黄色いからす (1957) 日本

[1112]ここに描かれている戦後の家族、夫婦、子供たち、近所の人たちを観てると心底ホッとするわな(^^♪

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「二十四の瞳」「ビルマの竪琴」「長崎の鐘」などを初め、
戦後、日本映画界は戦争の後遺症を描いた傑作を次々と
生みだして行った。
小品とは言えこの「黄色いカラス」もその一つだった。

初めて観たのは
親父が自宅庭でやっていた青空映画館だったか、
学校の講堂での巡回映画だったか。

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その頃私は11、2歳だったのだが、
同じ子供が描いたこの一枚の黄色いカラスの絵は
なぜか鮮烈に胸に刻み込まれた。
ちなみに戯曲を書き始めた20代前半、
「黄色い」という形容のついた題名を付けたのもそのせいだった(^^♪



これもYouTubeで発見。観るのはVHS時代以来だった(^^♪

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マチ子は夫一郎が出兵した後すぐに児を産んだ。
名を清を言い、9歳になった。
夫一郎が抑留生活を終えて復員することになり、
マチ子は清と一緒に港へ迎えに行った。

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夫に再会したマチ子は清に
「お父さんよ。お父さんと言ってごらんなさい」と言ったが、
如何せん初めて見る父なのでお父さんと呼べなかった。

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一郎は「いいんだいいんだ、急には無理だ」と
マチ子と清を慰めた。
吉田マチ子を演じているのは我等が淡島千景(^^♪
一郎は伊藤雄之助。清は設楽幸嗣。
私の胸に淡島千景と伊藤雄之助が刻まれ、
その名を憶えたのも実はこの映画だった。
設楽幸嗣は私と同じ年、同じ月に生まれた同級生(^^♪
俳優業は1969年を最後に辞め、現在は音楽家。

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親子三人の暮らしが始まった。
祭の夜、清は一郎と腕相撲をして勝つと、
「僕、お父さんに勝った」と自然にお父さんという言葉が飛び出し、
マチ子も一郎も喜んだ。
だが少しずつ雲行きはおかしくなった。

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一郎は以前の会社に復職したのだが、
復員後、仕事の仕方がすっかり変わっていて、
時々大きなミスを犯し、閑職に追いやられる事が多くなった。
結果、気持ちが自分の事に追われ、清に構う余裕がなくなった。
左のいじわる課長秋を演じているのはおらが多々良純(^^♪

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復員1年後には長女光子が生まれ、
マチ子も清に構ってあげる時間がなくなった。
清は、両親の愛が光子に移ったかのように思えた。

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そのウップンを晴らすかのように、
小動物や昆虫を捕まえてこっそり押入れで飼うようになるが、
ある日、一郎に見つかり叱られた。

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燐家には仲良しの春子と、母雪子が住んでいた。
雪子は鎌倉彫の博古堂を経営し、
マチ子も一郎が復員してくるまでその鎌倉彫の手内職で
雪子にお世話になっていたのだが、
清は自然とその燐家で過ごす時間が多くなった。
雪子を演じているのは、我らが田中絹代(^^♪

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学校では喧嘩をした。

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うちの子が怪我をさせられた、どうしてくれると、
喧嘩相手の子の婆さんが文句付けに来る事もあった。
お婆さんを演じているのは懐かしき我等が飯田蝶子さん。
相変わらず素敵で観ているだけで堪らん(^^♪

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ある日、担任の芦原先生が
生徒たちを大仏さんの写生へ連れていくと、

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以前は明るい色を好んで使っていたはずの清が
黒と黄色だけの大仏を描いた。

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私の大好きな芦原先生は、
心配して同僚の村上先生に見せ相談した。
村上先生は、戦後こういう色使いをする子が多くなった、
家庭に何か問題を抱えているのではないかと、
この映画のモチーフを分析してみせた(笑)。
美人で心の優しい芦原先生は我等が久我美子(^^♪
子供の頃はこういう久我先生や高峰秀子先生みたいな
先生ばかりで私らは幸せだった。ホントだよ💛
あ、村上は沼田曜一。と、私は男先生には素っ気ない(笑)。

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ある日、ちょっとしたことから光子を泣かせてしまった。
一郎は清が泣かせたものと思い込み、
防空壕跡の小屋へ閉じ込めた。

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燐家の雪子が清の泣き声に気づいて出してやり、
訳を聞くと、「僕は悪くないんだ」と雪子の家へ駆け込んだので、
家で春子と一緒にご飯を食べさせてあげた(^^♪
この頃、子供は村の子という感じで、
私の村もこういう優しい人ばかりだったなあ。
ちなみに春子ちゃんは戦災孤児で、
雪子が養女に貰い受けて育てているのである。

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雪子は気晴らしをさせてあげようと
清と春子を江ノ島水族館と海岸へ連れて行った。
清は遠くで楽しそうに遊んでいる親子連れ家族を
羨ましそうに眺めた。

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帰りに清と春子は子供のカラスを見つけ、
「私たちの動物園」で飼ってあげることにした(^^♪

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一方、芦原先生もその日の午後、
清の描いた黒い大仏の絵を手に清の家を訪ね、
それとなく清が信号を発しているのではないかと伝えた。
マチ子と一郎は少し反省した。

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その夜、一郎は正月に2000円もする凧を買ってあげると
清に約束した。清は喜んだ。マチ子も。

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お~い、みんな見ろ見ろ。
俺の淡島千景さんがこ~んな大口開けて喜んでるぞお~(^^♪(笑)

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二学期の最後の授業の日、芦原先生は突然、
お家の都合で今日を最後に先生を辞める事になったと
子供たちに告げた。
そんな馬鹿な!と私は子供たちと一緒に泣いた(^^♪

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先生はお別れにと、
落胆している清にオルゴール付のクレパスをプレゼントした♪
僕は清が羨ましかった(笑)。

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芦原先生はバスに乗り鎌倉を去った。
もしかしたら先生、お嫁に行くのかなあと私はまた泣いた(^^♪

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大晦日の前日、マチ子は清に子守りを頼み買い物へ出た。
清が光子を乳母車に乗せて外へ出ると、
上級生の悪餓鬼どもにからかわれて喧嘩になり、
赤ん坊の光子が怪我をした。
ちょうどそこへ帰ってきたマチ子は光子を抱えて病院へ飛び込んだ。

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軽い怪我ですんだが、帰宅した一郎は
清を激しく叱り、凧を買ってあげる約束も反故にした。

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清が押入れに飼っているカラスを見つけると、
それも外に放った。

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清は口惜しさの余り眠れなかった。
父が捨てたカラスの事がしきりに思われた。

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翌朝、マチ子が清の部屋を覗くと姿がなかった。
慌てて燐家を訪ねたがそこにもいなかった。

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一郎は清の机に一枚の画用紙を見つけた。
そこには黄色いカラスが描かれ、裏にはこう書かれていた。

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「おとうさんのうそつき 死んじまえ」

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清はその頃ひとり芦原先生に貰ったクレヨン箱を手に
海岸や林を当てもなくほっつき歩いていた。
芦原先生の家へ行こうとバスにも乗ったが、
お金を持っていなかったのでバスを降ろされた。

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一郎はそのうち帰ってくるだろうと嵩を括っていたが、
雨が降り始めると外へ飛び出し、清を探した。
燐家の雪子も近所の人たちと手分けして探したが、
どこにもいない。

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いったん家へ戻ってきた雪子は驚いた。
清が部屋で寝ていたからだ。
すぐに燐家のマチ子に知らせた。

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目を醒ました清に訳を聞こうとすると、「叔母さん、
僕を叔母さんちの子にしてくれよ、春子ちゃんみたいに」
と清が言った。
サチ子は廊下でその言葉を聞き、強いショックを受けた。

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家へ帰り、サチ子は一郎に言った。
私たち今まで何か間違っていたような気がします。
あなたが抑留生活してる間、私も父親のあの子を
一生懸命育ててきました。
あなたがお帰りになってこれでもう大丈夫と思ったのですが、
虫が良すぎたんです。
戦争が落としていった8年間の傷はそんな簡単なものじゃ
なかったんです、と。

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雪子に優しく諭された清は家へ帰り、素直に父に謝った。
一郎は清を抱きしめ、お父さんの方こそ悪かったと頭を下げた。

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お正月、幸せそうな家族の姿があった。

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清は芦原先生に送るのだと、初日の出を描いた。
先生に貰ったクレパスで、明るい色を使い(^^♪

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そうして父に買って貰った凧を空高く上げた。

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「清ちゃん」と春子が母の雪子を連れて飛んできた(^^♪

物語的には若干「?」の感じもある。
父一郎はけしてそんなに悪い父とは思えないからだ。
これで子供が「黄色」信号を発するとなると大変だあという感じ?(笑)
まあ、子供たちにも観せたいと思ってちょっと緩くしたんだろね。

私は事件を中心に
70年代後半から現在に至る日本の家族像を追いかけてきた訳だが、
昔のこうした家族、近隣の親たちを観ると
ほんと心底ホッとするよねえ(^^♪

70年代後半から地域が壊れ、家族は孤立し、
子育てを初めとする家族生活が大変になり、
そうしてやがて家族そのものが壊れていった。
結果、「ボーダー」に住まう膨大な子供たち、大人たちが生まれ、
現在のように日本の裾野を形成するようになった訳だよね。

少し言いかえると、
こ昔の家族はこの映画のように子供第一だった訳だけど、
やがて夫婦が第一になり子供は二の次に、
更に進んで自分=個が第一になり、
夫婦は二の次、子供は三の次になって行った。
結果、個は、私たちはみな孤立状態に分断されてしまった。

個でいたくれた方が消費社会にとっては好都合なので
社会の側が分断したとも言える訳だけどね。

「長崎の鐘」もそうだが、
この「黄色いからす」も今だから観てほしいよね。
歴史を、過去を振り返ることでしか未来は見えないし、
また構築することもできないと私は思うよ。

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しかしなあ、昨日芝居観に行ったんだけど、
こういう映画、素晴らしき俳優たちを観ると
なんで今更、今の芝居を観に行かなきゃなんないのよと
ほんと死にたくなるよね、私は(笑)。


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■103分 松竹 ドラマ
監督 五所平之助
脚本 館岡謙之助 、 長谷部慶次
台詞協力 由起しげ子
製作 加賀二郎 、 内山義重
撮影 宮島義勇
美術 久保一雄
音楽 芥川也寸志
キャスト
吉田マチ子 淡島千景
夫一郎 伊藤雄之助
息子清 設楽幸嗣
松本雪子 田中絹代
養女春子 安村まさ子
芦原靖子 久我美子
秋月課長 多々良純
鈴木 高原駿雄
東六の祖母 飯田蝶子
岡本 中村是好
村上先生 沼田曜一

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