モナリザ (1986) イギリス

[1048]モナリザの微笑を湛える娼婦シモーヌの心の底には… ★★★★★★

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おっ、おらの好きな映画だ! 
と借りてきて久しぶりに観た作品。
名作という訳ではないが、面白くていい映画なんだよねえ。

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ボスの身代わりに刑務所勤めに行ったジョージは
無事に7年のお勤めを終え、幸せの黄色い花を手に
元妻と娘に会いに行く。
玄関に現れたわが娘ジーニーのあまりの美貌に茫然とし、
ついフラフラと近づこうとするのだが、
すぐに現れた吸血鬼のような元妻に表に叩きだされ、
集まってきた近所のひとたちにケラケラと笑われる。

ジョージを演じているのはボブ・ホスキンス。
私はかれを観るたびなぜかドリフターズの荒井注を思い出す。

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ジョージはボスのモートウェルに仕事をもらおうと訪ねるが、
モートウェルは旅行で不在、仕事も変えたらしい。
しかしモートウェルの手下から仕事をもらう。
右は、推理小説ファン仲間のトーマス。

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仕事は、この美貌の黒人女シモーヌの恋人兼送り迎え。
彼女、じつは高級ホテル荒らしのコールガール。
高級ホテルの宿泊者を相手に商売してるもんだから、
従業員に睨まれてる。で、あたかも
恋人ジョージと泊まりにきたかのように装おうという企画なのだ。
どう見たって月とスッポンのカップルにしか見えないが(笑)。

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実際、ホテル従業員たちもジョージが来ると、
禿げた小太りの、荒井注似のこの男を怪しげに訝る。
極道とはいえ、正義感だけは人一倍強いジョージは、
そのたびに差別主義者たちにつっかかる。

雇い主のシモーヌが世間知らずのジョージに呆れ、
せめて服装はなんとかしてよと金を差し出すと、
おれは乞食じゃねえと怒りだす始末。

あげくに買って着込んできた服がこれだべ。

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「よっ、シモーヌ、仕事終わったか。こっちだ、こっち」

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「信じられない。阿保。ばか。間抜け。死んじゃえ」(爆)

ついにジョージが切れる。
クソ女、文句ばっかり言いやがって。運転手はやめた。
おれの車だ。降りろ。車に轢かれて死んじまえ、と。
が、シモーヌが道路で立ち往生してしまうとすぐに反省。
ごめん、悪かった、マダム、死ぬな、乗れ、送る、謝る、と。
気は短いが、こう見えても根は純情で男天使なのだ。
と本人は言う(笑)。

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翌日、シモーヌはジョージを高級洋服店へ連れていき、
恋人役に相応しいスーツを新調してやる。
ジョージは紳士に変貌した自分の姿に茫然と見惚れる。
同時にこの女、おれに気があるのかもなと
妄想が押し寄せてくる。

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ジョージには、
ホテルの送り迎えのほかにもうひとつの仕事があった。
娼婦街キングス・クロスへ立ち寄ることだ。

シモーヌはそこへ行くと、毎晩、車の中から
街に立つ女たちをひとりひとりじっと眺めまわした。
ジョージには孤独を漂わせる彼女のその姿がどこか
「モナリザ」に想えた。

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ある夜、訳を聞くと、彼女は次第を話す。

以前、私もあの街にある店で働いていた。
私は偶然、あの街から抜け出して
高級ホテルの宿泊客の仕事へと変わることができたが、
あの街にはまだ抜け出せない私の友人がいる。

名前はキャシー。若くてきれいな子。ドラッグに溺れてる。
助けだしたいのだが、危険な街なので私は車を降りれない。
あなたに探しだしてほしい、何でもするから、と。

ジョージには、シモーヌが優しい尼に想えた。

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いまや高級ホテル荒らしの名コンビと化した二人。
ジョージは、上客を見つけるとシモーヌを送り出し、
その間、キングス・クロスを歩き、「キャシー」を探しだそうとする。

かれがキャシーを探し、
この街から抜け出させてやろうと思ったのは、自分にも
同じくらいの娘がいて他人事には思えないからでもある。
ほんと優しいのよ、ロンドンのおらが注さんは。
かなり間抜けなのも事実だが(笑)。

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ボスのモートウェルがキングス・クロスで店を開いていた。
かれはジョージに、シモーヌがアラブ人客相手に
なにをしてるか聞き出してくれと頼む。

ジョージはシモーヌにモートウェルの話をする。
彼女は「女の弱みを握りたいのよ」と、
さして相手にする素振りも見せない。

ショップで偶然シモーヌのエロビデオを見つけたので、
部屋で彼女に見せて聞く。

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モートウェルは君のヒモで、
ヒモの間にこんなビデオの配達をしてるんだろう、と。
シモーヌはビデオを見て驚き「消して」と言う。
「この相手の男は誰だ」
「誰でもないわ、ただの男よ」
「誰だ」
「アンダーソンよ」
「糞、あの男か」
と、おらが注さんは、すでに愛してるもんだから嫉妬して
つい彼女を平手打ちしてしまう。

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と、彼女はなんで私を殴るのよと、
まるで狂ったようにジョージを烈しく殴りつづける。
そしてそのあと泣いて謝る、「ごめんなさい」と。

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ジョージはシモーヌの隠された心を知る。
かつて彼女がヒモに殴り続けられていたことを。
高級コールガールとは言えいまもSM客が相手であること、
若いキャシーもSM客を相手にさせられていることを。

ダチ公トーマスの家に帰ると、
ジョージはかれに銃を用意してくれと頼んだ。

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キャシーの居所を掴むべく黒人アンダーソンの尾行を始める。
かれは以前、ジョージが入った店の支配人なのだ。
かれがサウナでボスのモートウェルと話をしているのを目撃し、
ウラにモートウェルがいることを知る。

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そしてついに教会で少女キャシーを発見する。
彼女はここでアンダーソンと落ち合い、仕事へ出かけていたのだ。

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シモーヌが仕事最中の高級ホテルの一室へ直行、
お客のエロ爺を叩きだし
キャシーの居所がわかったと伝える。
やるのよ、注さん、愛のためならもう何だって(笑)。

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エレベーターでシモーヌを彼女の部屋へ送る。
と、アンダーソンが待ち受けていてナイフで襲いかかってきた。
ジョージは腕を切られるが、逃げ切り、
シモーヌをダチ公トーマスの家へ連れていく。

ジョージに
シモーヌ相手の運転手の仕事をやったのはモートウェルで、
ジョージの行動はすでに
モートウェル、アンダーソン側に筒抜けだったのである。

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翌日、ジョージはモートウェルの屋敷へ忍び込む。

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予想通り
エロ爺のSMの相手をさせられているキャシーがいた、
隠し鏡のある向こうの部屋に。モートウェルは
部屋で繰り広げられる光景をこちら側からカメラで撮り、
そのビデオをも商売にしていた訳だ。

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ジョージは爺の隙を見てキャシーを隠し扉から救出し、
郊外の店へ連れていく。
そこへダチ公がシモーヌを連れてやってきた。

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シモーヌはようやくキャシーに再会した。

ダチ公トーマスは車の中で
ジョージに彼女が好きかと聞く。 
ジョージは「ああ」と答える。
トーマスは言う。「あんたの望みは薄いぞ」
推理小説の先を読むのはめちゃ得意なのに、
ロンドンのおらが注さんはまだ気がつかない。
キャシーだって言ったのに、「彼女(シモーヌ)は私が好きよ」と。

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二人はキャシーをホテルへ連れていく。
彼女はすでにドラッグが切れて苦しみだしている。
シモーヌはジョージに薬を買ってきてと頼む。
ジョージは万一のことを考えて彼女に銃を渡す。

薬局からホテルへ帰ってきたかれは
ベッドに横たわっている二人を見て茫然とする。

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おらが注さんはシモーヌが言った言葉を思い出す。
「私は男に愛されても、去られる女なの」
泣くな、注さん、愛はひとを盲目にするものなのだ。

キャシーが眠ると、
ジョージは散歩しないかとシモーヌを桟橋へ誘う。

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そうして恋人たちがそうするように
シモーヌとタンゴを踊った。

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恋人たちがそうするように
星と月のサングラスを買い、

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腕を組んで歩き、

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キスをした。

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そうして彼女に言った。
恋人たちは結婚をし、子供を産み、
それから義理の母親とケンカをしたりするものだ、と。

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彼女はサングラスの下に涙を隠して言う。
「できないわ」
「どうして」
「彼女には私が必要なの」

シモーヌはもう
自分と同じように傷ついているキャシーを愛することでしか
自分を癒すことができなくなっていたのである。

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と、そこへ突然アンダーソンが現れる。
二人は必死にかれの追跡をかわし、急いでホテルへ戻る。

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と、部屋にはキャシーを奪われたモートウェルが
待ち構えていた。
かれは二人とも帰してやると言いながら隙を見て
シモーヌを烈しく殴りはじめた。
かつて彼女を毎日、烈しく殴りつけていたように。

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シモーヌは悲鳴をあげると、銃を取り出し、
モートウェルを撃つ。

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「どう、撃たれて? すごく痛いでしょ?」
と叫びながら、1発、2発、3発と。

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「シモーヌ!」とジョージが必死で止めようとすると
彼女はジョージに銃口を向ける。

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アンダーソンが飛び込んでくる。
シモーヌの銃に気づいてすぐに逃げようとするのだが、
彼女は追いかけ、1発、2発。
そしてまたすぐに銃口をジョージに。
ジョージは言う、「撃て、やれよ」
「撃つわよ」

ジョージはシモーヌを殴り、言う。
「この野郎、俺まで撃つ気だったな。
俺もやつらと同じか。このクソ女…」と。

かれは泣いてシモーヌのもとを去る。

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シモーヌも泣いた。

銃口を向ける前にジョージが殴ってきたら、
もしかしたらシモーヌは
本気でジョージも撃ち殺したかもしれない。
それほど絶望的なまでに殴られることにたいする、
男たちの暴力にたいする彼女の怯えは、
恐怖は深かったのだ。

ジョージもそのことに、
彼女のあまりにも深いその業にはじめて気づかされた。
そして言いようのない悲しみに襲われ
「このクソ女」という汚い言葉となり、吐いてしまったのだ。

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最後、ジョージはダチ公のトーマスに言う。
最初から彼女は逃げられない運命だった。
カゴの中の鳥だったのだ、と…。

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この作品が公開されたのは1986年である。
イギリスには少なくともこのころまでは
こうした「ウラ社会」がちゃんとあったのかなあと思う。

日本にはもうなかった。
「ウラ社会」も「オモテ社会も」。

境界はすべてなし崩しに崩壊し、
私たち日本人はすでに中心のない、
「プロ」も「素人」も、「正常」も「異常」も、「生」と「死」すらない、
どこまでもただ一面灰色の世界へ放り出されてしまっていたように思う。

先日、佐世保の女子高校生が友人の女子高生を殺害し、
遺体を切断するという痛ましい事件がまた起きたが、
彼女も間違いなくそんな世界にいたはずだ。


タイトルは、主題歌としても用いられているのだが、
ナット・キング・コールのあのヒット曲「モナリザ」から
採られたもの。




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♪モナリザ ひとは君をこう呼ぶ
  神秘的な微笑みを浮かべた あの女性に似ているから
  君が いつも独りぽっちなのは モナリザのような微笑みのせい?
  その微笑みは恋人を誘うため? 傷ついた心を隠すため?
  たくさんの夢がやってきてるのに 君に見向きもせず去っていく
  君は温もりのある現実の女性なの? 
  それとも冷たくて孤独な 美しい芸術品なの?


ちょっと韓国映画を彷彿させる
笑って結局最後は泣かされてしまう、ほんと面白い映画。

ここまで触れずに来たが、
じつはシモーヌを演じているキャシー・タイソンが
めちゃくちゃ素晴らしいんだよね。
彼女会いたさに観たと言ってもいいくらい。

改めて私は彼女に最高の拍手を贈りたい!



■104分 イギリス サスペンス/ドラマ
監督: ニール・ジョーダン
製作総指揮: ジョージ・ハリソン デニス・オブライエン
脚本: ニール・ジョーダン デヴィッド・リーランド
撮影: ロジャー・プラット
音楽: マイケル・ケイメン
出演
ボブ・ホスキンス
キャシー・タイソン
マイケル・ケイン
ロビー・コルトレーン
クラーク・ピータース
ケイト・ハーディ
サミ・デイヴィス

高級コールガールの運転手になった刑務所帰りの男ジョージ。彼はシモーヌというコールガールから、行方の分からなくなった妹分の捜索を依頼される。調査をするうち、ジョージは次第にシモーヌに惹かれていくが……。夜のロンドンを舞台にしたミステリアスなアクション。タイトルは、ナット・キング・コールの同名ヒット曲から採られた。

 
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この記事へのコメント

Kuu
2015年01月18日 21:58
こんばんは、初めまして。本日TSUTAYAへ行きまして、目当てのものが見つからず、そのかわりにこれを見つけて借りてきました。大昔テレビで見た記憶がありますが、ストーリーなどは殆ど忘れていて、ググったら、ここに辿り着きました。
覚えているのは、ボブホスキンスという名前と(この人、ダニー・デビートに似てません?)、ナット・キング・コールのテーマ曲だけです。
DVDを見るのが楽しみになりました。ありがとうございました。

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