夕やけ雲_1 (1956) 日本

[1097]ここに描かれた家族像、人物像はいまや「理念」としてしかありえない

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戦後10年が経った東京の、とある下町。

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高校生の洋一は、父源吉、母お新、
姉豊子、妹和枝、弟妹の七人家族で細々と暮していた。

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父源吉(東野英治郎)は魚屋をやっていた。

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洋一(田中晋二)は魚屋が嫌いだった。
学校に通い始めた頃から、
みんなにサカナ臭いといじめられてきたからだった。

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将来は船乗りになりたいと思っていた。
家が貧乏で狭かったこともあり、広々とした所へ出たかった。

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なので毎日、二階の窓から
叔父に貰った双眼鏡で遠くの海を眺めていたが、
海は見えなかったので、美容室さんらしき二階に住んでいる
若い綺麗な女性を眺めていた(^^♪

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好きになってこっそりその人を描くこともあった(^^♪

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仲のいい友達もいた。
同じ高校に通う原田誠二(大野良平)だ。
家が近いのでいつも一緒に下校し、何でも話し合った。

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姉の豊子(久我美子)には恋人がいた。
同じ会社に勤めている須藤(田村高廣)だ。

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須藤とは結婚の約束をしていた。
美男だったこともさることながら、
須藤の父親が事業をやっていて金持ちだったからだ。
アプレゲールの豊子はそのことを洋一に自慢した(^^♪

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が、ある日突然、豊子は須藤との婚約を解消した。
須藤の父親が事業に失敗し、須藤が
一介のサラリーマンに過ぎなくなったからだった(^^♪

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そのことを知って父源吉と母お新(望月優子)は茫然とした。
わが娘ながら豊子が何を考えてるのかさっぱりわからなかった。
そんな娘に育てた覚えなどなかった(^^♪

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豊子のアプレぶりはそれに留まらなかった。
ある日、会社は辞めた、近く結婚することにしたと言うのだ。
二回りも違うどこぞの社長と。

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しかもこの家から嫁入りはしない。
課長の親戚の娘ということにしてそこから嫁入りする。
貧乏な魚屋家族は結婚式に呼べない、と言うのだった。
源吉とお新は言葉を失った。

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と、そこへ豊子を忘れられない須藤が怒鳴り込んできた。
「豊子、出て来い!やり方がえげつなさ過ぎるぞ!」と。

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もともと心臓のよくない源吉は結局、
娘にたいする怒りと心労で倒れて寝込んでしまい、
病床から洋一に頼み込んだ。
この魚屋を継いでおかあさんを助けてやってくれ、と。

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洋一は堪らず二階へ引っこんで泣いた。
洋一の気持ちを知っている母お新は頼んだ。
「魚屋にならなくていいよ。でもとうちゃんは長くないらしいんだ。
だから生きてる間だけとうちゃんの気がすむようにしてやりな」と。
洋一は言った、
「いいよ。とうちゃんが死んだら魚屋になるよ。
おれは喜んで魚屋にだってなるよ」と。
母は泣いた。

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源吉は言った。
「俺たちの一生なんて苦労ばかり多くて碌な事はなかったよ」

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お新も言った。
「悪いことはひとつもしない。ただ正直々々に生きてきたのに」

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「戦争のバカ野郎が。あんなもんさえなかったら、
こんな横丁へ引っ越さずにすんだのに」
「ひどかったもんね、5日以内に立ち退けって。
せっかく表通りでどうにかこうにかやってたのに」
「国のせいでめちゃくちゃだ」

この物語の核心のシーンである。

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戦争に駆りだされ、何もかも失った日本人庶民の多くが
当時、こうした想いを抱いていた。
木下恵介が国民の圧倒的な支持を受けていたのも、
庶民のその想いを率直に表現していたからだ。
だが高度成長経済期へ入ると国民は木下恵介を葬った。
葬ることで日本経済の高度成長を遂げようしたのだ。
そしていま日本はその痛烈なしっぺ返しを食らっている。

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豊子は親の気持ちも知らず、
婚約者社長の買ってくれたウェディング・ドレスを着て
ひとり喜んだ(^^♪

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結婚式、披露宴を終えた豊子は、
ウェディング・ドレスのまま家へ報告に来た。
が、車を降りた所で隠れて待ち構えていた須藤に殴られ、
そのまままたすぐに車に乗り帰っていった。
母お新は須藤を少し恨み、泣いた。

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洋一の友達の晋二は、洋一の気持ちを慰めてやろうと、
その手を取り、洋一の部屋から見える件の女性の家を探し歩いた。
その美容室が見つかった。

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と、例の女性は結婚をしていて、
自分のそばにいて欲しいと迎えに来た旦那に連れられ、
車で町から去っていく所だった。
洋一は悲しいような嬉しいような気持ちに襲われた。

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源吉の容態を心配して源吉の弟が大阪から上京してきた。
そこへ豊子が父の見舞いに帰ってきたが、
クリーニング屋の叔父を傷つけるようなことを言ってしまい、
すぐに家から追い払われた。

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しかし見舞いは口実で、二回りも上の旦那が退屈のあまり、
実は須藤と遊びまわるために現れたのだった(^^♪
二人はそのまま箱根へ泊まりに行ってしまった。
田村高廣、ああ見えても結構アプレゲール青年だったんだぜ(^^♪

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翌日、豊子の旦那が実家に電話をしてきて怒鳴った。
娘は箱根にいる、行って連れ戻してこい、と。
かねてから頭に来ていた源吉が電話に出て怒鳴り返した。
「お前は亭主じゃねえか。
豊子が可愛かったら手前でさっさと迎えに行きやがれ」と。
しかしその怒りと興奮のせいで受話器を置くと
そのままバッタリと倒れてしまった。

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父、源吉は死んだ。

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葬式が終わると洋一は妹和枝と弟を連れて
遊園地へ行き、一日遊んだ。
明日、和枝が叔父に引き取られ、大阪へ発ってしまうのだ。

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その明日が来た。

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洋一は母に言われて妹を送り、途中で別れた。

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が、堪らずに「和枝!」ととって返し、言った。
「いまに兄ちゃんきっと迎えに行くからな。待ってろよ」と。

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和枝は走り去る兄を見送り、
叔父(日守新一)とまた歩き始めたが、途中で足が止まり、
泣いた。

この移動のシーンは、
移動カメラの第一人者・木下恵介らしく本当に素晴らしい。

ついでながらこの妹和枝をやっている
菊沖典子ちゃんの演技も素晴らしく、観てて涙を堪え切れない(^^♪
菊沖ちゃんだけでなく、この頃の日本の子供たち、
本当に素直でうまかったなあと思うよねえ。


※「夕やけ雲_1」
※「夕やけ雲_2」


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■77分 松竹 ドラマ
監督: 木下恵介
製作: 久保光三
脚本: 楠田芳子
撮影: 楠田浩之
美術: 平高主計
音楽: 木下忠司
出演
秋本洋一  田中晋二
父源吉  東野英治郎
母お新  望月優子
姉豊子  久我美子
妹和枝  菊沖典子
須藤  田村高廣
秋本幸造  日守新一
原田誠二  大野良平
父春夫  中村伸郎
母喜代  山田五十鈴
雑貨屋のお神さん  野辺かほる
菓子屋のお神さん  岸輝子
遠メガネの少女文子  有田紀子
遠メガネの少女の父  高木信夫

木下恵介が監督した青春映画。オリジナル脚本は木下の実妹である楠田芳子が、音楽は木下の実弟である木下忠司が担当。久我美子がブルーリボン賞助演女優賞を受賞した。
下町の魚屋の長男である秋本洋一は、魚屋ではなく船乗りになりたいと思っていた。親戚からもらった双眼鏡で遠くを見るのが日課だった。しかし父の源吉が心臓病で倒れてしまい、洋一は魚屋を継ぐことにする。洋一は双眼鏡で見かける少女を一目見ようと、友人とその家を探し当てた。しかしその少女は、病気の身でありながら、これから嫁ぎに行くところだった。洋一の姉の豊子は五十歳で金持ちの男の後妻となるが、前に付き合っていた若い男と箱根旅行へ出かけていた。豊子の夫からの電話を受けた源吉は、その場で倒れ亡くなってしまう。

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    Excerpt: その足で洋一はそのまま友達の誠二を訪ねるが、 かれはまだ学校から帰っていなかった。 おまけに母親(山田五十鈴)から意外な話を聞かされた。 近く父親の転勤で北海道へ引っ越すというの.. Weblog: こんな日は映画を観よう racked: 2015-05-05 21:33
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