風花_2 (1959) 日本

[1100]大自然の側から、あるいは家屋の側から人間を見る木下恵介の世界

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杉田家の次男が正式に結婚を申し込んでくる。
名倉トミはこれで名倉家の面目が立った、
名倉家を笑っている世間の連中に仕返しができたと喜ぶ。
われらが東山千栄子の怪演には痺れまくるしかない(^^♪

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それを聞いた捨男は家を飛び出す。

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気づいたさくらが捨男を追いかけて言う。
これでやっと嫌な名倉家を出ることができる、
捨男ちゃんも喜んでくれるでしょ、と。

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そこへ春子が現れる、
東京へ行った桜の友人乾幸子が訪ねてきました、と。
そうして破かずに持っていた捨雄のさくら宛ての手紙を渡す、
捨雄の真心だと言い。
さくらはそれを読み、ありがとうと捨男に感謝する。
春子が本当に心配したのは、
二人の関係が二人だけに閉じられてしまうことだったのだ。
二人だけに閉じられてしまうと、
自分と亡き夫英雄のような事態になりかねないと心配し。
だから折りを見、二人の前で自分がさくらに渡すことにしたのだ。

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幸子はさくらに言う。私は画家と恋愛し、結婚した。
自分のことはいつも自分の意志でやってきた。
貧乏だけど幸せだし、後悔もしないだろうと。
さくらは捨雄のいる離れに目をやり、自分に問う。
私はこれまで生きてきたのだろうか、と。

さくらはせがまれてピアノを弾く。

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名倉家の屋敷を出ることのないピアノの音は、
まるでさくらの哀しい心のよう。

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深夜、さくらは寝入る捨雄を起こし、裏手の橋へ誘う。
そして自ら強く抱きしめ、口づけをし、捨雄に言う。
私は捨雄ちゃんが好きだった。私の人生はムダではなかった。
お嫁に行くけど、二人でいっはい遊んだこと、
今夜だけの二人だけのこと、私は一生忘れない、と。

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さくらの嫁ぐ日が来た。

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さくらは春子に舞扇を渡す、
仲良しだった記念に捨雄にあげてほしいと言い。

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春子は離れに引っこんでいる捨雄に舞扇を手渡し、
さくらを見送るのよと手を引き庭へ出る。

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さくらの花嫁姿を目にした捨雄は深い悲しみに襲われる。

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捨雄はひとり川の土手へ行き、嫁いでいくさくらを見送り、

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そうして川へ入ったのである。

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回想が終わり、春子が捨雄に言う。
「ばか、ばか、ばか。
おまえまでお母さんを置いて死のうだなんてばかだね。
そんなことをしたらさくらさんにどんな噂が立つかわからないじゃないか。
おかあさんも悪かった。あの日からもぬけの殻で生きてきた。
約束したように名倉家を出て、二人で暮らそう」と。

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風花の舞う日、
春子と捨男は父英雄が死んだ川に向かい手を合わせた。

すでに言ったように、木下が下方からアングルを多用するのは、
山や空などの方から人間の営みを見るためである。
このシーンでは地上より下方の世界まで、
死後に行く世界の賽の河原(煉獄)まで描かれていることになる。
つまりこの絵は、天と死後の世界の中間=地上で生きる人間の姿
なのである。
そうした絵の撮り方をするのは木下をおいて、ない(^^♪

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春子は笑んで言った。
「風花って知ってるかい。
こんな晴れた日にどこからか風に乗って舞ってくる雪のことだよ。
なんだかさい先がいいじゃないか」

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名倉家を出た春子と捨男は、
大いなる空と山と、そして父英雄の眠る信濃川に見送られて
駅へ向かった…。

表面上は捨雄とさくらの姉弟のような、
あるいは淡い初恋のような物語に見えるが、
根底で描こうとしているのは、戦中から戦後にかけての
木下の歴史観だろう。
村、家父長的な大家族、戦争、出兵、敗戦、農地改革、
地主の没落、大家族の没落、そして核家族へと至る
1940年代から1960年前後へと至る…。
ついでに言っておけば
この核家族の都市での誕生、あるいは流入がやがて始まる
高度成長を担っていくのである。

そのあたりの庶民の描き方が木下らしく実にうまい。
音楽がやや映像に同調的になり過ぎている嫌いはあるが(^^♪

俳優もほんといいよねえ。
美しすぎる岸恵子の農作業にやや違和感を抱くひとがいるかも
知れないが、そんなことに文句は言っちゃだめよ(^^♪
木下恵介が俳優に要求しているのは、
スタニスラフスキー的な演技ではなくて、
お話を「物語る」という演技な訳だから、これでいいのよ(^^♪
そのあたりも黒澤や小津安とは少し位置が違うの。
俳優に物語と少し距離を取らせてる訳だよね。

物語の構成も、私は単純に構成して紹介したが、
時間がもっと入り組んでいて、ボーッとしていると付いていけないよ(^^♪

僭越ながら私は黒澤や小津安は真似できる自信はあるが、
木下は真似できるかなあとちょっと自信がない。
一見ひどく単純そうに見えるが、実は一番難しいと思っている。


※「風花_1」
※「風花_2」


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■78分 日本 ドラマ
監督 木下惠介
脚本 木下惠介
製作 小梶正治
撮影 楠田浩之
美術 梅田千代夫
音楽 木下忠司
録音 大野久男
照明 豊島良三
編集 杉原よし
キャスト
永田靖 名倉強之進
東山千栄子 名倉トミ
細川俊夫 名倉勝之
井川邦子 名倉たつ子
久我美子 名倉さくら
和泉雅子 名倉さくら(少女時代)
平岡佳代子 名倉さくら(少女時代)
川金正直 名倉英雄
岸惠子 名倉春子
川津祐介 名倉捨雄
川頭顕一郎 名倉捨雄(少年時代)
竹野忍 名倉捨雄(少年時代)
有馬稲子 乾幸子
笠智衆 弥吉
小林和雄 村人A
日向三平 村人B

女優の岸恵子のために木下監督が書き下ろして監督した、純愛モードのメロドラマ。信州の田園地帯をバックに二世代にわたる身分違いの恋を、差別などの社会問題を取り入れながら描いた秀作。大地主の次男と小作人の娘が心中して娘だけが生き残った。男の子供を妊娠中の彼女は相手方の家に渋々迎えられ子供を産んだ。後にその子が長男の年上の娘に淡い恋心を抱くことに。

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