蛇の卵_2 (1977) ドイツ

[1115]ナチ・ヒットラー誕生の背景をドイツ表現主義を駆使して描いた大傑作

画像



画像

アランはハンスのお蔭で仕事にありつく。
病院の資料の整理だ。

画像

マヌエラは医療着などのクリーニング。

画像

部屋へ戻るとまたアベルにモーターの音が聞こえる。
彼の頭が割れる、彼はイラつく。
これは罠だ、自分たちは監視されている、と。
マヌエラが突然キレて怒鳴る。
ここが嫌なら出てって、私にはもうどうしていいかわからない、と。
彼女の「病気」が続いているせいもあるんだろうけど、
二人が時代の空気のトゲを、「毒気」を
知らぬ間に吸いこんでるせいである事は間違いない。

画像

アベルは部屋を出て行く。

画像

マヌエラは絶望する。
どうしてこうなるのかわからないからだ。
このあたり、ウルマンとキャラダインの
表情(演技)を観てるだけで全身が痺れてくるよねえ(^^♪
俳優が物語を生きるってこういう事かという見本。
いまの日本の俳優は死んでも出来ない。

画像

アベルは通りで馬を殺して肉を切り裂いている家族に出会う。

画像

女がこの肉を買わないかと彼に差しだす(^^♪

画像

一転、キャバレーで阿呆楽士どもが狂騒している。

画像

しかもそのキャバレーはいま殺された馬の血管の中(^^♪
楽士どもの演奏に合わせて狂騒する阿呆客たちに混じり、
アベルも酒に酔う。酔うしかない。
これが当時のドイツのキャバレーならば、
自分の馬を殺して路上で内臓を切り裂いて売るのも
キャバレーという訳だ(^^♪

画像

そして街の通りには、反ユダン主義を標榜することで
選民ドイツへと立ちあがる「蛇の卵」どもが…。

いやはや、ドイツ表現主義も凄いが、
それをこうも徹底して暗~く描き切る我がベルイマンもほんと凄い(^^♪
まったく、恐れ入谷の鬼子母神、びっくり下谷の広徳寺だよなあ(笑)。

画像

酔って通りへ出たアベルは偶然、
ローゼンバーグ雑貨店という店に遭遇。

画像

と、アベル・ローゼンベルグは自己破壊の衝動に襲われて、
大石を投げつけて店の窓ガラスを破壊する。
うん、怒っていいよ、じいちゃんばあちゃん。
殺しちゃってもいいんだよ、こんなやつ、と私(爆)。

画像

見てよ、このセット。素晴らしいよねえ。
頼む、このセットちょうだ~い!(^^♪

画像

通りに立っている女が言う、「うちに来ない?暖かいわよ」
アベルが返す、「地獄に落ちろ」
女が言う、「ここが地獄なのよ」
私は女の耳元に囁く、
「このセット俺の家に一緒に運んでくれたら行くぜ、どこでも」(^^♪

画像

女の家へ行くと、そこにも地獄の花が咲いていた。
アベルは男母親と寝る。

画像

11月7日、水曜、朝。
アベルはマヌエラと住む病院の部屋へ戻った。

画像

と、マヌエラが口から血を流し死んでいた。
アベルは茫然となる。

画像

瞬間、鏡の向こうでフラッシュが焚かれ、人影が見える。
椅子で鏡を叩き割るとカメラがあった。

画像

監視されているというアベルの予感は当たった。
部屋にある鏡の向こうにはすべてカメラが仕込まれていた。
恐るべきことにキャラダインも、
撮影前そのことを知らなかったそうだ(^^♪

画像

鏡の裏の通路は異様な建物に通じていた。

画像

エレベーターに乗ると不意に背後から男が襲ってくる。
格闘になりアベルは男を殺害する。
そして翌日、バウアー警視に会い、
それから病院の資料室の仕事へと出かける。

画像

アベルは資料室係の男から鍵束をぶん取ると、
片っ端からその鍵で開く部屋を調べ始める。
実は以前、この男からこの病院では人体実験が行われている
らしい事を秘密裏に聞かされた事があるからなんだよね。
このあたり、ちょっとホラー・サスペンス調(^^♪

キャラダインの副音声解説によると、
どんなシーンかわからないまま撮られた事もあるらしいので
ベルイマンの撮影自体がホラー・サスペンス調だよね(^^♪
怖いよ~ベルイマン(笑)。

画像

広大な資料室の一角に映写設備のある部屋を発見した。

画像

と、不意に隣室からハンスが現れる。

画像

ハンスは面白いものを見せようと言い、
彼らが病院で行ってきた人体実験のフィルムを次々と
アベルに見せ始める。

画像

30歳の女と脳障害で泣き続ける乳幼児を密室に閉じ込めた実験。
初め女は赤ん坊に同情するが、24時間後には
うつ病状態に陥り、終いには悲鳴を上げて子を殺害。

画像

これは精神を錯乱させるというタナトキシンを注射された男。
薬が効いてくると暴れ出し、ついには自殺する。
ハンスが言う。
君の兄は私の助手をしていてこの薬に興味を持った、
私は止めたのだが自ら人体実験を志願した、
彼の婚約者も協力した、
二人は君とマヌエラがいたあの被験者用の部屋に滞在していた、と。

画像

これは感情のバランスを破壊するカプタ・ブルーという薬を
夫婦に少量与えた実験。
アベルは、激しい感情の起伏に振り回されるこの夫婦に、
自分とマヌエラの姿を見ている気がしてきて愕然となる。

画像

フィルムを映し出す映写機。
フイルムが横に流れているんだけど、
1923年当時の映写機を再現しているのかなあ。
キャラダインによると、ベルイマンは
この記録フイルムを1ケ月かけて創ってたんだって(^^♪

ハンスの話でアベルの周辺で起きていた変死事件が
ハンス博士らの生体実験の結果だとわかる。

画像

ハンスはこの映画の冒頭に流されていたフイルムを流しながら、
アベルに言う。
「この無気力な群衆に革命はできない。
だが10歳、15歳の子供は10年後、20歳、25歳になる。
親の憎悪を受け継ぎ、理想と怒りを持つ。
代弁者として出てきた者が輝かしい未来を約束し、
代わりに犠牲を求める。血気盛んな若者が彼に賛同する。
革命が起こり世界は血と炎に包まれる。遅くとも10年以内に」

画像

「人間性善説に立ったまやかしの社会ではなく、
人間の欠点を認めた上での新たな社会が生まれる。
欠点をコントロールして長所だけを持つ人間を作り出すために
私はこの実験をした」と。

画像

「未来のために必要な研究だ。
やがて警察が踏み込んで来るだろう。その前に私は死ぬ。
政府は資料を押収・封印するだろうが、
学会の要求でやがて封印は解かれ、実験は再開されるだろう。
時代に先んじた者は犠牲となる。私もだ。
数日中に南ドイツでヒットラー指導の過激派が
一揆を起こすが失敗するだろう」

バウアー警視が警官を引き連れて現れ、
鍵の掛かった部屋のドアを激しく叩く。

画像

「この未来は少し考えれば誰にもわかる。
蛇の卵のように膜を通して蛇の姿は丸見えだ」

画像

ハンスは警官らが激しくドアを叩く音を聞きながら
青酸のカプセルを飲み、
そうして鏡で自分の死ぬ様子を観察しながら息絶える。

ようやくこの作品の全貌が見えてくる。
ベルイマンは、ナチ・ドイツが誕生した背景を
1923年当時のドイツを描く事で描こうとした訳だ。

画像

キャラダインによると、
このシーンでハンスは政治的な長い演説をぶったらしい。
その演説はベルイマンの政治的な主張を盛り込んだ
激しいものだったらしいのだが、製作者のディノ・デ・ラウレンティスが、
これは拙いぜ、カットしろと命令、カットされたらしい(^^♪
勿体ない。せめてDVDに資料として紹介して欲しかったなあ。
知ると俄然観たくなるもんだよな(笑)。

画像

アベルは病院に収容され丸々2日ほど眠り、目覚めた。

画像

現れたバウアー警視がアベルに言う。
ヒットラーの蜂起は失敗した。
ドイツ民主主義を甘く見ていたんだ。
費用を政府が負担するからスイスへ行き、
サーカス団に合流するがいい、と。

画像

アベルはそうると言い、夜、警官と駅へ向かうのだが、
途中で逃げだし、その後の消息はわからない…。

この映画の最大の特徴は、
良くある人間ドラマを描いている訳ではない事だ。
人間対人間の葛藤、和解などを描いている訳ではなく、
ある状況に置かれた人間の様態を描いているのだ。
ちょうどハンス博士がこうした薬を使用した場合、
人間はどういう反応を起こすかと生体実験を試みたのと同じように。

この場合、薬とは大恐慌に見舞われ、
反ユダヤ主義が横行しはじめた極度に不安な社会状況という事になる。
そうした状況に置かれた時、人間は自己の物語作りどころではなくなり、
そうした状況に絶えず向き合い、不安、恐怖に晒された状態に陥る。
一種、自己を喪失した状態に陥り、酒に溺れたり、
ドイツ表現主義的な表現を行う事でその不安や恐怖から逃亡したり、
あるいはそれと闘おうとしたりするようになる。
そうした人間の、いわば「状況劇」を描いているのである。
人間の実存が外部に晒された状態を描いている
と言っても同じ事だろうが。

なので人間間のドラマに慣れた観客からすると、
多いに「面白くない」「退屈だ」という事になりがちな訳だよね(^^♪
ヨーロッパでは大ヒットしたが、
アメリカと日本ではコケたと言うのもたぶんそのせい(笑)。

日本でこうした表現が出現したのは戦後文学の一時期くらい。
学生時代、戦後文学を専攻してたので私には
めちゃ面白いし、大好きという事になるんだけどね(^^♪
評価も「SHAME 恥」(1966) 同様、めちゃ高い。

人間が社会や国家を意識しなければならない時代はもの凄く不幸。
日本はいまそうなってる訳だけどさ(笑)。
その不幸と、そこからの脱出としてナチ・ヒットラーが誕生した事を
これほど見事に描いてみせた作品はなかなかないし、
ドイツ表現主義を見事に取り込んでみせてるもんなあ。
もしかしたらフリッツ・ラングへのオマージュという気持ちも
あったのかもよ(^^♪

デヴィッド・キャラダイン、リヴ・ウルマン、ゲルト・フレーベ 、
ハインツ・ベネントら俳優陣にも大拍手!

いつも「特典メニュー」など観る事ないんだけど、
これはお気に入りなので全部観た。
お蔭でUPするのに3日もかかっちゃったよ(^^♪

あ、我がキャラダイン、
この映画のロケが終了した翌日、パリで結婚式を挙げ、
早々にアメリカへ帰ってハネムーンを満喫したらしいよ。
「アメリカ的なものに囲まれて心の底からホッとしたよ。
ホットドッグとかね。明るい日差しも」だってさ(笑)。

ウルマンのインタビューもあるよ。
後年、ベルイマンと二人でこの映画を観て、
「なかなか良いじゃないか」って喜んでたらしいよ、
オラがベルイマンも。良かった良かった、嬉しいなあ(^^♪

勇気ある人には超おすすめだよ。


※「蛇の卵_1」
※「蛇の卵_2」


画像



■119分 アメリカ/西ドイツ ドラマ/サスペンス
監督: イングマール・ベルイマン
製作: ディノ・デ・ラウレンティス
製作総指揮: ホルスト・ヴェントラント
脚本: イングマール・ベルイマン
撮影: スヴェン・ニクヴィスト
音楽: ロルフ・ヴィルヘルム
出演
デヴィッド・キャラダイン
リヴ・ウルマン
ゲルト・フレーベ
ハインツ・ベネント
ジェームズ・ホイットモア

一次大戦でドイツ敗戦後のベルリンで共にサーカスの団員だった兄が自殺してしまい失望したアベル(デヴィッド・キャラダイン)が兄の妻だったマヌエラ(リヴ・ウルマン)と同居を始める。所が彼の周辺で7人もの殺害事件が起き、疑われた彼が逮捕されるが、バウアー刑事(ゲルト・フレーベ)が尋問の上、釈放する。その時、協力してくれと言われるが彼には、その意味が解らなかった。やがてマヌエラのアパートを出た二人は知り合いのハンス(ハインツ・ベネント)の世話で病院の一室を借りることになったが、ある日アベルが部屋に戻るとマヌエラがベッドで動かなくなっていた…。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 蛇の卵_1 (1977) ドイツ

    Excerpt: [1115]ナチ・ヒットラー誕生の背景をドイツ表現主義を駆使して描いた大傑作 Weblog: こんな日は映画を観よう racked: 2015-07-15 03:51
  • 蛇の卵_2 (1977) ドイツ

    Excerpt: [1115]ナチ・ヒットラー誕生の背景をドイツ表現主義を駆使して描いた大傑作 Weblog: こんな日は映画を観よう racked: 2015-07-15 03:52