月よりの使者_2 (1954) 日本

[1108]この映画がメロドラマの古典になりえたその訳は

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弓子の死は大量の睡眠薬服用によるものだった。
眠れないのでと懇願されて道子が渡していたのだが、
目の前にいる道子と弘田を見て医師・池内は言う、
迂闊に死亡診断書は書けない、自殺以外の可能性もある、と。
そう。この野郎、富士見高原での仇を鎌倉で討とうとする訳よ。

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池内は警察署でも証言する。
彼女の死は変死です。
あの二人は富士見高原療養所の頃から恋仲にあった、と。

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日本の警察は阿保やから池内を疑いもせず、
道子を呼び事情聴取をする。
いや、この場合はドラマを面白くするためにと言うべきかな(^^♪

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道子は広田も署で取り調べを受けていることを知ると、
俄然、自白する。
恋に狂い、私が若奥様を謀殺しました、と。
おい、待て、月よりの死者、君までドラマを盛り上げる必要はない!
なんて焦っちゃうよな、私も(^^♪
あ、新聞の写真の「赤」、
盛り上げようと思って私が加工した訳ではないぞ(笑)。

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と、赤に染まった報道で事件を知ったよう子が、
富士見高原から逗子にすっ飛んできて池内を激しく非難する。
先生、先生は裁判で道子さんと広田さんは関係があったと
証言したそうですね。
そんな事はありません。私がよく知っています。

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先生は道子さんに振られた復讐をしようとしてるんでしょ。
鬼、ケダモノ!そうなんですよ、皆さん。
いいえ、先生。先生は婦長さんと関係したあげく、金を巻き上げ
ポイと捨てたでしょう。
いいえ。婦長さんがね、療養所に帰ってきて告白したんです。
先生はそういう人なんです。皆さん、この池内はそういう男なんです。
卑劣者、鬼、ケダモノ、豚、死ね死ね死ね! と、まあ、
そこまで汚い言葉を使う訳ないよな、おらが若尾さんが(^^♪

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弘田は、弁護士を雇い、道子の無罪を晴らそうとする。
道子は、自分(広田)に嫌疑がかかるのを恐れて嘘の自供をしたのだ
と信じていたからだ。
ちなみのこの弁護士は画家・戸塚の義兄だよ。

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だが道子は自分の意志で殺害したのですの一点張り。
まだ完全に広田に対する疑いが晴れてる訳でないことを
知ったからなんだよね。

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そんな時、死んだ弓子の遺書が
遥か彼方のスイス高原で発見された!

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弓子のたった一人の味方で友人だった弘田の妹・晴子は、
外交官と結婚し、スイスにいた。
その晴子に弓子は遺書を送っていたのだ。

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「あなたの好きだったこのフランス人形を形見としてお送りします。
弓子だと思って可愛がって傍に置いてくださいまし。
この人形が傍に着く頃、私は夫とその方との幸せを祈りながら、
二度と帰らぬ眠りに就いているでしょう」

そう。彼女は、道子の献身的な介護と心に触れてるうちに、
この人こそ夫・弘田の愛する竜胆の花だと気づいたんだよね。
夫が突然、自分を愛し、優しくなってくれたのも
道子のお蔭なんだ、と。
で、命短い自分の命を絶つことで二人の幸せを願った。

しかし凄いだろう。
富士見高原から逗子・鎌倉、そしてスイスへと舞台が
展開されていくんだぜ。乙女心をくすぐるはずだよな(^^♪

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画家にして恋のキューピットと化した戸塚は道子に面会し、
真相を告げる。
「馬鹿だなあ。あんたはほんとに馬鹿だよ」と怒りながら(^^♪

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死んだ弘子の心を知り、道子は言葉を失う。

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戸塚は個展を開いた。
その最終日は道子の出所日で、広田と戸塚は迎えに行くが、
道子はひと足先に出所していた。
二人は個展会場で彼女が現れるのを待ったが、彼女は姿を現さない。
会場を閉めて出ようとしたその時…、

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もうひとりの恋のキューピット役よう子が道子を連れて会場に現れた。
道子はきっと富士見高原療養所に帰るに違いないと、
よう子は上野駅で道子が現れるのをずっと待ってたんだよね(^^♪

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弘田と道子はようやく結ばれ、

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自分たちの出会った、戸塚の描いた富士見高原を見やる。

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一方、二人の邪魔をすまいと階段へ避難したよう子と戸塚は、

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階段フロアにある愛の彫像に
自分たち二人の近い日をウフフと思い描くのであった(^^♪

この歳になって観るとウフフと多少照れ臭くはあるが、
最後の方はちょっとホロリと涙を誘われたりするわな(笑)。

しかし久米正雄、さすがに漱石門下生だけあって上手い。
というより門下生の名を汚さないように頑張ったと言うべきか(^^♪

作品は恋愛ものであると同時に少女ものといった趣。
富士見高原療養所の男性患者と看護婦。
と、当然、社会は遠ざかり、性幻想の世界、愛の世界一辺倒に
包まれる訳だよね。
それはまだ社会へ入る前の少女期、性幻想に包まれる少年期と
同じって事。

言いかえると、純粋心の時期、
あるいは無垢な心に穢れが生じる直前。

なので登場する道子、弓子、よう子、弘田、戸塚、詩人・橋田は、
形は大人に見えるけど、心は少女、少年な訳だよね。
そして道子と弘田は、死んだ弓子や橋田を乗り越えて結ばれる訳だけど、
それは無垢な心が汚れを受け入れ、大人になっていく事を表わし、
一方、弓子と橋田は大人になることを拒否して死んだ事を表わしている。
死を選ばないと、心を病んだ大人になってしまうと言ってもいい訳だけどね。

人間、誰しもそうした時期を通ってきた。
それもまさに体=性を通して。

この映画、一見いかにもといった恋愛物語に見えるかもしれないが、
人間のそうした成長過程を、誰の記憶にも眠っているその過程を
見事に造形してみせている。
なので多くの人たちの心を掴んだし、実際、いまなお古典と呼んで
ちっともおかしくない良い映画になっているわな(^^♪

しかし山本富士子、若尾文子を初め、懐かしい俳優ばっかり。
当たり前だけどさ、こういう美しい俳優たちを観てると
心がホッとするわ(^^♪


[追補]

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1949年版「月よりの使者」のポスター。
荒川じんぺいさんがご丁寧にお送りくださいました(^^♪

また荒川さんのコメントによれば、
富士見高原療養所の「当時の療法では、
大気日光療法(男女ともベランダでふんどし一つでの日光浴)、
食餌療法(栄養補給)、開放療法(真冬でも窓を開けて空気を清浄に)が
三大治療でした」とのこと。
当時、結核がさほどの治療もなく、いかに大きな病だったかが忍ばれる。
荒川さん、ポスターとコメント、ありがとうございました(^^♪

あ、下はちなみに夕べ私が逢ってきた美しい人たち(^^♪

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※「月よりの使者_1」
※「月よりの使者_2」


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■94分  大映 メロドラマ
監督 田中重雄
脚本 八住利雄
原作 久米正雄
製作 永田雅一
撮影 高橋通夫
美術 柴田篤二
音楽 齋藤一郎
録音 長谷川光雄
照明 久保田行一
出演
弘田進 菅原謙二
野々宮道子 山本富士子
戸塚一郎 船越英二
小谷よう子 若尾文子
橋田広 根上淳
池内医師 高松英郎
前島弓子 沢村美智子
弘田晴子(進の妹) 八潮悠子
大下婦長 村田知栄子
浅木院長 信欣三
成田弁護士 花布辰男
岡田院長 見明凡太朗
佐々副院長 丸山修
前島みつ 細川ちか子
取調主任坂田 夏木章
おふさ 響令子
桐生きよ 及川千代
検事 石黒達也

米正雄の同名小説を八住利雄が脚色し田中重雄が監督した。1934年と1949年にそれぞれ映画化されている作品のリメイク版。またテレビドラマ版としても何度かリメイクされている。
長野の療養所で働く野々宮道子は、温かく献身的に看護をすることから「月よりの使者」と呼ばれていた。転地療養中の弘田と橋田は、ともに道子に惹かれていた。道子は弘田からプロポーズされ一緒に療養所を出る約束をするが、橋田の容態が急変したため実現しなかった。一年後、道子は弘田の妻である弓子を看護するため、療養所から派遣される。弘田はかつての婚約者だった弓子と結婚していたのだ。道子は献身的に弓子の看護にあたるが、弓子は弘田と道子との関係に気づいていた。

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