女 (1948) 松竹

[1067]戦後間もない庶民生活の一断面を鋭く描いてみせた若き木下恵介の傑作

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久しぶりに近くのツタヤへ。
といっても自宅から10キロ近くあるんだよ。知らなかったでしょう。
え? 知るかそんなもん? ごめん(笑)。

で、邦画コーナーを覗いたら「ギョッ!」だよねえ。
懐かしのコーナーが新設されててズラッと並んでるのよ。
つうても100本くらいなんだけどさ。

こらっ、10,000本くらい並べんかい! とは思うけどさ。
お、柏の文化度が上がった!って、おらニッコニコだよねえ。
で、チョイした1本がコレ。観てなかったもんだからさ。

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「女」 木下恵介…、だって(笑)。

なんか笑っちゃうよねえ。
天下の木下恵介が一文字「女」だよ。
しかも始まりがコレだよ、コレ。木下さん、手抜きしてない?
それとも敗戦3年目で物資ねえズラって訴えたいのかよ。
と一瞬思うズラ(笑)。

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はい、トップシーン。
おお~、いきなり女女女女女女女女女女だあ~、踊ってる~♬

でも、なにコレ? 松竹歌劇団? 浅草国際劇場?
松竹歌劇団にしちゃちょっと衣装が少し貧乏たらしくない?
敗戦3年目、物資不足を訴えたいのかなあ。
なんてまた思っちゃってると、

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そこへ突然、若い女性歌手が現れて歌う訳よ。
♬ ああ 赤い 赤い薔薇の花 恋の唇 乙女の花よ
おお~、歌も女で責めてきたかあと思うよねえ。

しかし誰このひと?
クレジットに歌手・都能子ってあったけど聞いたことないなあ。
と思いながら聞いてるうちに…、ちょ、ちょっと待てよ、おい!
この声知ってるぞ、知ってるぞ、知ってる知ってる。
誰だっけ、え~と誰だっけ!

となって思わず一時ストップしてすぐ調べたのよ、サイトで。
そ、そしたらやっぱり知ってた。
都能子なる歌手はおらが愛するこのひとだったのだあ~!



そう。織井茂子さんだったのよお。
都能子=織井茂子さん!

しかも驚いたことにさ、都能子(みやこよしこ)の芸名で
1947年にキングレコードからデビューしたんだけど、ヒット曲に恵まれず。
木下惠介の映画「女」にレビュー歌手として出演、劇中で「紅バラルンバ」を歌う。

1949年に本名の織井茂子に戻し、
1952年にようや映画「カルメン純情す」の主題歌で脚光を浴び、
同年、連ドラ「君の名は」が大ヒット!とあるじゃない。

ドヒャーだよねえ。
もちろん「カルメン純情す」で歌ってるのは知ってた訳だけど、
木下恵介の起用がきっかけで大スターになったなんて
知らなかったのよお。



おら、超嬉しくなってしばらくユーチューブでひとり
織井茂子歌謡ショーを満喫することになっちゃったよねえ。
だってさ、20代の頃「君の名」を舞台化してるのよ、私。織井茂子主題歌で(笑)。
素通りできる訳ないじゃん。ねえ。
ましてわが愛する木下恵介が掘り出した歌手だったんだもん。

じゃあもう一曲行ってみようか。



てな訳で、「女」、もう一度冒頭から観ることになりました(笑)。

ストーリーは
もうこれ以上単純なものはない、と言っていいほど単純。
銭も恐ろしいほどじぇんじぇん掛っとらん。凄いよお(笑)。

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町田正という男が劇場に林敏子という踊り子を訪ねてくる。
で、明日の朝一番で箱根に来い、俺は先に行ってる、
と脅すように言って帰る。
この二人、恋人同士。

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敏子は舞台があるので日帰りのつもりで箱根へ。
敗戦後まだ間もない「箱根湯本駅」、おお~!だよね。

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正と敏子が駅前で合流。
ところでこの二人、誰かわかるかなあ? 驚いちゃだめだよ。
われらが小沢栄太郎と水戸光子なのだあ!
クレジットでわかってたがその若さにおらは「うそこけ~!」と叫ぶ(笑)。

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軽くびっこを引いてる正を見て敏子は少し不安になる。
このひとまた何か悪いことをしたんじゃないかと。
んだ。往年のわれら小沢栄太郎ファンは誰だってそう思うぜ(笑)。

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突然、画面は斜める。敏子の不安の表現。
金ないからわれらが木下恵介、凝るのよ(笑)。

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実は正、仲間3人で強盗に押し入り、途中警官をナイフで刺し、
浜松へ逃亡しようと企んでる訳、敏子を連れて。

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敏子の不安が的中し、画面は斜めり、

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名コンビ、恵介の弟・木下忠司の音楽が風雲急を告げる。
阿呆なおらは当然嬉しくなる(笑)。

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茫然とする敏子を引っ張って、正は一路西へ西へと。

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真鶴のホームで敏子が汽車から飛び下りると、
逃がすものかとわれらが悪の正が逃がすものかと飛び下りる。
あ、こけそう。大丈夫か、栄太郎!(笑)

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真鶴駅の玄関口。
この映画実は熱海で終わるのだが、
このあたり私のホームみたいなとこあるから、
おお、戦後間もない頃はこんな風景だったのかあって嬉しくなるのよ。

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斜めって逃げようとする敏子。

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不自由な脚で愛人を追うヒルのような男、正。

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なぜ悪いことばかりするのです。
あなたのお蔭で私も悪の片棒を担がされて、
と堪らず泣きだす敏子。

世の中が悪いんだよと戦後社会を批判し、
そんな俺に惚れたくせにと自信満々の正(笑)。

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もう別れてと懇願する敏子の腕を引っ張り、
困難な戦後社会の山道を上ろうとする、悪の正(笑)。

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敏子は恐ろしくなって山の中へ逃げ込むと、
正はなぜか急に諦めたかのようにひとり山を下り始める。

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と、敏子、正の寂しそうな背中に哀れをもよおし後を追う。
う~ん、これが「女」なのか。
騙されるな、水戸光子。それが男・栄太郎の手なんだぞ!(笑)

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山の下の小学校から児童の歌う「赤とんぼ」の歌が聴こえてくる。

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その歌を聴いて強盗・正がシャクリ上げながら語りはじめる。

俺だって昔からの悪人じゃない。
あの歌をうたった子供の頃があるんだ。
戦争が悪いんだ。あんなことがなかったら俺だってぐれるもんか。
下らん戦争で、帰ってきたら俺なんかまともに生きてちゃ食っていけん。
お袋や妹・弟を抱えておれはどうすりゃよかったんだ。
こんな俺でもおまえだけは愛してたんだ、などと。

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んだんだ。と同情して貰い泣きしたいが、
おらが小沢栄太郎が喋ってるんだと思うと貰い泣きでけん(笑)。
ここのロケ現場、真鶴半島なのかな?

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戦後的風景の中に男をひとり佇ませる木下恵介。
さすが!っておらが一番感動したとこかもな。
こうして正は敏子に別れを告げるのだが、

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敏子はつい油断をして正と一緒に弁当を食ってしまう。
そして弁当を愛に飢えた子供のようにかき食らう正を見て涙を零し、

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あげくお腹を空かした幼い兄妹がものを盗み、
村人たちに捕まって殴られる光景を目の当たりにし、
これからどうやって生きればいいのかと心は震え、
ついには声にして泣きださずにはいられなくなる。

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そんな敏子に正は、
俺なんかどうなってもいい。お前だけは幸せにしてやりたい。
別れるのは寂しい、せめて二人の思い出の熱海まで一緒に行ってくれ、
と言われ、

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結局、「女」敏子は正と山を下り、

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ヒッチハイクをして熱海へと向かう。
途中、栄太郎さんが水戸光子さんに「敏子」と体を求めようとすると
検問中の警官に出くわしたり、

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隧道(トンネル)に入ると栄太郎が「敏子」と声を上げたりして、
なんだかなあ、笑えるというかほのぼのするというかさ(笑)。

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熱海(笑)。

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熱海についた途端、山中で見せた
あの後悔を忘れたかのようにノー天気に歌いだす正を見て、
敏子はまたも正不信に陥る。

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案の定、貴金属の並ぶ質屋の前で正の足は止まる。
そして強奪した貴金属を差し出し、
これをあの店で売ってきてくれ、俺は危ないからと敏子に言う。
敏子は正が自分を連れ歩く魂胆に気づき、正から離れようとする。

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と突然、町の半鐘が響き、消防車の警報が。
近くで火事が発生したのだ。町が混乱する。

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見物人の群れが現場へ走る。
貴金属店(質屋)の主人も店を放って走る。
それを見た正はすぐに貴金属店に駆け込む。

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敏子は耐えられず正から逃げようとするのだが、
宝石類を強奪した正はその敏子を捕まえ、熱海駅へ走ろうとする。

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と、敏子はその宝石類を正から奪い、貴金属店へ帰そうと引き返すが、
正に追いつかれてまた駅へと腕を引っ張られるのだが…、
というお話。

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え? 最後どうなるのか?
知らんばってん。自分で借りて観んしゃい。(^^♪

単純なストーリーで金もかかってないけど、
骨太で、戦後3年目の一断面を鋭く描いてみせた傑作。
絵(映像)も若き日の木下恵介とは言え、らしくて結構痺れるよ。

ちなみに上の消防団は、
当時の熱海消防署と署員の協力なんだって。拍手♬

しかしちょっと驚いたなあ。
全編ロケでさ、ネオレアリスモの先駆けとも言われる
ルキノ・ヴィスコンティの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」 (1942)を
ちょっと彷彿させるところがあるのよ。

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この後の国民的木下映画
「二十四の瞳 (1954)」や「喜びも悲しみも幾歳月 (1957)」の起点は
この映画にあると言ってもいいのかも。
この映画をソフト化させたもの?

映画ファンは必見だよ。


■67分 松竹 ドラマ/サスペンス
監督 木下惠介
脚本 木下惠介
製作 小倉武志
音楽 木下忠司
撮影 楠田浩之
製作会社 松竹
出演
水戸光子
小沢栄太郎

毎日映画コンクール監督賞。

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