花咲く港 (1943) 日本

[1095]木下恵介作品を決定づけた監督デビュー作品

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1943年(昭和18)に公開された
木下恵介の監督デビュー作。当時31歳。

原作は菊田一夫の戯曲で、古川緑波一座初演だが、
すでに木下恵介の資質が詰まっている傑作。
黒澤明の「姿三四郎」とともに、
新人映画監督を対象にした山中貞雄賞を受賞している。
だいぶ遅くなりましたが、監督、本当におめでとうございます(^^♪

物語は単純。

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舞台は和16年、九州南方のある小島。

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それもこんなに椰子の木の生えた小島。
うそ、こんな島あった?
私は九州南方出身だけど知らんぞ(^^♪
ちなみ菊田一夫の戯曲では瀬戸内海の小島ではなかったか
と思うが、昔々読んだだけなので忘れた。

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その島へある日突然、島の恩人渡瀬健三技師の御曹司、
健介(小沢栄太郎)、健二(上原謙)兄弟が上陸してくる(^^♪

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島の有力者を初め、島民は爆弾騒ぎ。
父・渡瀬健三がこの島・片の浦でやり残した造船所を
私たち兄弟が受け継いでやります!と言い出したからだ。

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ところがドッコイ。渡瀬健三の息子というのは真っ赤な嘘。
この二人、名うての詐欺師、野長瀬修三と勝又留吉で、
どこからか故・渡瀬健三の話を聞きつけて
造船所計画を持ちだし、島民たちに株を買わせ、
めでたく金が集まったら、お手々繋いで二人して仲良く
トンずらしようという計画だったのである(^^♪

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が、株発売と同時に、造船所は島民の夢だったものだから
売れるわ売れるわで集まった金はなんとただいま5万円。
そんな大金など詐欺したことなどないものだから、
修三と留吉は逆にうろたえて持ち逃げする勇気を失ってしまう(^^♪

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さらに間の悪いことに、故・渡瀬健三の妻ゆき(村瀬幸子)と
遺児が夫の過ごした島を見たいと訪れてきて、
二人の泊まっている「かもめ館」で働きはじめる。

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もっとも渡瀬にベタ惚れして振られたかもめ館のおかみ、
おかの(東山千栄子)に渡瀬の妻であることは口外しないよう
口止めされるのだが。
理由? おかのさんが渡瀬に振られたことを島民に知られて、
恥を掻きたくないからなんだって(笑)。

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が、修三と留吉はたまたま二人が故・渡瀬の妻と子だと知り、
まずい、素性がばれると泡食って逃げ出そうとすると、

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日本が真珠湾を攻撃して勝利した報がもたらされ、
島民たちは大喜び、怪気炎を上げる。
英米との戦さだ、船がいる、船だ船だすぐ作ろう、と(^^♪

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島民たちは純情で優しいひとたちばかりだし、故・渡瀬の妻は
夫の遺志が受け継がれたと泣いてけなげに働くし、
修三と留吉は仕方なく造船を開始する(^^♪

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造船の様子を見て修三は呟く。
ああ、船がドンドン出来上がっていく。
子供みたいに喜んでる島の人たちを見ると嬉しいような、
5万円がドンドン消えてくかと思うと悲しいような(爆)。

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よし。こうなったらやっぱり逃げ出すほかはないと、
二人は嵐のドサクサに紛れて逃亡を図るのだが、
こんな日に船が出る訳はないかと気づく(^^♪

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一方、渡瀬ゆきは、
完成間近の船が流されそうになるのを知って
港へ走るが、途中でばったり。

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倒れているお雪を発見した二人は部屋へ運び、
ああ、おゆきさんに比べ俺たちはこんな時にと深く深く反省し、
嵐の中、船の救助へ走る。

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かくして船は完成し、島民総出で、本日めでたく
渡瀬丸の進水式。

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ところが肝心にして最高殊勲選手の渡瀬健介・健二兄弟が
一向に姿を現さない。宿からも姿が消えている。
島民たちが心配をしていると、

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その頃、自首した詐欺師、修三と留は島に別れを告げ、
めでたく島のお巡りさんと長崎警署へ向かっている
最中なのでした(^^♪

ではキャストを改めて紹介しょう(笑)。

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故・渡瀬健三技師の御曹司、健介。
実は詐欺師、野長瀬修三…、小沢栄太郎はん(^^♪
ラストシーンの船上。あの強面で通ってるはずの小沢さんが
こんな喜劇をと笑っちゃえ~♪

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故・渡瀬健三技師の御曹司、健二。
実は詐欺師、勝又留吉…、上原謙さん(^^♪
旅館「かもめ館」に現れるシーン。
天下の二枚目上原謙がよ、この顔でズーズー弁で喋るんだぜ。
ギャー、やめてくれえ~だよねえ♪

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主舞台になってる旅館「かもめ館」の女主人おかの…、
東山千栄子さん(^^♪
島を離れて南へ去った故・渡瀬健三技師を追いかけて
振られて帰ってきたが、いまも故・渡瀬に恋をし、
島へやってきた渡瀬夫人をライバル視してんの♪
東山さんのコメディは珍しくはないが、可愛いのよお(笑)。

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島の村長…、小津安二郎の初期作品の主役をよく務めた
坂本武さん(^^♪ あんまし活躍はしないで黙って見てるだけ♪

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網元の林田…、東野英治郎(^^♪ 金しか頭にないケチンボ。
鼻、目、唇、そして顔立ちと、後年と何も変わっとらんでえ~♪

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馬車会社の社長・野羽玉…、笠智衆(^^♪
舞台が九州なので熊本弁丸出し。あ、いつもか(笑)。
人間は金じゃない!情熱だ!
と、いつも網本林田に説教を食らわしとるで♫

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はい、進水式のシーン。上の三人、アホ丸出し♪

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小沢栄太郎と笠智衆のデート♪

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故・渡瀬夫人のゆき…、村瀬幸子さん(^^♪
懐かしいよねえ。相変わらず綺麗だよお。

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平湯お春…、水戸光子さん(^^♪
島で1、2位を爭う美女で…、ジャン!

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留吉と恋をしてしまうのだ🎵
留吉がわが身を反省するのは彼女に恋したからなのだあ~。

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どけどけ~と、お春を突き飛ばしそうな勢いで走る
村の青年英吉は、小津さんに秋田志郎に改名しろ
と怒られた大坂志郎はんだべ(^^♪

走るシーンと言えば木下恵介お得意のシーンだよね。

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お春が自転車で走る。

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村人が走る。
いや、木下が走らせるのだ、しかも全力で(^^♪

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ここは圧巻のシーン。
島の漁船がアメリカ軍にやられたと言って、
島民たちが港に駆けつけるシーン。

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島民たちが遠くから全力で走ってきて、

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カメラの前までやってくると、

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今度はカメラも一緒になって走り、島民たちの表情を追う。
1カットシーンなんだけど、よっ、待ってました木下恵介!
と私は飛びあがりたくなるよなあ(^^♪

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来島した故・渡瀬健三技師の御曹司、健介を迎えに
馬車が走る(^^♪
これらのロング映像もいかにも木下恵介らしくて
私は観てるだけで嬉しくなる。
言い添えると、人間を突き放し、風景の中に置いて見る。
そういう木下の視線が
ロングを多用させるんだと私は思ってるんだけどね。

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この馬車には故・渡瀬に恋して南の島まで追いかけた
「かもめ屋」の女主人おかのと、村長らが乗っている。

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村長はおかのが追いかけていったことを知っているので、
話を振り、おかのに故・渡瀬の話をさせようとする。
おかのは振られても何も話さないのだが、
場所の向こうの風景に注目して。
初めはこの島の港や、山の風景が映っているんだけど、

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ある瞬間からその場所の向こうの風景は、
おかのが渡瀬を追っていった町の風景に変わっているのだよ(^^♪
そうやっておかのの心を表現してる訳だけど、
こういう遊び心はまさに木下恵介独自のものなんだよね。
私はまたまた嬉しくなって飛び跳ねたくなったよ💛

そのほか会話のリズム。テンポ。カラッとしてるくせに、
あるいは喜劇タッチのくせに抒情をも醸しだしてみせる。
そして音楽など、木下恵介の演出の特徴が
このデビュー作の中にぎっしりと詰め込まれているよ。

原作が菊田一夫で戦争中なので戦意高揚的な雰囲気も
見られないではないのだが、
そうした映画をデビュー作で撮ってしまったことが
このあとの木下映画を決定づけたような気も私はしている。

文句なしに面白いし、時代もよくわかるし、
まずはご覧くださいな。


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■83分 日本 ドラマ
監督: 木下恵介
原作: 菊田一夫
脚色: 津路嘉郎
撮影: 楠田浩之
美術: 本木勇
編集: 杉原よし
音楽: 安倍盛
出演
小沢栄太郎 野長瀬修三
上原謙 勝又留吉
水戸光子 お春
笠智衆 野羽玉
東野英治郎 網元林田
坂本武 村長
東山千栄子 おかの
半沢洋介 平湯良二
村瀬幸子 ゆき
槇芙佐子 せつ代
河原侃二 袈裟次
仲英之助 木村巡査
大坂志郎 英吉
毛塚守彦 技師
島村俊雄 小使
井上妙子 ゆきの子

造船で栄えた小さな島も、造船所の閉鎖とともに今はすっかりすたれてしまっていた。そんな小さな村の村長(坂本武)のもとに、造船所をつくり島の英雄と称えられた野長瀬技師の御曹司修三(小沢栄太郎)から島を訪問したいという電報が入った。きっと何か良いことがあるに違いないと村の唯一の工場社長(笠智衆)、網元の(東野英治郎)、野長瀬技師の恋人だった岡野(東山千栄子)らは修三を歓待するのだった。ところが、もう一人修三を名のる男(上原謙)があらわれた。のどかな島にあらわれた詐欺師が引き起こす人情喜劇。

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