ミリオンダラー・ベイビー (2004) アメリカ

[1086]マギーとフランキーの結末を非難する権利など誰にもない

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「人生の特等席」とともに、
C・イーストウッドの後期作品の中で私が
もっとも愛している作品。

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舞台は、ロサンゼルスのあるボクシング・ジム。

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ジムを経営しているのは、
止血係(カットマン)として活躍してきたフランキー・ダンという
すでに老齢の男だ。
彼はトレーナーとしても極めて優秀である。

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そして裏で支えているのは雑用係の旧友エディ。
かつて「スクラップ・アイアン」の異名をとった元ボクサーだ。

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演じているのはわがC・イーストウッドとモーガン・フリーマン。
私がこの映画を愛する理由のひとつは、
言うまでもなくこの絶妙なコンビのせいである。
心がツーカーで、互いに敬愛しながらやっているのが
手に取るようにわかり、ひどく嬉しくなるのだ(^^♪

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先に言っておくと、この物語は、
旧友エディが音信不通になっているフランキーの実娘
ケイティに宛てて書いた手紙として語られていく。
つまりエディの語りで物語が進行していく訳だ。

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フランキーは手塩にかけて育ててきたウィリーという
ボクサーを抱えている。が、ある日、
彼は突然フランキーを切り、別のマネージャーにつく。
すでに世界タイトルを争える実力だが、
フランキーが慎重を期して世界戦を先延ばしにしてきたからだ。

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同じ頃、フランキーに憧れてジムの門を叩いた女がいる。
ウェイトレスとして働いているマーガレット(マギー)、31歳だ(^^♪

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頑固おやじしか演じない私の兄貴イーストウッドは(笑)、
女は受け入れない、第一トシは幾つだと相手にしないが、
頑固一徹はマギーも同じでジム通いをやめない。

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エディは彼女のガッツと素質に惚れ、
フランキーに内緒でこっそりコーチを始める。

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そしてマギー、32歳の誕生日の夜。

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フランキーはマギーの根性に根をあげ指導を始める。
俺のやることに質問は一切禁止だと念を押し。

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マギーをボクサーに育てようと決心したのは実は、
彼女の境遇を知ったからだ。
家庭は貧しく、トレーラー・ハウス暮らし。
父親は優しかったが早くに他界し、13歳からずっと働いてきた。
3000kmも離れたこの街へやってきたのは
心中決するものがあったからだ。
母親に自分を認めてもらうこと、優しくしてもらうこと。

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一方、フランキーも心の疵を抱えていた。
ボクシングに夢中になり家族をほったらかしにしてきたことだ。
結果、娘ケイティは音信不通。
手紙を書いて送り続けるのだが、いつも送り返されてくるばかり。
で、マギーの面倒をみることで娘への償いをしたい
という心が働いた。

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トレーニングを重ねてきたマギーが試合をやりたいと申し出る。
フランキーは知り合いのサリーというマネージャーをつけた。

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デビュー戦。サリーのあまりも無能なトレーナーぶりに堪らず
フランキーはリングサイドへ走る。

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再びフランキーの下に戻ったマギーは連勝街道を走る。
しかも1ラウンドすべてKO勝ちだ。

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子供の頃からボクシング・ファンの私は大喜び。
当然、行け、マギ~!行け行け~となる(^^♪

あれ、言わなかったっけ?
関光徳っていうボクサーのカミソリパンチ見て以来、
ボクシングの大ファンなのよ。
若い頃は後楽園や武道館へもよく通ったべ。
自慢じゃないがたまに新聞などに世界戦のコラムも書いてたのよ。
ん? なに言ってんだよ、釣りだけじゃねえズラ(笑)。

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なに~、「眠狂四郎」と呼ばれた関光則知らないだと?
私はそんなやつとは話したくねえズララ♪(笑)
しかしマギーやっているヒラリー・スワンク、実にかっこいい(^^♪

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ある日の試合前、フランキーはマギーにガウンを贈る。
背中に「モ・クシュラ」とあった。
マギーが意味を尋ねるとフランキーはゲール語だからと言葉を濁す。

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あまりの強さに相手がいなくなり、
フランキーは彼女の階級をウェルター級に上げ、
イギリス・チャンピオンとのタイトルマッチに漕ぎつける。
そのチャンピオンを倒し、ファンはいつしか
「モ・クシュラ」を熱狂的に迎え入れるようになる。

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この頃、ギャラを溜め続けてきたマギーは念願の家を買う。
自分の家ではない、故郷の母親へ贈る家だ。
だが母親は喜ぶどころか、
こんな家に住んだら生活保障を打ち切られる、
生活費をもっと送れと冷淡に迫るばかり。
マギーは落胆する。

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その帰途、マギーはフランキーと一緒にレモンパイを食べる。
父親に連れられてよく来たという店で。
ここは私のお気に入りのシーン(^^♪
マギーとフランキーが実の父と娘みたいで、
家族的な情愛がそこはかとなく溢れて感じられるからだ。

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フランキーは、相手がいなくなったため
WBA女子ウェルター級チャンピオン、
「青い熊」ビリーとの試合を受ける。
ここまで避けてきたのはビリーが反則を使う相手だからだ。

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留守を預かるエディはビリー戦へ向かう二人を見送る。

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試合が始まると案の定「青い熊」ビリーは反則の雨あられ。
おいおい、こんなやつ見たことねえぞ!
いくら映画だからってこんなのありかよ!と当然私は叫ぶ(^^♪

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が、「青い熊」の手の内が読めてくると
「モ・クシュラ」は俄然反撃を開始。
パンチの嵐を浴びせKO寸前に追い込むのだが、
青い熊はゴングに救われる。

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そしてマギーがコーナーに戻ろうとするところを、
背後から反則パンチを浴びせる。

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マギーはコーナーの椅子に頭部をぶつけ昏倒する。

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病院のベッドで意識は取り戻したものの、
首を骨折し、生涯全身不随の診断を下される。

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マギーは見舞いに来たエディに言う。
ボス(フランキー)に伝えて、ごめんなさいと。
あれほど「自分を守れ」と教えられてきたのに、
あの時(油断して)手を下ろしてしまった私が悪いの、と。
エディはマギーの心に驚く。

フランキーは治せる病院があるはずだと
病院探しに奔走するが、診断はどこも同じだ。

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フランキーはジムをエディに任せ、マギーに付き添う。
姿を見せないマギーの家族を呼ぶが、
母親も兄夫婦もまるで自分たちのことしか考えていない。

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マギーは呼吸装置の力を借りることでしか呼吸できない。
更に片足をも切断。

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マギーはある日、ついにフランキーに頼む、
自分の命を終わらせてくれと。
それはできないとフランキーが断ると、
マギーは自ら舌を噛み自殺未遂を謀る。

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マギーの頑固さを知るフランキーは苦悩し、
20数年通い続けている教会の神父に相談する。
神父はすべてを神に任せるようにと忠告する。

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フランキーの苦悩を察したエディは彼に言う。
「人は毎日死ぬ。床掃除や皿洗いをしてね。
そして人生を悔いながら最期を迎える。
マギーに悔いはない。彼女が最後に思うことは…、
いい人生だった、と」

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フランキーは深夜密かに病院を訪れ、マギーに伝える。
「呼吸装置を外す。君は眠るんだ。
モ・クシュラとは『愛する人よ、お前は私の血』という意味だ」と。
そうしてマギーに口づけをする。

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マギーは笑む。涙を零す。
フランキーは呼吸装置を外すとマギーにアドレナリンを
過剰投与し、

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病院から消えた。

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エディはジムでフランキーが帰って来るのを待つ。
だが彼は二度と戻らず、
フランキーの娘ケイティ宛てに手紙をしたためる。
「ケイティ、君のお父さんはそういう男だった」と…。

フランキーはたぶんマギーの後を追って死んだのだろう。

この作品はアカデミー賞の作品賞、監督賞、主演女優賞、
助演男優賞の主要4部門を独占しているが、
公開当時から賛否両論に包まれたという。
結末に「尊厳死」の問題を扱っているからである。
とりわけキリスト教右派からの批判・抗議が激しかったようだ。

詳細は知らないが、マギーとフランキーの選択に対して
他人がどんなに非難・批判を浴びせようと、
こうした究極の選択を迫られた場合、マギーとフランキーの
ような選択をするひとは後を絶たないだろうし、
また誰にもそれを止めることはできないだろうと思う。

非難・批判する権利もない。死の選択は
その人間に残された最後の自由なのだと私は思っている。

自死をすべて否定的に考える考え方もわからない。
エディが言うように、いい人生だったと悔いなく自らの人生を
閉じるひとも中にはいるかもしれないからだ。

こうした映画を撮るなというのも変だ。
創る者の勝手だろう、と思う。
表現者は何も社会を代弁して創る訳ではないのだから。
そんなことをしたらどんな表現であれお終いだよ、と私は思う。

第一、マギーは
全身不随の自分に絶望して自死した訳じゃないだろう。
容赦なく反則を繰り返す「青い熊」や、
娘を娘だとも思わない自分の母親が、家族がいやになって
死んだんじゃないのか?
彼女たちの背後に見える「アメリカ」にうんざりして!

と、私の妄想は勝手に膨らんで止まらなくなるので、
物語について喋るのはもうやめよう(笑)。

私がこの作品が好きなのは、
ほとんど自然体に近い感じで作られているからである。
そう言ってよければ老いたC・イーストウッドが
ゆっくりと呼吸をする、その呼吸の速度で。

物語はボクシングという激しいスポーツを扱っているし、
また尊厳死というある意味ドラマチックな主題を扱っているのだが、
そうしたドラマチックな動きを最小限に抑えて
ごくゆっくりとした命のリズムで撮っている。

そのため見過ごされがちな風景や心の動き、表情などが
よく見えてくる。見えてくるのでそれを大事にしながら撮っている。
そういう感じがあって私は大好きなのだ(^^♪

私の言い方で言うと、
できる限り造り込まないで作る作り方ということになるのだが、
兄と敬愛するC・イーストウッドがその境地に入った気がして、
公開時なんだかものすごく嬉しくなったものだ(^^♪


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■133分 アメリカ ドラマ/スポーツ
監督: クリント・イーストウッド
製作: クリント・イーストウッド
ポール・ハギス トム・ローゼンバーグ アルバート・S・ラディ
製作総指揮: ロバート・ロレンツ ゲイリー・ルチェッシ
原作: F・X・トゥール 『テン・カウント』(早川書房)
脚本: ポール・ハギス
撮影: トム・スターン
美術: ヘンリー・バムステッド
編集: ジョエル・コックス
音楽: クリント・イーストウッド
出演
クリント・イーストウッド  フランキー・ダン
ヒラリー・スワンク  マギー・フィッツジェラルド
モーガン・フリーマン  エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス
アンソニー・マッキー  ショーレル・ベリー
ジェイ・バルシェル  デンジャー
マイク・コルター  ビッグ・ウィリー
ブライアン・オバーン  ホーヴァク神父
マーゴ・マーティンデイル  アーリーン・フィッツジェラルド
マイケル・ペーニャ  オマー
ベニート・マルティネス  ビリーのマネージャー

「許されざる者」「ミスティック・リバー」のクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた衝撃のヒューマン・ドラマ。厳しいボクシングの世界を題材に、そこに生きる名もなき男女の悲愴な人生模様を綴る。アカデミー賞で作品賞をはじめ主演女優、助演男優、監督賞の計4部門を受賞。共演は、ともに本作でオスカーを獲得した「ボーイズ・ドント・クライ」のヒラリー・スワンクと「ショーシャンクの空に」のモーガン・フリーマン。
ロサンジェルスのダウンタウンにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。その指導力に疑いのない彼だったが、選手を大切に育てるあまり、成功を急ぐ優秀なボクサーは彼のもとを去ってしまう。そんなある日、31歳になる女性マギーがジムの門を叩き、フランキーに弟子入りを志願する。13歳の時からウェイトレスで生計を立てるなど不遇の人生を送ってきた彼女は、唯一誇れるボクシングの才能に最後の望みを託したのだった。ところが、そんなマギーの必死な思いにも、頑固なフランキーは、“女性ボクサーは取らない”のひと言ですげなく追い返してしまう。それでも諦めずジムに通い、ひとり黙々と練習を続けるマギー。フランキーの唯一の親友スクラップはそんなマギーの素質と根性を見抜き、目をかける。やがてマギーの執念が勝ち、フランキーはついにトレーナーを引き受けるのだが…。

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