故郷 (1972) 日本

[1101]山田洋次がドキュメントタッチで描いた70年代初頭の家族と故郷の風景

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山田洋次の「民子3部作」の2作目。
ちなみに1作目は「家族」(1970)、
3作目は「遙かなる山の呼び声」(1980)。
いずれもドキュメンタリー色の強い作品で、
山田洋次監督作品の中では私の一番好きなシリーズかな(^^♪

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1970年初頭、舞台は瀬戸内海・倉橋島。
堀田清美の戯曲「島」の舞台でもあったので、
私もこの映画の5、6年前に訪れた。懐かしいなあ(^^♪

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石崎精一・民子夫婦は石船で生活を営んでいる。
つまり船で石をあちこちに運んでるんだよね。

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二人の間には千秋、まゆみの二人の娘がいる。
写真いいよねえ(^^♪
妻民子を演じているのはむろん私の倍賞千恵子だよ。
え、この写真じゃわからない?

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これでどうだあ~(^^♪
夫精一を演じているのはこれまたわれらが井川比佐志。
懐かしいよねえ。と言っても「忍ぶ川」で会ったばかりだけどさ(笑)。

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娘のまゆみちゃんは寝てるよ(^^♪
仕事と暮らしが同居している昔の風景。
大変だけどほんとにいいよねえ。
ちなみに千秋ちゃんはおじいちゃんが家で面倒をみている。

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石船の全景。向こうの街はもう広島なのかな♪

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運んできた石をこうやって海に捨てる。
怒っちゃだめだよ、港の埋め立て工事なんだから(^^♪
ちなみにこの港は広島の宇品港。
私が学生の頃、たまに釣りに行ったりした所。
もちろん松山へ行く時もここから船で行った。
懐かしいなあ。いい映画だなあ(笑)。

というのは冗談にしても、この映画、この夫婦の
仕事と暮らしぶりを淡々とドキュメントタッチで描いていて、
そこがほんともの凄くいいんだよね。

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夕暮れ時、夫婦は仕事を終えてようやく倉橋島へ帰る。

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港には千秋ちゃんが迎えに来ていた(^^♪

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そして家にはわれらが午前様と寅さんが(笑)。
もとい。笠智衆はおじいちゃん、
渥美清は魚行商の松下松太郎、住処は尾道。
ま、寅さんと似たようなもんだわな(^^♪
以上がメインの登場人物。

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だが時は高度成長期。
大型フェリーやトラックで石を運ぶものたちが現れ、
小さな石船の仕事はいまや窮地に立たされている。
すでに19年も使ったのでエンジンなどもガタが来ている。

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そこでエンジンを買換え、
痛んだところを修理しようと船大工に相談するのだが、
とても出せる金ではない。

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断腸の思いで石船「大和丸」の廃船を決意し、
すでに故郷を出て働いている友人のすすめもあり、
尾道の造船所で働くことにする。

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そして最後の仕事に出る。

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石切り場に着く。

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石を船に乗せ、

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広島の宇品へ船を走らせ、埋め立て地に投石する。

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最初に言ったように、
井川比佐志、倍賞千恵子という俳優を使いながらも、
石船の作業を見事にドキュメントタッチで撮ってみせているので
それだけで私なんかもう大感動だよねえ💛
考えると、いや考えなくてもそうなんだけど、
こうした「労働」ができる俳優は
倍賞千恵子、井川比佐志あたりが最後の世代だよね。
黄金期の映画や俳優の血を受け継いでいるのも💛

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島へ帰る途中、精一と民子は
島の浜で燃やされている石船を目の当たりにする。
精一は民子に聞く。

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「民子、大きな物とは何のことかいの。
皆言うじゃろが。
時代の流れじゃとか大きな物には勝てんとか。
ほいじゃがそりゃ何のことかいの。
大きな物とは何を指すんかいの。
何でわしら大きな物にゃ勝てんのかいの。
何でわしは…、何でわしはこの石船の仕事を、わしとおまえで…、
わしの好きな海で、この仕事を続けてやれんのかいの」

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先だってロフトワンのラジオに呼ばれてトークをした。
テーマは「どうなる日本の映画と演劇」だったのだが、
私がいくら止めても自慢げに金の話しかしないゲストがいた。
ぶん殴ってやろうかと思ったが、ああいう
拝金主義にまみれた日本人にこうした言葉が届くことはないだろうね(^^♪

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そうして精一と民子は、祖父をひとり残し、

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島の人々に見送られながら、故郷の倉橋島を離れた…、
というのが大筋である。

この間、カメラは瀬戸内海をはじめ、
倉橋島、広島、尾道などの当時の風景を捉えてみせる。

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ちなみにこれは音戸大橋から見下ろした瀬戸内海。
右は呉、左は音戸町、音戸町の南が倉橋島になる。
1961年(昭和36年)に架けられたもので、
2013年(平成25年)には新たに第二音戸大橋も架けられる。

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呉から広島へ向かう国道31号線。
私が広島にいた頃はこんなに立派に舗装されてなかったような
記憶があるが、道路が整備されたお蔭でトラックなどが
大量に走り始めた訳だ。

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広島電鉄。紙屋町付近ではないかと思う。
民子が精一の弟夫婦を訪ねるシーン。

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横川あたりかな?

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右、石崎健次…、前田吟。
左、妻保子…、私の田島令子。そう、結構ファンだったのよ(^^♪
健次が腕を大怪我したんで見舞いにきたんだよね。
弟の健次も兄精一と一緒に石船に乗っていたんだけど、
船を降りて広島で働きはじめたという設定。
かれは先を見込んでたってことかな。

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渥美さんが島で魚の行商をやっているシーン。
お客さんは地元のひとたち(^^♪

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こっちは精一の家で町内のひとたちが会合しているシーン。
出演者は倉橋島のひとたち。言葉ですぐわかるよ。
いいよねえ。海外の作品は結構素人を使うが、
日本映画ではちょっと珍しいかな。
私、こういう作り方めちゃ好き(^^♪

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日本は高度成長期から73年のオイルショックを契機に
高度消費資本主義社会へと、世界に類を見ない社会へと
転換していく。

木下恵介や山田洋次監督が描いている庶民が
消費可能な「市民」へ上昇したという基礎ができた訳だ、
高度成長期に。
そしてそのままバブルへ突っ走り、90年代初頭に崩壊。
以後、現在まで異常に長い停滞の中にある。
それを安倍なる男は戦争によって突破しようと動きはじめた、
というのが私の大雑把な見取り図かな。

ところで高度成長から消費社会、そしてバブルへと至る中で、
家族は大崩壊した。
それが80年代の前代未聞の子供の暴力、女性犯罪として現れた。
心的な問題で言うと、ボーダー(境界例)にいる人々が激増した訳だよね。

それを私は舞台で描いたり、批評してきたりしたので、
考えると私は敬愛する木下恵介や山田洋次の跡を継いできたんだ
と最近つとに思うなあ(笑)。

言いかえると、吉本隆明は
「80%の人間が中流意識をもつ社会はそれ自体すでに異常だ」
と言ったけど、それは言いかえると日本人の80%は異常ってこと。
で、それをこの30年、私は演劇の現場をはじめ
様々な現場で味わってきたってことなんだよなあ(^^♪

ここに描かれているひとが
無性に懐かしくて抱きしめたくなるのは、その反動なのかもな(笑)。


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■96分 日本 ドラマ
監督: 山田洋次
製作: 島津清
原作: 山田洋次
脚本: 山田洋次 宮崎晃
撮影: 高羽哲夫
美術: 佐藤公信
編集: 石井巌
音楽: 佐藤勝
出演
井川比佐志 石崎精一
倍賞千恵子 石崎民子
伊藤千秋 石崎光子
伊藤まゆみ 石崎剛
笠智衆 石崎仙造
前田吟 石崎健次
田島令子 石崎保子
矢野宣 石田耕司
阿部百合子 石田和枝
渥美清 松下松太郎

瀬戸内海の小島に住む一家が、押し寄せる高度経済成長の波に追われ、それまでの慎ましくも幸せな生活を手放すまでの揺れ動く心情を哀惜をこめて描いた人間ドラマ。監督は“男はつらいよ”シリーズの山田洋次。瀬戸内海の小島、倉橋島。精一と民子の夫婦は石船と呼ばれる小さな砕石運搬船を生業としていた。夫婦は美しい自然に囲まれ、二人の子どもと清一の父親とともに、裕福ではないにしても楽しく満ち足りた日々を送っていた。そんな夫婦には最近ひとつだけ悩みがあった。長年仕事を共にしてきた大切な石船のエンジンの調子が思わしくないのだった…。

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