新釈四谷怪談_2 (1949) 松竹

[1076]怨霊劇をお岩と伊右衛門の道行劇へと書き変えてみせた木下恵介の傑作「四谷怪談」

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進退窮まった直助は伊右衛門を捕まえてまた脅す。
一文字屋の蔵から金を盗みだして上方へ逃げよう、
侵入するので手伝え、と。

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伊右衛門はお岩と小平の遺体を投げ込んだ隠亡堀をひとり訪れる。
自分の罪を悔いているのである。

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夜、直助が庭から一文字屋へ侵入する。
伊右衛門は内側から招き入れる。
直助は乳母・お槇を捕まえて脅し、金蔵へ案内させる。

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伊右衛門はお梅を捕まえ、一緒に逃げてくれと懇願する。
お梅は、うわごとで口にする名前の女・岩は誰かと問いつめ、拒絶する。
この期に及んでお梅に一緒に逃げてくれと頼むのは、
伊右衛門が女としか、愛にしか生きられない男であることを物語っている。
お梅と諍っているうちに行燈が倒れ、火が出る。

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目明しの辰五郎が捕り手たちを引き連れ、
伊右衛門を捕縛しに一文字屋へ乗り込んでくる。
捕り手に気づいた直助は火の中を逃げ回る。

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回った火の手にお梅の顔が焼かれてしまう。
お梅のその顔を見て伊右衛門は驚く。
お岩と同じ場所を焼かれているからだが、
しかしこれまでと違いお梅の顔がお岩に見えることはない。
そう言ってよければ伊右衛門はこの時、
お梅に一緒に逃げてくれと懇願したのだが、
自分が一緒に逃げたいのはお梅ではなく、お岩だったのだと気づいたのだ。

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伊右衛門に気づいた直助は逃げようと声をかけ、
二階の窓を蹴破って逃げだそうとする。
伊右衛門は刀を拾い、直助に背後から斬りつける。

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お梅は危うく乳母・お槇らに救出される。

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火の海の中で伊右衛門は直助を斃す。

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そうして火の海の中にお岩を見る。

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傘貼り内職をしている岩を。
貧しさに愚痴ひとつ零すことなく傘を貼り続ける岩を。

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貧しいけれど幸福だったあの頃の妻・岩と自分の姿を。

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伊右衛門は吹き上げる炎の中で自分の顔を焼く。
からだを焼く、「許してくれ」とお岩と小平に声を発しながら。
自分を焼く。自分の犯した罪を清めるために。

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そうして道行く、妻・岩と。

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あの世へと道行く…。

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お袖と与茂七は焼けた一文字屋に目をやった。
小平の母・倉は、これで少しはあの子も、小平も浮かばれるでしょうと
言い残し、故郷へ帰った。
お袖のお腹には与茂七との子が宿っていた…。

すでに書くことはない。
「四谷怪談」が怨霊劇として描かれることが多い中で、
木下恵介のこの作品がいかに特異かわかるだろう。

つねに弱者を、下層で生きる者を見つづけた
木下恵介ならでの作品である。


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■前篇88分 後篇73分 松竹 時代劇 ドラマ
監督 木下惠介
原作 鶴屋南北「東海道四谷怪談」
脚本 久板栄二郎、新藤兼人
製作 小倉浩一郎
撮影 楠田浩之
音楽 木下忠司
出演
民谷伊右衛門 上原謙
お岩/お岩の妹お袖 田中絹代
直助権兵衛 滝沢修
小仏小平 佐田啓二
一文字屋喜兵衛 三津田健
喜兵衛の娘・お梅 山根寿子
お梅の乳母・お槇 杉村春子
お袖の夫・与茂七 宇野重吉
按摩宅悦 玉島愛造
小平の母・お倉 飯田蝶子
目明し辰五郎 山路義人
新吉 加東大介

※南北の「東海道四谷怪談」あらすじ
元塩冶藩士、四谷左門の娘・岩は夫である伊右衛門の不行状を理由に実家に連れ戻されていた。伊右衛門は左門に岩との復縁を迫るが、過去の悪事(公金横領)を指摘され、辻斬りの仕業に見せかけ左門を殺害。同じ場所で、岩の妹・袖に横恋慕していた薬売り・直助は、袖の夫・佐藤与茂七(実は入れ替った別人)を殺害していた。ちょうどそこへ岩と袖がやってきて、左門と与茂七の死体を見つける。嘆く2人に伊右衛門と直助は仇を討ってやると言いくるめる。そして、伊右衛門と岩は復縁し、直助と袖は同居することになる。
田宮家に戻った岩は産後の肥立ちが悪く、病がちになったため、伊右衛門は岩を厭うようになる。高師直の家臣伊藤喜兵衛の孫・梅は伊右衛門に恋をし、喜兵衛も伊右衛門を婿に望む。高家への仕官を条件に承諾した伊右衛門は、按摩の宅悦を脅して岩と不義密通をはたらかせ、それを口実に離縁しようと画策する。喜兵衛から贈られた薬のために容貌が崩れた岩を見て脅えた宅悦は伊右衛門の計画を暴露する。岩は悶え苦しみ、置いてあった刀が首に刺さって死ぬ。伊右衛門は家宝の薬を盗んだとがで捕らえていた小仏小平を惨殺。伊右衛門の手下は岩と小平の死体を戸板にくくりつけ、川に流す。
伊右衛門は伊藤家の婿に入るが、婚礼の晩に幽霊を見て錯乱し、梅と喜兵衛を殺害、逃亡する。
袖は宅悦に姉の死を知らされ、仇討ちを条件に直助に身を許すが、そこへ死んだはずの与茂七が帰ってくる。結果として不貞を働いた袖はあえて与茂七、直助二人の手にかかり死ぬ。袖の最後の言葉から、直助は袖が実の妹だったことを知り、自害する。
蛇山の庵室で伊右衛門は岩の幽霊と鼠に苦しめられて狂乱する。そこへ真相を知った与茂七が来て、舅と義姉の敵である伊右衛門を討つ。

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