墨東綺譚_1 (1992) 日本

[1093]荷風文学を見事に映像化した新藤兼人監督にただ感謝あるのみ(^^♪

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文学作品を原本にした映画は観るとたいていがっかりするが、
時に新たな感動で涙が溢れてくる作品がある。
永井荷風の作品をもとに新藤兼人監督が撮ったこの作品も
数少ないその1本だ(^^♪

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荷風は大正9年(1920)より麻布の「偏奇館」に居住した。
ペンキ塗りの洋館であることをもじって荷風自ら命名した。

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荷風はこの偏奇館で「濹東綺譚」を執筆。
昭和12年(1937)4月に私家版として刊行した。
小説家・大江匡と娼婦・お雪との出会いと別れを描いたものだが、
この映画の中では小説家・大江匡は「永井」として登場する。
演じているのはわれらが津川雅彦だ(^^♪

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「断腸亭日乗」
木挽町の「無用庵」に移住した1917年(大正6年)9月16日から、
死の前日の1959年(昭和34年)4月29日まで書き綴られた日記。
激動期の世相とそれらに対する批判が書かれていて、
近代史資料として大変貴重な作品である。
映画はこの2作品をもとに描かれている。

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永井はすでに50歳の小説家。
「濹東綺譚」では水商売の女を家庭に入れようとして
失敗したことがあると書かれている。
左、そのお歌(瀬尾智美)。純朴で可愛い(^^♪

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銀座カフェー・タイガーに入る。
このカフェに通い始めたのは1926年(昭和元年)8月からである。

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♪およばぬことと 諦めました
  だけど恋しい あの人よ
  儘になるなら 今一度
  ひと目だけでも 逢いたいの
うわっ、井上ひろしだ、昭和モダンだ!憎い、新藤さん!💛
もともとは昭和10年に公開された新興キネマ作品
「突破無電」の主題歌なのだが、
ここでこの歌とダンスかよ、と私はいつも泣いて喜ぶのだ(^^♪

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「あれが永井荷風という洋行帰りの大先生だ」と皮肉る、
中央チョビ髭の男は菊地寛先生(井川比佐志)(^^♪
「ああ、色事ばっかり書いちょる」と菊池寛をよいしょする
右の男は単なる取り巻きの男、戸浦六宏だべち(^^♪

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そこへ突如サムライ風情の男が殴り込んでくる。
「永井荷風先生にお伺いする。
芥川龍之介先生が自殺しされたのをご存じですか。
芥川先生は文学に悩んで自殺されたのです」

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「毎日カフェで酒池肉林。荷風先生も
少し文学に悩んで自殺されたらいかがですか」と(笑)。

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「ちょっと失礼、トイレに」と裏口から
脱兎のごとく逃げ出すわれらが荷風先生(^^♪

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「何が文学だ、何が芸術だ、笑わせるな。荷風出て来い!」
と目の前の花瓶を叩き斬ったたかりの壮漢は、
なんとまあ河原崎次郎だべち(爆)。

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その銀座カフェー・タイガーの女給お久、
ウッフンと偏奇館に現れて勝手にベッドで飛び跳ねて
荷風先生誘って即ベッドイン(^^♪

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そしてまた現れて「あたしと寝たんだから財産半分ちょうだい」と
天下の荷風先生を恐喝する(^^♪
先生が仕方なく金一封を差し出すと、

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夜毎々々階下のお庭に現れて、
「こら、荷風、ドア開けんかい!」と恐喝三昧(^^♪
たまらず警察に電話をしたはいいが、

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荷風先生も鳥居坂署に呼ばれて
「お前ら、こんな下らんことで俺に厄介かけるな!」と
お久ともども刑事・佐藤慶に説教を食らうのだった(爆)。

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はい、そのおらが荷風先生と、
お久=ポーラテレビ小説「元気です!」のおらが宮崎美子(^^♪
もう可笑しくて可笑しくて、一体これは何なんじゃあ新藤兼人!
あ、違った、荷風!…、だよねえ(^^♪

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次に現れたる私娼婦は…、違う違う。
失礼だよ、われらが杉村春子さんに。永井のお母さん(^^♪
「結婚しなさいよ、老後はどうするつもり」
「僕の文学と女は一体なんです。家庭に縛られたくないんです」
「人の生き方は様々。好きになさい」
いいお母さんでよかったねえ、永井(^^♪

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永井はお歌も故郷に帰ったので
理想の女を求めて馴染みの遊里へ向かう。

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そして閨中秘技絶妙の女・黒沢きみ(八神康子)に出会う。
いかほどに絶妙かと言うと、
この女、蒸気機関車かと思うほど(^^♪
ほんとだよ、最中にホラ、障子の向こうを機関車が
走ってるだろう。

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ほら、これこれ、この車体=肉体!
何考えとんんじゃあ、新藤兼人は~!だよねえ、ほんとに(爆)。
しかしこんな笑える新藤監督も珍しいよなあ。大好き(^^♪

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しかし元々旦那持ちの女で目の前から消えた。
永井は探偵事務所に居所の探索を依頼したり、
芝浦あたりにいると聞いて自ら探し歩いたりするが、
結局見つからず(^^♪

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そして1936年(昭和11年)3月、
創作意欲は肉欲と同じ、 肉欲の衰えを取り戻すべし
と、われらが永井荷風先生は浅草を抜け、

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足を 向島の私娼窟・玉の井へと向けた(^^♪

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「玉の井」は、1918年(大正7年)~1919年(大正8年)ころ、
浅草観音堂裏に言問通りが開かれるに際し、
その近辺にあった銘酒屋等がこの地へ移ってきたのが始まり
だという。(「濹東綺譚」より)

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「濹東」は「隅田川」の東の意で、向島を指す。

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急に雨が降り始めた。
荷風が持っていた傘を差すと、

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「旦那、そこまで入れてってよ」
と、若い女が傘に飛び込んできた。

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狭い路地内のあちこちに「とおりぬけられます」
「とおりぬけられません」「ちかみち」といった標識があった。
近道はどこへの近道なのか(笑)

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女は家へ着くと、寄って行きなさいと二階へ上がり、
掛布団は要らないわねと敷布団を敷き、
着物を脱ぎ、素っ裸でその上にさっぱりと横たわった。

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永井は真上から女を眺め、言った。
「オッパイはよく締まってるなあ」
「早くしないと時間が過ぎちゃうわよ」
「今度きた時思いきりするから今日はやめとこう」(^^♪

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雨が上がったので帰ろうとすると女は
「きっといらっしゃいね」と言い、名刺を渡す。
名刺には「寺島町7-61 2部 安藤まさ内、雪子」とあった。
これが、以前は宇都宮で芸者をしていたという私娼、
お雪・26歳(墨田ユキ)との出会いであった(^^♪

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永井が帰ると雪子のおかあさん・安藤まさもすぐに
すぐ近くの自宅へ飛んで帰った。
可愛がっている学生の息子が待っているからだ。
サングラスをかけていても私の目は誤魔化せない。
乙羽信子、そのひとだべ(^^♪

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翌日、永井は約束通り現れ、

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約束通り頑張った(^^♪

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事が終わるとお雪は写真の仕事をしてくると言って
おかあさん・まさの家へ行った。
まさの息子・悟(大森嘉之)はお雪が仕事を始めると、外へ出た。
実はお雪を密かに好いているからである(^^♪

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三人のお客はんたちはお雪が脱ぐとすぐにカメラの
シャッターを切り始める。

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立ち姿の撮影のあとお雪は横たわり、歌い始めた。
♪ぽっぽっぽ、 鳩ぽっぽ、
  豆がほしいか、そらやるぞ。
  みんなでなかよく食べに来い。
笑顔を作るために歌っているのだと思うが、
このシーン、私大好きなんだよなあ。
何なんだろう。
墨田ユキの初々しさが堪らなくいいんだよねえ(^^♪

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永井は階下でまさと話をした。
お雪のことが知りたくなって話を聞こうとしたが、
以前、宇都宮で芸者をしていたらしいことのほかは
話してくれなかった。

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玉ノ井に通い始めて半年後の9月20日、
永井は墨東・玉ノ井を舞台にした小説の着想を得て書き始めた。
雪子に出会ったたまものであった(^^♪


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■116分 日本 ドラマ
監督 新藤兼人
脚本 新藤兼人
原作 永井荷風
企画 多賀祥介
プロデューサー 新藤次郎 、 赤司学文
撮影 三宅義行
美術 重田重盛
音楽 林光
出演
永井荷風 津川雅彦
お雪 墨田ユキ
お久 宮崎美子
お歌 瀬尾智美
黒沢きみ 八神康子
荷風の母 杉村春子
まさ 乙羽信子
鳥居坂署の刑事 佐藤慶
菊地寛 井川比佐志
竹さん 河原崎長一郎
取り巻き 戸浦六宏
中年の男 上田耕一
たかりの壮漢 河原崎次郎
素見客 樋浦勉
まさの息子・悟 大森嘉之
鮫やのおじさん 浜村純
永井素川 原田大二郎
艶歌師 角川博

1879年、良家の長男として生まれ育った荷風(津川雅彦)は父の意向に反し、早くから文学の道を志した。荷風文学の真髄は女性を描くことで、特に社会の底辺に生きる女性達に目が向けられた。そのため紅燈に親しむことも多く、荷風は文人たちから遊蕩児とみなされた。文壇という特殊世界に入って文士と交わることを嫌い、究極において紳士である荷風は、常に女性から手痛い被害を被る。それは女性に真の愛を求める荷風の人生への探究でもあった。やがて玉ノ井のお雪(墨田ユキ)と出会った荷風は、社会底辺の世界に生きながらも清らかな心をもった彼女に、運命的なものを感じる。しかし、57歳の荷風にとって、年のひらきのあるお雪と結婚するには、互いの境遇が違い過ぎた。それでもお雪の純情さに惹かれた荷風は、彼女と結婚の約束をする。だが、昭和20年3月10日。東京大空襲の戦火に巻き込まれて、2人は別れ別れになってしまう。戦後、昭和27年のある日、お雪は新聞で荷風が文化勲章受章者の中にいるのを見て驚くが、あの人がまさかこんな偉い人ではないだろうと、人違いだときめてしまう。そして2人は二度と出会うことはなかった。それでも孤独の中に信ずる道を歩き続けた荷風は、昭和34年4月30日、市川在の茅屋で誰に看取られることなく80歳の生涯を終えるのだった。

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    Excerpt: 映画綺譚で検索かけると墨東綺譚が上がってくるんだけど、 まぁ だよな、綺譚は荷風さんだものねぇと。 普段だったら「んな 本読めばいいじゃん」となるところ 映画紹介のブログに上がって墨東綺譚の紹介がよろ.. Weblog: Sugar Dumpling racked: 2016-09-30 19:44