ・アル=マンスールによる記念すべき長編デビュー作。
どうしても自転車に乗りたいおてんば少女を主人公に、理不尽な因習に対する彼女なりのしたたかな抵抗の行方を通して、サウジ社会が抱える様々な問題、とりわけ女性たちの生きづらさを浮き彫りにすると共に、未来への確かな希望を力強く描き出す。

厳格なイスラム教が支配する国サウジアラビアの首都リヤド。
10歳のおてんば少女ワジダは男友達のアブダラと自転車競争をしたいのだが、厳格なイスラームの戒律と習慣を重んじる周囲の大人たちはワジダが自転車に乗ることにもアブダラと遊ぶことにも否定的だった。
ある日、雑貨店できれいな自転車を見つけたワジダは一目でその自転車を気に入ってしまう。なんとしてもその自転車を手に入れようとワジダはミサンガを売ったり秘密のアルバイトをしたりするが自転車代の800リヤルには届きそうもない。そんな時、学校でクルアーンの暗唱コンテストが行われることになり、優勝賞金が1000リヤルであることを知ったワジダはコンテストに参加することにする。
外で遊ぶことが好きだったワジダはクルアーンが大の苦手だったが、優勝を目指して猛特訓する……。

 

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