審判_1 (1963) フランス

[1103]主人公ジョセフ・Kを襲った悪夢はいま日本を襲っている

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昨夜、フェイスブック上で悪夢を見た。

元小結舞の海が公開憲法フォーラム
「憲法改正、待ったなし!」の席上でこう発言したというのだ。

…日本人力士の考えは甘い。
自分は真っ向勝負で戦うから相手も真っ向勝負で来てくれるだろう
と考えるが、対戦相手力士は色々したたかな戦略を考えている。
日本人力士の考えの甘さは日本国憲法の前文の影響だ、
改憲すべきだ、と。

ちなみに憲法の前文とは、「諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した」の一文を指し、
「諸国民の信義」を疑わなければ勝てないのではないか
と述べたらしいのだ。

更に驚くべきことに、憲法改正を推進する産経新聞が、
舞の海のその発言をニュースとして紹介したというのだ。

ギョッ。これが悪夢でなくて何なんだ!
こうしたハチャメチャな論理と報道が白昼堂々と罷り通る
この国は一体どこだ? おれはいま病院の檻の中にいるのか!
と、私は慌てて自宅マンションの廊下へ出て走ってみたのだった(笑)。

いや、笑ってる場合ではない。
この悪夢にたいする私の恐怖を全国民に知らせたい!
全世界の人々に知らせたい!
と思い、久しぶりに棚から引っ張り出して徹夜で観たのが
このカフカ原作、オーソン・ウェルズ監督の 「審判」だった(^^♪

主演わがアンソニー・パーキンスだから怖いよお。
「サイコ」どころじゃないよ。といっても
舞の海と産経新聞には及ばないかもしれないが(^^♪

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サラリーマンのジョゼフ・K(アンソニー・パーキンス)は、
ある朝突然、検察官と刑事に寝込みを襲われ、逮捕された。
罪を犯した憶えはまったくなかった。
罪状は何かと聞いても、検察官は一切答えない。

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しかも隣室には彼の会社の同僚たちまで現れ、Kを監視していた。
隣室は踊り子バーストナーの部屋なのに。

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Kは、まったく質の悪い冗談だと思ったが、
検察官は何か盛んにメモすると、
尋問委員会へ出頭するようにと言い残し、アパートを去った。

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踊り子バーストナーが帰宅すると、
Kはさっき自分が逮捕されたことを話し、
同僚たちの非礼を詫びようと思ったが、

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あなたには聖人さえ目が眩むなどと言い、
バーストナー演じるジャンヌ・モローについキスをしてしまった(^^♪
憧れのバーストナーとの別れになるとも知らずに。

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彼は会社へ行った。
何百人という社員が巨大な部屋でいっせいにコンピューターに
何事かを打ちこんでいる会社で、彼はそこの副部長だった。

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重大な話があると言い、従妹が面会に来ていた。
彼は副支配人に忠告された。
君は15歳の女の子と付き合い、会社にまで呼ぶのかと。
自分の言うことに耳を傾けようともしない副支配人に
少し不審を抱いた。
Kは従妹には会わず、帰した。

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アパートへ帰ると、足の不自由な知り合いの老女が
追い出されて引っ越していくのに出会った。
彼女はKの責任だと言わぬばかりに憤慨していた。
ジャンヌ・モローにキスをしてまったのがいけなかったのかと
思わないでもなかったが(^^♪
周辺でも何か起きているような気がした。何かは判らないが。

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着替えてコンサートを聴きに音楽堂へ行くと、

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例の検察官に呼びだされ、すぐに尋問委員会へ出頭するようにと
地図を渡された。
Kは検察官の傍にいた男二人に尾行されていると思った。

地図にある通り、音楽堂へ引き返し、通路を歩いた。
そして洗濯している女に指示された扉を開けると、

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そこは法廷で、信じがたいほどの傍聴人で溢れ返っていた。

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予審判事は開口一番「君はペンキ屋だな」と言った。
Kはあまりのバカバカしさに檀上に上がると、声を張り上げた。
私は何もやっていない。これは私を陥れるための罠だ。
同じことがほかの大勢のひとの間でも起きているに違いない、と。

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突然、法廷の隅にいた洗濯女を暴漢が襲い、キスをした。
傍聴人たちは一斉にその光景に目をやり拍手した。
Kは気づいた、この傍聴人たちは実は役人なのだと。

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法廷を出ると扉は巨大な扉になっていた。
そこは先程の音楽堂ではなかった。
踊り子バーストナーが言ったように、僕は夢の中にいるのか
とKは疑った。

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法廷の廊下はまっすぐ自分の会社に通じていた。

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しかも一室でKを逮捕しに現れたあの刑事二人が、
Kから賄賂を受け取ったとして拷問を受けていた。
二人はKのワイシャツを勝手に持ち帰っただけだったのだが。

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会社に伯父のマックスが訪ねてきて、
容疑を晴らすために私の友人の弁護士に頼もうと言った。
叔父は訪ねてきた従妹に話を聞いたらしかった。
従妹はいつどこでこの不可解な事件のことを知ったのか。

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終業ベルが鳴ると何百人という社員が一斉に立ち上がり、
一斉に同じ方向を目指して出て行った。
怖いよお~と私はつい声を出してしまった(^^♪

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Kは叔父と一緒にその病気療養中のハスラー弁護士を訪ねた。
かれはわがオーソン・ウェルズだった(^^♪
しかも贅沢にオーソンはロミー・シュナイダーを配していた、
自分にべったりのメイド・レニ役として(^^♪

ハスラー弁護士はすでにKの事件を知っていた。
彼は何とかコネを通じて取計らってやろうと言った。
実際、恐ろしいことに彼の部屋には公判の書記長が
尋ねてきていた。

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メイドの美女レニはKを誘い書庫へ連れて行った。
そして私には体に欠陥があるのと微笑み、手の平を見せた。

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彼女の指と指の間には不思議なことに
水かきの膜が張っていた。
私はわが目を疑い、Kと一緒にその手に見入った。
アラン・ドロンとの破局を悲しみ、彼女は
水に飛び込み蛙になってしまったのだろうかと私は唸った(^^♪

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Kが判事の描かれている絵の前で美女レニと
束の間の情事に耽っていると、
まるで警告するかのように突然雷鳴が轟き始めた。

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Kは先だっての法廷へ行った。
審判は行われていず、例の洗濯女が現れ、
あなたを助けてあげたいと言い寄ってきた。
女の誘惑に弱いKは彼女とキスをした(^^♪

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と、そこへ例の暴漢が現れ、判事が呼んでいると女を連れ去った。
男はどうやら判事の下僕をしている学生らしい。
判事は洗濯女をわがものにしているようだった。

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洗濯女の夫だという守衛が現れ、
自分の弱い立場を嘆きながら迷路のようになっている
法廷の中を案内した。

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とある通路に自分と同じ被告人たちが群れをなし、座り込んでいた。
Kはうんざりして外へ出たくなった。

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守衛に教えられた通路を行くと、外ではなく、
ハスラー弁護士の屋敷の一室へと通じていた。

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部屋ではメイドの美女レニが中年男と情事に耽っていた(^^♪

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男はブロックと言い、K同様の被告人でハスラー弁護士に
弁護を依頼していた。
彼はハスラーは弁護士の中で実は下級なのだ、
ハスラーは何もしない、何もできない、私はずっと長いこと
待たされっぱなしだとハスラーのことをボロ糞に言った。

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Kはハスラー弁護士に会った。
と、彼は滔々と自説を披露した。
メイドのレニはここを訪れる被告人全員と寝ている。
罪を犯した被告人には通常人にはない魅力があるからだ。
彼女はその情事のすべてを私に語って聞かせる、と(^^♪

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ハスラーはブロックを呼びつけ、審判の経過を話した。
判事と弁護士が癒着、謀議しているとしか言えない代物だった。
さっきの陰口とうって変わり、ブロックはハスラーに平伏した。
正義感の強いKはハスラーに、私はあなたを解雇すると伝えた。

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ハスラーはKに忠告した。
「鎖に繋がれている方が時に自由であるより安全だ」と。

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メイドのレニはKを追いかけて言った、
ハスラー弁護士なしでどこまで行けると思ってるのか、と。
Kは聞き返した、
「僕はいまどこからどこまで行ってるのだ」と。
レニはKに画家テイトレリに会うように勧めた。
彼は判事たちの肖像画を描き、判事たちに通じているから、と。

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Kは螺旋状の階段を上がり、画家テイトレリの住いを訪ねた。
なぜか女の子たちがまとわりついてきた。

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鳥籠のような部屋に住んでいるテイトレリが言った。
ここの女の子たちはみな裁判所に所属している。
実際、すべてのものが裁判所に所属している、と。

そうか、と私は納得した。
Kがやたら女にもてるのはそのせいだったのか。
彼の動向を裁判所に密告するために彼女たちは
Kに近づいたのか、と(^^♪

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咄嗟に私は
オウム叩きで先頭を突っ走ったジャーナリスト、E女史
のことを思い浮かべた。
彼女は公安に通じ、公安から得た情報を
あたかも自分が取材してきた情報であるかのように
日々テレビカメラの前で喋っていた。

「あなたはテレビに出ずっぱりで取材する時間などないはずだ。
情報はどこから入手しているんだ」と楽屋で問い詰めた時、
E女史は「公安だ」とはっきり言ったのだった。

茫然とした。
ジャーナリストがそれでいいのかと批判すると、
彼女は堂々と返してきた。
いまはオウム信者の逮捕を最優先すべきだ、
警察の捜査に何か問題があれば後で叩けばいい、と。
私はア、ワワワと口から泡を吹いて気絶しそうになったものだ。

弁護士のコメンテーターたちも凄かった。
寄ってたかって彼らはクロだ、はやく逮捕しろと日々言い続けた。
この国は一体どこだ? おれはいま病院の檻の中にいるのか!
と悲鳴を上げたい気持ちと必死に闘いながら私は言ったものだ。

「弁護士は被疑者を弁護する立場にあるのではないのか。
もし私が警察に何かの疑いをかけられた時、
私は誰に弁護を頼めばいい。
あんたたちには怖くてとてもじゃないが頼めないよ」と。

お蔭で私は非国民扱いされ、
自宅には「家に火をつけるぞ」「殺すぞ」
といった脅迫電話や脅迫手紙が殺到したものだ。
信じられないかも知れないがこれ全部ホントのことだからね(^^♪

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彼はKに聞いた。
どんな罪の免除が希望か、
表向き、完全なもの、それとも遅延か、
完全な全面無罪が最高だが、そのような評決に変えることは
誰にもできないが、と。

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そして付け加えた。
完全なものの評決に変えることができないのは、
私も、あなたも、誰も入ることができない部屋があるからだ、と。
Kは絶望した。


※「審判_1」
※「審判_2」


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■119分 フランス/イタリア/西ドイツ ドラマ/サスペンス/SF
監督 オーソン・ウェルズ
脚色 アントワーヌ・チュダル 、 オーソン・ウェルズ
原作 フランツ・カフカ
台詞 オーソン・ウェルズ
製作 アレクサンドル・サルキンド
撮影 エドモン・リシャール
美術 ジャン・マンダルー
音楽 ジャン・ルドリュ
出演
Josef K.  アンソニー・パーキンス
Mrs. Burstner  ジャンヌ・モロー
Leni  ロミー・シュナイダー
The Advocate  オーソン・ウェルズ
Hilda  エルザ・マルティネッリ
Mrs. Grubaoh  マドレーヌ・ロバンソン
Miss Pittl  シュザンヌ・フロン
The Chief Clerk  フェルナン・ルドウ
Bloch  エイキム・タミロフ
The Inspecter  アーノルド・フォア

原作は名高きカフカの不条理文学で、これを現代の物語として、コンピュータ(と言っても巨大な代物で、いま観ると隔世の感があるが)に管理される人類を予見する作品に映像化したウェルズは、やはり、凡人の二、三歩先を行っていた。主人公ジョゼフ・K(パーキンス)の働く銀行を見よ。「モダン・タイムス」のヴァリエーションとは言え、「未来世紀ブラジル」のオフィスの元ネタは明らかにここにある。無数の机が並び、無言で背を向けてタイプを打つ行員たち。ジョゼフはここの管理職なのだが、ある朝、身に覚えのない罪で“逮捕”を宣言される。しかし、拘束されることはなく、就業時間後開かれる審理に出席。傍聴人すら仕込まれており疑心暗鬼に陥る。叔父マックスが紹介する弁護士ハスラー(ウェルズ)も裏では当局とつながっており、ジョゼフはその付添いの看護婦と刹那的な情事に耽り逃避するが、彼女は“男なら誰とでも”と自ら言うような女で、彼を惑乱させる。そして、いつしか刑事たちに連れ回された荒地で彼の処刑は執行される。原作の悪夢の感覚を見事に視覚化して、例えば、銀行の扉を出て廊下を往くとそこは既に裁判所などという空間の歪曲や、賄賂を要求したので告発した刑事が鞭打たれる場に居合わす場面自体の歪みなど、実に先鋭的。ハスラーに言われ訪ねた、肖像画家ティトレリーの鳥かごのようなアトリエの光の乱舞する幻惑的光景も素晴らしい。全編にアルビノーニの“アダージョ”が荘厳と響き、心の渇きをいや増させる悲痛な作品。J・モローは始めの方、主人公の憧れる二流の踊り子として登場。これも、「フォルスタッフ」の彼女のように出番は少ないが印象深い。

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