処女の泉_1 (1960)  スウェーデン

[1079]神の沈黙と人間の信仰を問うベルイマンの記念碑的作品

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超難解で知られるわがイングマール・ベルイマンの
超わかりやすい映画。
こんなにわかりやすくていいのかあ!と怒りたいほど。
ある意味だけどね。あくまである意味(^^♪

脚本は女流作家ウラ・イザクソンで、スウェーデンの
エステルイェートランド地方に伝わるバラッド(歌)を原案にしている。

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16世紀、スエーデンの片田舎。
ロケはダーラナ地方で行われたらしいが、
どうだ、いきなりの美しい風景に痺れてしまうだろう(^^♪

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ヴェンゲ集落の地主テーレ一家は敬虔なキリスト教徒で、
神に祈りを捧げてからその日の朝食を摂りはじめた。
中央がそのテーレ。左がその妻メレータ。その左は養女インゲリ。
ほかは一家に雇われている人たちである。
一家には娘のカリンがいるのだが、朝寝坊をして食卓に出てこない。

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養女インゲリは身籠っているが、どうやら強姦されたようだ。
相手の男はわからない。
彼女は実はひそかに土着の神オーディンを信奉している。
これは朝食前、天に向かってそのオーディンの神を呼びだし、
苦労を知らない娘カリンを呪詛しようとしている最中の絵である。
怖いけど美しい女だ(^^♪

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朝食後、母親メレータは娘カリンを起こすと絹の衣服を着せ、
髪を梳かしてやる。養女インゲリを伴につけ、
森の向こうにある教会へ勤めに行かせるためである。

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インゲリはカリンに食べさせるためのパンを用意する。
ぎょっ! そのパンの間にヒキガエルを挟んでいるぞ。
怖いけど美しいのは変わらない(^^♪

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出発直前、仲睦まじい父と娘はじゃれ合う。

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母親メレータは娘に飲んで行きなさいと勧めるが、カリンは飲まない。
手にキスをしてと言うとこれも拒まれる。
いつものことながら母親は面白くない。

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カリンとインゲリは教会へ向けて出発する。

この作品はアカデミー外国語映画賞をはじめ、
ゴールデングローブ賞外国語映画賞、カンヌ国際映画祭特別賞など
に輝いているが、受賞の理由のひとつにこの凛した映像の美しさが
あったんだろうなあ(^^♪

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休息時、二人は「処女」論争をする。
私は結婚するまで純潔を守るというカリン。
夜道で男に襲われたら逃げられないわと返すインゲリ。

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そこへ男が近づきカリンに声をかけてくるが、彼女は突っぱねる。

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インゲリが「ゆうべ彼といただろ」とカリンを責める。
カリンは「あなたを棄てないよう説得していたのよ」と返す。
「俺に身を任せたら考えてもいいって?」
その言葉を聞いてカリンはインゲリの頬を叩く。
「笑ってた。彼と踊ってた」とインゲリは泣く。
カリンは「みんなと踊ったわ」と言い、インゲリを慰める。
甘えん坊のように見えて意外としっかりした、他人思いの女の子である。
インゲリを孕ませた男はこの男かも知れない。

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小川に差し掛かると傍の小屋に住む男が馬を渡してやる。
インゲリが突然カリンに駆け寄り、
「帰ろう。きょうは森が暗い」と教会へ行くのを止めようとする。

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「あなたはここで休んでなさい」と気丈なカリンはひとり教会へ向かう。

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インゲリは男の小屋で休もうとする。
突然馬の蹄のような音が聞こえる。
インゲリが何の音かと聞くと男が笑いながら答える。
「3人の死人が北へ向かってる」と。インゲリは
「オーディンの神にいけにえを捧げたのね」と小屋を飛び出す。
男も土着信仰者だったのだ。

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羊飼いの三人兄弟が森を行くカリンを見、下心を抱く。

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三人にすれ違ったカリンが弁当をあげようとすると、
彼らは一緒に食べようと彼女を誘う。

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疑いを知らない心優しいキリスト教徒のカリンは
神に祈りを捧げてから彼らと食事を伴にしようとする。

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兄二人が彼女に言い寄ろうとすると彼女は気づき言う。
「この山羊はシモンの山羊ね」と。
この三人兄弟がシモンの山羊を盗んだことを知ったのだ。

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下の男の子が驚いてパンを捨てると、
中からインゲリが仕込んだヒキガエルが飛び出す。
このヒキガエルはさしづめインゲルが
土着の神オーディンに捧げたイケニエと言ったところか。

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そのカエルに見入られたかのように上の兄二人が
逃げようとするカリンを捕まえ、彼女の処女を奪う。

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男の小屋を飛び出したインゲリは不吉を感じてカリンを追い、
この光景を目撃する。
男たちを襲おうかと一旦は石を手にするのだが、その石を手放してしまう。

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カリンが立ち上がり悲しみの嗚咽を洩らすと、
兄二人は彼女を撲殺し、上等なその衣服を引き剥がす。

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罪と悲しみに囚われた少年はカリンの遺体に土を盛る。
三人は山羊を追い、逃げる。
小屋の男が「3人の死人が北へ向かってる」と言った事態が起きたのだ。
だがこの予言(?)はまだ終わった訳ではない。

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地主テーレが夕方になっても帰らぬ娘の身を案じていると、

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カリンを殺害した羊飼いの三人兄弟が現れ、一夜の宿を乞う。
むろん彼らはそこがカリンの家だとは知らない。

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敬虔なキリスト教徒の彼は招き入れ、食事と床を与える。

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食事中、少年はミルクを飲めず吐き出す。
兄二人が強姦し殺害した女性カリンのことが忘れられないからだ。
兄二人は適当なことを言って誤魔化す。

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夜、母親メレータは少年の悲鳴を聞いて旅人たちの部屋を覗く。
兄二人が罪の意識に震えている下の弟を殴ったのだが、
二人はまた適当なことを言って誤魔化そうとする。

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その母親に兄のひとりが、
死んだ妹の形見の衣服を買ってくれないかと申し出る。
母親メレータは当然それが娘カリンのものだと気づく。

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メレータは買うと約束し、血のついたその衣服を夫テーレに見せる。
夫テーレは剣を手に部屋を出、階段を下りる。

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その階段にひとり人目を忍んで帰ってきたインゲリが隠れていた。
テーレはインゲリの襟を取り訳を聞く。
彼女は、「殺してください。悪いのはあたしです。
憎かった。カリンのことがずっと。だからオーディンに災いを祈った。
あの3人は悪くないわ。オーディンに繰られてあんなことをしただけ」
と、カリンの身に起きたことを語る。

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父親テーレは早朝の山へ上がり、1本の木を倒す。
そうしてその木の枝を持ち帰り、わが身を清めた(?)。

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この木が何で、
なぜこの木の枝で身を清めるのか私にはよくわからない。
日本で古くから神事に用いられる「榊」のようなもので、
あらかじめ人の血を流す身を清めるということなのかな?

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テーレはインゲリから受け取った肉切り刀を手に、
羊飼いの兄弟三人が眠っている小屋へ入る。

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そうして妻メレータと娘カリンの遺品の前で、

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羊飼いの兄弟三人を殺す。復讐する。


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■89分 スウェーデン ドラマ
監督 イングマール・ベルイマン
脚本 ウラ・イザクソン
撮影 スヴェン・ニクヴィスト
美術 P・A・ルンドグレン
音楽 エリク・ノルドグレン
編集 Oscar Rosander
出演
Father Tore  マックス・フォン・シドー
His Wife  ビルギッタ・ヴァルベルイ
Ingeri  グンネル・リンドブロム
Karin  ビルギッタ・ペテルソン
Thin Shepherd man Axel Duberg
Dumb Shepherd man  トル・イセダル
Begger  アラン・エドヴァル
Youag Shepherd man Ove Poratb
Ferry-boat man Axal Slangus
Maid Frida Gudrun Brost
Young farmer Simon  オスカー・ジャング
Tenant farmer 1  Tor Borong
Tenant farmer 2  レイフ・フォステンベルイ

16世紀のスウェーデン、片田舎の豪農の一人娘がある日曜日、遠方の教会にロウソクを捧げにいく。お供の養女は、今は邪教となったバイキングの古い信仰に傾倒しており、美しく世間知らずの娘に嫉妬して途中で同行を渋る。先に出発した娘は森で三人組の少年乞食に会い、弁当を振舞うが、その優しさが仇となって殺されてしまう。その後彼らは、豪農の家に一夜の宿を求めるが、娘から奪った衣服に気づいた豪農に報復される。
翌朝、娘の殺害現場に出向いた彼は、亡骸を見て泣き崩れる。そして、自分のしたむごい仕打ちを悔やみ、償いとしてこの地に教会を建設すると神に誓う。すると娘の死体の下から、こんこんと泉が溢れ出す…。
この上なく美しいバラッドの世界。復讐という概念を乗り越えてこそのキリスト教信仰を、ベルイマンは静謐な映像で問いただすのだ。

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