警察日記 (1955) 日活

[1065]戦後の福島の物語なのに、見えない被爆をした現在の福島の物語に見えてしまったよ

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森繁久彌が初めて日活に出演した私の大好きな映画。
監督はわが久松静児。

会津磐梯山麓の小さな町を舞台に、
警察官とその町に暮らす人々のエピソードを描いたいわば人情劇。

ちなみに劇中では横宮町という架空の土地となっていて、
現在の猪苗代町大字川桁周辺がロケ地だったようだ。

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物語は村の娘・花江が金持ちの息子・慶太の家へ嫁ぐシーンから始まる。

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懐かしい懐かしい風景。
私が子供の頃はまだ結婚式はこんなふうに新夫の家で行われてた訳よ。
いいだろう♬

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右、花嫁の嫁入り道具を運んだ山本岩太。おらが愛しの伊藤雄之助。
懐かしすぎてギェ~ッと悲鳴あげたいよねえ。
この岩太と花嫁・花江は実は相思相愛だった訳。でも花江の父親が
玉の輿だと娘を慶太の家へ嫁がせたのよ。岩太、ヤケ酒。

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町の警察署。バー「八千代」の女給・桃代(小田切みき)が万引き容疑で巡査に
尋問を受けている。右、その倉持巡、おらが殿山泰司。ギャ~ッ♬
中央、吉井巡査、わしの森繁久弥。ギャ~ッ♬
ギャ~ギャ~うるさくてすまんのう。たまらんのじゃよ。許してけれ。

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そこへ花川巡査が仏像窃盗容疑で岩太をしょっ引いてくる。たんに濡れ衣。
左、花川巡査、若き若き日のおらが三國連太郎。ギェ~ッ!

桃代と岩太、久しぶりに再会。桃代、じつは岩太に惚れてたのね。
でも岩太と花江が相思相愛なもんだから、わが身を引きヤケで女給に。
なのに花江は別の男と結婚。悔しい、身を引くんじゃなかった、と愁嘆。
岩太は花江の結婚にいまだショックでただボケ~ボケ~。

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町の家が火事だあ~ってんで緊急出動する消防車。
見て、「水」だって(笑)。さすがにおらだってこんな消防車知らねえでよ。

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駅前で上空に敵機を発見しては「空襲だあ~」と町の人に知らせてる
愛すべき空襲警報おじさん(笑)。おお~、おらが東野英治郎だべ。
戦争で息子5人を亡くしておかしくなっちゃった訳。

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吉井巡が駅の洗面所に置き去りにされていた幼い姉妹と、
騙されて身売りされそうになっていた貧しい農家の娘二田アヤを発見し、
署に連れていく。

赤ん坊はしげお、姉の女の子はユキ子。ユキ子やってるのは誰だあ?
ジャン! 二木てるみなのだあ。まだ6歳!可愛い。参ったかあ。
左の身売りされそうになった美女=娘アヤは誰だあ?

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わかるひとには嬉しいから1000円上げちゃおうかなあ(笑)。
さあ、わかるひと。いないねいないねいないね、じゃあ教えてあげよう。
おらが岩崎加根子だよ~ん。ギャ~!どうだあ、参ったかあ。

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その娘アヤに、ニセ斡旋屋に騙される奴がおるか、と説教をば垂れてる
左の赤沼主任は誰だあ? わかんないひとは絞首刑かもなあ。
そ。十朱幸代のおとうさん、十朱久雄さん。ギャ~! 脅すと当たるねえ。

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じゃ、このひとは? 署で一番偉いひと。石割署長ば?
んだんだ、われらがおにぎり顔の三島雅夫さんだっぺな♬

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じゃ、いつも署長の剣道の相手をさせられてる、この新入りの藪田巡査は?
これわかるひとには10000円かなあ。さ、いないかいないか?

宍戸開? あんた阿呆ちゃう? これ昭和30年の映画よ。まだ生まれてねえべ。
さ、いないかいないか? よし教えたる。開のパパ、おらが宍戸錠だあ~。
ギェ~ギェ~ギェ~ギェ~ギェ~ギェ~!しちゃうだろう。
そうなよ。まだ頬っぺたいじる前はこんな顔してたんだよお。
ちなみにこの映画が初出演。旭? 旭は出てねえべこの映画には(笑)。

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花川巡査は娘っ子二田アヤを実家まで送って行く。
この湖、五色沼(北塩原村)なのかなあ。
一度行ったことあるが五色沼きれいだよねえ、静かでさ。

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貧しい農家の娘たちを都会に売り飛ばして稼ぐ斡旋組織の女、杉田モヨ。
「あいつらに貧乏な百姓の気持ちがわかってたまるもんか」
と毒づく、われらが杉村春子。最高。いまの日本の俳優見てるとさ、
杉村さん、ほんと天才だってつくづく思うわ、私。

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花川巡査と貧しい農家の娘っ子アヤの間に仄かな恋が生まれる、の巻。
また売られていくアヤを「ばか」と殴って、何かの足しにと金を渡すのよ。
信じられるかね諸君、ああ、われらが三國連太郎にもこんな純情時代が
あったのよ(爆)。

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吉井巡査は捨て子の幼い姉弟を預かってもらおうと公共施設にを当たるが
どこも断られ、結局この旅館「掬水亭」のおかみとおばあちゃんが
赤ん坊のほうを預かってくれることに。

中央、「掬水亭」のおかみさん、私の沢村貞子さんだよ~ん。
日本の母、江戸の沢村貞子、浪花の浪花千栄子で決まり。
誰か文句ある? 文句ないよね、みんな。

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姉のほうは子沢山の吉井巡査が預かるのだが、
この映画が語られる時、この「橋」のスチールがよく使われるのはなんで?

母親に捨てられたこの幼い姉妹がメイン・エピソードなんだけど、この映画は
いわば「捨て子物語」なんだよね。
母に捨てられた子供たち、農家に、夫に、そして国に捨てられた
戦後がまだ続いている当時の貧しいひとたちのお話。

主舞台になっている警察署は言うなればそうした捨てられたひとたちの
「駆け込み寺」。

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子を育てられない母や家族、あるいは国は子をどこに捨てるのか。
もう何度か書いてきたが、「橋の下」。おらも子供のころ親に脅されたもんね。
「言うことを聞かないやつは橋の下に捨てるぞお」
「おまえはうちの子じゃないんだ。橋の下から拾ってきたんだ」って。

海から川を遡り、陸に上がれたお魚。陸に上がれなかったお魚。
あるいは橋の下⇒河原⇒賽の河原⇒死と生の境。

誰かに拾われて育てられた子は生きられる。拾われなかった子は死ぬ。
神はそうやって人間どもを古来から試してきた訳さ。
おらが贈った子を人間どもよ、拾い育てる心とチカラがあるか。
ないなら、滅びよ人間ども! って(笑)。

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吉井巡査夫婦の間に生まれたばかりの赤ちゃん。
右、吉井巡査が駅の洗面所から拾ってきた子、ユキ子。
二人とも橋の下から拾ってきた神様からの贈りもの。
という訳でこの映画は「橋」のスチールとともに語られる訳なのだ。
あ、信じてないな、いい加減なおらのいうこと(笑)。

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赤ん坊しげおと幼いユキ子を捨てた母親シズ。誰かなあ?
おらと一緒にNHKの「事件記者」観てたひとはすぐわかるよね。
そう。あれで飲み屋のおかみさんをやってた坪内美子さんだよ。
あ、泣かんでもええがな、そんなに懐かしい~から言うて(笑)。

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夫が死んで、それで家を追い出されてしまったのよ、子供と一緒に。
で、已むに已まれず子らを駅の洗面所に置いて東京さ働きに出た訳。
でも会いたくて町さ戻ってきたんだけども、子供さ連れて東京へ戻ることも
でけん。

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なんちゅう親や、と吉井巡査が仕方なく母親を署のジープに乗せて、
赤ん坊しげおと幼いユキ子をさりげなく旅館の前にこうやって立たせて、

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ほいでジープの窓からその元気な姿をば見せてやるばってん。
この後また母親シズは悲しみと安堵に包まれながら汽車で東京さ行くんだけども、
このラストシーン観るときはティッシュば用意しとかんとあかんよ。

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さあ、子連れのこのひとは誰かなあ?
夫が出稼ぎに出たまま帰って来ないので仕方なく小さな万引きと無銭飲食を
繰り返している母親セイ。

日本で一番占い師が似合う女優さんだよ。
ピンポーン、おらが千石規子さん♬

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いかったね、とうちゃんもリヤカーの万引きで捕まって会えたし、
こうやってみんなで署長さんに天丼ご馳走になれたし♬

容疑者が取り調べ中に丼物を振舞われるという場面が現れるのは
この映画が初めてなんだって。おら知らんかったよ。

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署長さん、トラックに100人乗るの許してけれや、
と陳情のーに現れたおじさん誰かなあ?(笑)

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無礼者、下がれ下がれ、この方を誰だと心得とる!
と威張ってるこのひとは誰かなあ?

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丸尾通産大臣? 知らんなあ。サカエの次男坊でねえか?

♬エンヤー
会津磐梯山は 宝の山よ ハァーヨイトヨイト
笹に黄金が エーマタなり下がる チョイサーチョイサ

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地元出身の偉そうな丸尾通産大臣の歓迎会。誰かなあ?

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おお、花の白虎隊だあ。

♬藤山一郎編


♬三橋美智也編
会津の山河風荒れて 葵に勝る菊の花 
二十歳の春を待たずして 蕾のままで散るも武士 眦決す白虎隊

♬橋幸夫編


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宴もたけなわ♬
こらこらこら、稲葉! 違った。丸尾! そんなことしてる場合か。
大臣のくせに2014年のフクシマを知らんのかあ!だよねえ、まったく。

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ラストシーン。
母親シズは二人の幼い子を預けたまま再び東京へ働くために汽車に乗る。

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岩太は息子5人を戦争で亡くした空襲おじさんの万歳三唱に送られ、
自衛隊へ入隊するために上京。

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汽車の中には貧乏なため早くに嫁いでいくアヤの姿も。
左は母親タツを演じるわれらが飯田蝶子さん。

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そして峠にはそのアヤを見送る花川巡査が。

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なんだかなあ。
このラスト以前とは違い、見えない被爆をした福島のひとたちの姿や、
集団自衛権の発動でいずれ戦地へ赴くかもしれない若者の姿が
妙に重なって見えてしまったよ。

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この映画の素晴らしさは、物語、演出、映像はむろんだが、
俳優の演技の素晴らしさに支えられている。

ちなみに演技を勉強したいひとは、
新人・宍戸錠と、ほかのベテラン俳優たちの声の出し方の違いに注目すること。

宍戸錠の場合、まだ声がお腹に落ちていない。
首から上で声を出している。
そのため声がくぐもり、ベテランたちのように言葉が明確に聞こえてこない。

いまの俳優になるとそれがすさまじく酷くなってなってる訳だ。
首から上と、首から下がまったく繋がってないんだよね。
身体が分裂してる。

そのいい例が先だって書いた「硫黄島からの手紙」に出演してる俳優たち
ということになる。


■112分 日本 ドラマ
監督: 久松静児
製作: 坂上静翁
原作: 伊藤永之助
脚本: 井手俊郎
撮影: 姫田真佐久
美術: 木村威夫
音楽: 團伊玖磨
石割署長 三島雅夫
吉井巡査 森繁久彌
赤沼主任 十朱久雄
金子主任 織田政雄
倉持巡査 殿山泰司
花川巡査 三國連太郎
藪田巡査 宍戸錠
岩太 伊藤雄之助
桃代 小田切みき
村田老人 東野英治郎
二田アヤ 岩崎加根子
母タツ 飯田蝶子
杉田モヨ 杉村春子
猪岡熊太郎 左卜全
紅林 多々良純
町長 三木のり平
料亭の内儀ヒデ 沢村貞子
ユキ子 二木てるみ
母シズ 坪内美子
セイ 千石規子
子竹雄 香川良久
丸尾通産大臣 稲葉義男
高谷重四郎 天野創次郎

東北地方の田舎町の警察署。
署には頑固な石割署長、金子主任、赤沼主任、人情家の吉井巡査、純情な花川巡査、剣道自慢の署長の相手役藪田巡査、倉持巡査等がいる。
刑事部屋は毎日様々の人で大にぎわいで、今も窃盗容疑の桃代、神社荒しの容疑者お人好の岩太が取調べを受けている。
駅前では戦争で子供達を失くしてから頭の変な村田老人が交通整理中である。
ある日吉井巡査は六つ位のユキコと赤ん坊の姉弟の捨子を発見した。預ける所もないので、赤ん坊は料亭の内儀ヒデが、ユキコは自分が引きとった。
花川巡査はもぐり周旋屋杉田モヨに身売りされかけた二田アヤを保護したがアヤはお金のためにまた町を抜け出そうとしたので、彼は給料をさいてお金をやった。
モヨは人身売買の件で検挙されたが平然としていた。セイと息子の竹雄が万引で捕って来たが彼女は亭主に逃げられたのだった。
通産大臣が帰郷し、町長や署長等役人は大騒ぎであった。交通安全週間中だというのに大臣一行の傍若無人な振舞に町の人々は唖然とした。
その夜母親シズが二人を引き取りに署へ来たが子供達が幸せと知ると安心し子供の顔を一目見て東京へ去った。セイと竹雄が無銭飲食で挙げられ、セイの夫重四郎も取調べをうけていたが、金子主任にさとされ一緒に帰って行った。花川巡査はアヤから手紙を受け取ったが、中には彼に返す為のお金と真赤な紅葉が入っていた。

 

この記事へのコメント

神保町シアター名誉会員だす
2016年07月20日 08:06
はじめまして。 私もこの作品を京橋フイルムセンターで偶然見てびっくり なに この豪華俳優女優は!! 風景も美しく なにより 日本映画を代表する役者が揃っているのだ。 杉村春子舞台を35年見た舞台鑑賞応援団として 一押しいや 百万押しの作品です。 坪内美子さんをあとで知り  桑野通子主演新女性問答にも出ていて しとやかで美しい女優さんが ここでもか  とびっくり、 とにかく題名から想像できない佳作を知る人ぞ知るですね。 たのしいブログを感謝です。
てつ
2016年07月22日 06:02
こちらこそお読み頂いて有難うございます。ホント、俳優陣豪華ですよねえ。一人ひとり観ていて嬉しくなります。気持ちが豊かになり、幸せ気分。この頃の日本映画、ホントに凄かったんだなあと改めて感動します♪

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