風花_1 (1959) 日本

[1100]大自然の側から、あるいは家屋の側から人間を見る木下恵介の世界

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信濃川の流れる信州善光寺平。
信州の人たちが盆地のことをなぜ「平」と呼ぶのか謎なんだという(^^♪
真っ平だから「平」と素直に言ってるだけだと私は思うのだが(笑)。

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村人たちが元地主の名倉家の門前を注視している。
村の子供たちが門内から走り出てくる。

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花嫁が現れ、県道に置かれた車へ向かう。

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名倉家の長男の娘さくらが嫁いでいくのである。

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名倉家の次男の妻春子が門前で花嫁を見送る。
息子捨雄の姿が見えないことに春子が気づく。

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結婚式の行われた家の中へ戻ってみるが、いない。

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裏庭の自分たちの家を探すが、そこにもいない。

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裏門から出てあたりを見るが、いない。

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もしやと思い、慌てて裏の信濃川のほうへ走る。

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土手に出て「捨雄」と息子の名を呼び、走る。

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橋を走りながら探す。いた、河原に。

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捨雄が下流へ向かって走っている。
春子は「捨雄」と呼び止め、追いかける。

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草履を脱ぎ捨て追いかける。

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捨雄が走る、川の深みを目指し。

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川の流れの中で捨雄が立ち止まった。

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春子は追いかけ、捨雄を河原に連れ戻す。

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そして「ばか、ばか、ばか」と泣いて息子の背中を叩き、泣く。

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泣き伏す捨雄の手には舞扇が一本、固く握りしめられている。

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シーンが変わり、さくら(久我美子)がその舞扇を手に
名倉家の家の中で舞の稽古をしている。

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回想シーンが始まったのだ。
捨雄の手にその舞扇がなぜ握りしめられていたのか
というこの物語の…。

ここまで5分弱。いわばブロローグなのだが、
さすが木下恵介、上手いなあ、と私はほとほとに感心する。
物語の拵え方、映像、音楽、そのリズム。
派手さは少しもなく、むしろ凡庸なように見えるかもしれないが、
観ているといっぺんに木下ワールドに持って行かれてしまうのである。
やっぱり天才だよな、木下は、と思う。

一番凄いのは絵(映像)の引き方だ。
黒澤はセットの中に人間を置いて映像を撮るが、
木下は大自然をセットに見立て、そこに人間を置いて撮る。
当然、木下のほうが黒澤の引きより遙かにロングになる。
結果、自然の中で生を営んでいる人間のその様子が
強烈に浮かびあがってくる。

自然の前では人間はいかにも卑小でちっぽけだ。
しかし卑小でちっぽけであるが故に、人間が無性に愛おしく見えてくる。
それが木下映画の核心なのだとよくわかるようになっているのである、
このプロローグを観ているだけで(^^♪

ついでに言っておくと欧米の映画はたとえ
どんなに素晴らしい映画だろうと概ね人間が中心である。
黒澤にしろ小津安にしろその傾向は否めないが、
つまりどこか欧米的なのだが、木下は違う。
徹底して大自然を中心に据えるのである。
大自然の側から、あるいは
家屋の側から人間を見る数少ない作家なのである。
私が木下恵介にゾッコンになるのもその視線のせいである(^^♪

物語の続きを簡単に紹介しよう。

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19年前のある日、大地主の
名倉家では次男英雄の出征祝いが行われていた。

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だがその夜、次男英雄は
恋人の春子と一緒に橋の上から信濃川に身を投げる。
春子は一命を取りとめるが、英雄は死ぬ。
身を投げたのは、春子のお腹に英雄の子がいて、
彼女ひとりを置いて戦地へ行くのが耐えられなかったからだ。

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英雄の父・名倉強之進(永田靖)は、
名倉家の恥晒しだと、使用人・弥吉(笠智衆)が止めるにも拘わらず
英雄の遺骨を信濃川に投げ捨てる。

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春子(岸恵子)は小作人の娘で、当時17歳。
事件後、出征した兄の戦死の知らせを受け、
父親は相次ぐ不幸に耐えられず納屋で首を括る。
結果、村人の間で名倉家の陰口が叩かれるようになった。

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名倉強之進は使用人・弥吉の助言もあり、
仕方なく英雄の子を孕んでいる春子を家に引き取る。

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だが住まいは庭の離れの粗末な小屋、
生まれてきた男の子の名前も要らぬとばかりに「捨男」と
勝手に役場へ届ける。
優しくしてくれた使用人・弥吉は強之進の酷さに暇を申し出、
もう庇ってくれるものもいなくなる。

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そんな義父母の冷たい仕打ちの中で、
長男勝之のひとり娘であるさくらだけはいつも
姉弟であるかのように捨雄と遊び、可愛がる。

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ちなみに少女時代のさくらを演じているのは和泉雅子だ。

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戦後、農地改革で地主制度が解体され、名倉家は没落。
強之進は長男の妻たつ子(井川邦子)の里とも
金の貸し借りで揉め、たつ子にも当たり散らす始末。
この時誤って土間に落ち、死亡すると
こんどは強之進の妻トミ(東山千栄子)が家長におさまり
名倉家の強権を振い始める。

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捨雄は学校へ行きはじめると、
案の定、村の子たちに「捨て子」といじめられる。
捨雄が食ってかかり多勢を相手に喧嘩を始めると、
さくらはいつも中に入って止め、彼を庇う。

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が、子供の親が文句をつけてきて、
捨雄の代わりに母春子が土下座をして謝ることも。

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捨雄は中学を出ると、母春子の仕事を手伝い始める。
名倉家の農作業は二人に押し付けられた。

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一方、さくらは高校を卒業したら東京の大学へ進学したい
と思うのだが、祖母トミの反対にあう。
さくらの婿養子が現れるのを待つためである。
名倉家に相応しい、財産を持った婿養子を。

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さくらの仲良しの友人、乾幸子を演じているのは有馬稲子(^^♪

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そのため結局、東京へ出ることはできず、
祖母の言いつけで習い事ばかり。
家の屋根に押しつぶされそうな、そんなさくらの心の慰みは、
同様に祖父祖母に虐げられてきた捨雄の存在である。
かれが傍で見ていてくれるだけで習い事も耐えられる。

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捨雄のさくらに対する気持ちに薄々気づいている春子は、
自分と英雄の二の舞になることを恐れて、
さくらには近づかないほうがいいとさりげなく注意するのだが。

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そんなある日、舞の会が開かれることになった。
さくらは捨雄に観に来てほしいと頼む。

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が、さくらに結婚を申し込んだ男も観に来ることがわかり、
捨雄の心は落ちる。

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結局、その日、捨雄は行かず春子だけが観に行く。

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その時刻、捨雄は家でさくら宛ての手紙を書いていた。
「今頃踊っていることかと思います。
きっと一番綺麗だろうと思います。
いいお嫁さんになってください」と。

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帰宅した春子がその手紙を見つけ、さくらの母や
祖母に見つかると大変だ、破いて捨てようと懐に仕舞う。
恋心が隠されていることは明らかだからである。
捨雄も渋々頷く。

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春子と捨男は、さくらが嫁いだら名倉家を出て
二人で暮らそうと決心する。


※「風花_1」
※「風花_2」


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■78分 日本 ドラマ
監督 木下惠介
脚本 木下惠介
製作 小梶正治
撮影 楠田浩之
美術 梅田千代夫
音楽 木下忠司
録音 大野久男
照明 豊島良三
編集 杉原よし
キャスト
永田靖 名倉強之進
東山千栄子 名倉トミ
細川俊夫 名倉勝之
井川邦子 名倉たつ子
久我美子 名倉さくら
和泉雅子 名倉さくら(少女時代)
平岡佳代子 名倉さくら(少女時代)
川金正直 名倉英雄
岸惠子 名倉春子
川津祐介 名倉捨雄
川頭顕一郎 名倉捨雄(少年時代)
竹野忍 名倉捨雄(少年時代)
有馬稲子 乾幸子
笠智衆 弥吉
小林和雄 村人A
日向三平 村人B

女優の岸恵子のために木下監督が書き下ろして監督した、純愛モードのメロドラマ。信州の田園地帯をバックに二世代にわたる身分違いの恋を、差別などの社会問題を取り入れながら描いた秀作。大地主の次男と小作人の娘が心中して娘だけが生き残った。男の子供を妊娠中の彼女は相手方の家に渋々迎えられ子供を産んだ。後にその子が長男の年上の娘に淡い恋心を抱くことに。

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    Excerpt: [1100]大自然の側から、あるいは家屋の側から人間を見る木下恵介の世界 Weblog: こんな日は映画を観よう racked: 2015-05-22 18:05
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    Excerpt: 杉田家の次男が正式に結婚を申し込んでくる。 名倉トミはこれで名倉家の面目が立った、 名倉家を笑っている世間の連中に仕返しができたと喜ぶ。 われらが東山千栄子の怪演には痺れまくるし.. Weblog: こんな日は映画を観よう racked: 2015-05-22 18:08