蛇の卵_1 (1977) ドイツ

[1115]ナチ・ヒットラー誕生の背景をドイツ表現主義を駆使して描いた大傑作

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イングマール・ベルイマンが
脱税を疑われて本国スウェーデンに嫌気が差し、
ドイツで、アメリカ資本で撮った1977年の作品。

作品の資料をとあるサイトを覗いたら
そんな事が書いてあった。え~!とオラはぶっ魂消た。

作品は以前に観ていたのだが、脱税容疑で海外逃亡だと?
神の沈黙を良い事にベルイマンもやるのう。
そう言えば確か5回も結婚しちょるし、
この映画に出てるリヴ・ウルマンは愛人じゃという話じゃし、
オラがベルイマンのイメージがちと変わったなあ。
うん、きゃつもただのスケベな男じゃったわい(^^♪

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物語はベルイマンらしく神聖な映画に対する冒涜から始まる。
本編で主人公を演じているデヴィッド・キャラダインが、
いきなりこの作品にたいする正しい見方を伝授するのだ(^^♪

--僕はデヴィッド・キャラダイン。
「蛇の卵」で主人公を演じた。アベル役だ。
1922年のベルリンにいるが当時のドイツは最悪だった。
食糧がない。天文学的なインフレで、
パン1つ買うのに荷車一杯の紙幣がいる。
監督も変人、映画も変わってる。
繰り返して見るのはつらい映画だよ。
巨匠ベルインマンの映画に参加できることは名誉だ。

ギョエ~、何じゃこれ~!と驚くよなあ。

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と言ってもこれ実は副音声での話(笑)。
ベルイマンにしては珍しく大掛りな映画だし、
副音声で色々と喋ってるキャラダインの話も面白かったので、
主音声で観たあと副音声で通して観たのだった(^^♪

ちなみにドイツが当時天文学的なインフレに陥ったのは、
敗戦後、ベルサイユ体制の中で
多額な賠償金を要求されたからだと言われている。

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1923年11月3日、土曜日の夜、
アベル・ローゼンベルグ(デイビット・キャラダイン)が
宿泊中の安宿に戻ると、広間で結婚パーティーが行われていた。
アベルは兄マックス・嫂マヌエラと一緒にサーカスで
空中ブランコに乗っていたのだが、マックスが手首を負傷、
三人ともブランコを辞めてベルリンで暮らしているのである。
マックスはすでにマヌエラとは離婚。

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アベルが女主人に渡された2人分の食事トレーを手に
2階の部屋へ行くと、兄マックスが銃で自殺をしていた。

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翌日、彼は警察で事情聴取されるのだが、
バウアー警視(ゲルト・フレーベ)に
「ユダヤ人か」と尋ねられて嫌な気分になる。
不況のドイツ社会にすでに反ユダヤ主義が浸透しつつあったからだ。

でも「ゲルトはとても明るくて共演しやすい人だった。話も愉快でね」
と言ってるよ、キャラダインは副音声で(^^♪

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アベルは、2年前に別れた
兄の元妻マヌエラ(リヴ・ウルマン)に会いにいく。

この映画は実はロケではなく、
ほとんどがミュンヘンの撮影所内に作られたセット撮影。
アメリカ人が好きなだけ金使えと言ってくれたらしくてさ、
ベルイマンたらもうすっかり舞い上がっちゃって、
巨大セット作りに夢中になったらしいよ、子供みたく。
うん、そんな事もちゃんと喋ってるよ、キャラダインたら(^^♪

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なんで副音声まで紹介してるのか? ベルイマンが
「蛇の卵」で来るならこっちも蛇の卵で行こうと思ってさ。

蛇の卵は透けて中に幼蛇が見える。中が全部見える。
と同じように物語も、そして映画作りの裏もすべて
透けて見えるようにしたい訳よ、オラも(^^♪

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マヌエラはキャバレーで踊っていた。

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アベルはマヌエラに兄が自殺した事を告げ、
兄が遺した金と手紙の入った封筒を渡す。
兄は最近実入りの良い仕事を始めたらしいが、
兄と喧嘩したのでアベルも詳しい事は何も知らなかった。
手紙は乱筆でほとんど読めず、
「毒が盛られつつある」という文字だけが読めた。

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この夜、アベルは舞台袖で偶然ある男に出会う。
26年前、たまたま別荘が隣同士だったドイツ人のハンスだ。
彼はハンスが嫌いだった。憎んでいた。
捕まえた猫を生きたまま解剖して喜んでいるような
少年だったからだ。

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不快になり、キャバレーにいた女を買い外へ出る。
と、反ユダヤ主義に凝り固まった青年たちがユダヤ人たちに
道路を磨かせていた。
ユダヤ人たちが通りかかった警官に訴えても、警官は知らんぷり。
青年たちが近づいてくるとアベルは怖くなって逃げだし、
店でしたたかに飲み、酔った。

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その夜はマヌエラのアパートに泊り、
キャバレーでハンスに出会った事を告げる。

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翌朝、マヌエラは仕事だと出かける。
アベルも安宿へ帰るとバウアー警視が待ち構えていて、
事件の捜査に協力してくれと署に連行し、
アベルに事件性のある死体を何体か見せた。

このお猿さん、本物だよ。めちゃ可愛いよ。
最高に暗~いこの映画の中で唯一の救いだよ(^^♪

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すべてアベルに近しい人物たちで、
中には兄の婚約女性の死体もあった。
アベルがなぜ協力を要請するのかと聞くと、バウアー警視は言う。
政府は今の事態に対して無為無策で、
ヒットラーという男が蜂起を企てている。
だが私には何もできない。できる事と言えば職務を遂行し、
少しでも秩序を保つ事だけだ、と。

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アベルはユダヤ人の自分を犯人に仕立てるつもりだと
咄嗟に逃げようとするのだが、逃げられず
逮捕され留置場に放り込まれる。
どう、オラがキャラダインの表情いいだろう(^^♪
一貫してこの無表情な顔で押し通してるんだよね。

副音声では自分の演技観を色々と喋ってるので
俳優志望の若い人は是非聞くと良いと思う。
私が演出する時とほとんど同じ事を喋ってるよ(^^♪

舞台俳優の演技は大袈裟だなんて言ってる所をみると、
アメリカの舞台俳優も大した事ないみたい。
そう言えばアメリカで教えていた演出家のアニシモフさんも
そんな事言ってたなあ(笑)。

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翌日、驚いたマヌエラが面会に現れると、
バウアー警視は意外にもあっさりとアベルを釈放する。
警視は実は、ユダヤ人のアベルが疑われるだろうと心配し、
先に彼の容疑を晴らしておこうとしたのだ。
ゲルト・フレーベさん、映画の中でもいい人だった訳(^^♪

釈放された後、アベルはマヌエラの部屋で暮らし始める。

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舞台は一転してキャバレーでのショー(^^♪
みんな大喜びしてるねえ。どんなショーをやってるんだろうなあ。

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と思えば、はい、これ!(喜) オラが一番好きなシーン。
男と女がベッドで性的な戯れを演じているんだけど、
実は女を演じているのは男で、男を演じているのは女。
そしてその戯れを介助してる天使は小人の男はん(^^♪

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つまり性は性でも「倒錯」の性。
由緒正しく言えば、当時ドイツを風靡した表現主義的ショー。

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日本で言えば、出雲の巫女・阿国がカブキモノ=侍を演じ、
狂言の男優が遊女を演じたという
あの「カブキ踊り」(歌舞伎の始まり)ってことになる。
そう。歌舞伎はドイツ表現主義なんだよね。
あ、反対だべ。ドイツ表現主義が歌舞伎を剽窃した訳。

え、ほんとか?私は知らん。自分で研究しなさい(笑)。

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次にコメディアンが登場して歌う。
本物のコメディアンらしいんだけど、すぐに連想するのは
浅草オペラで活躍したコメディアンたちだよね(^^♪

浅草オペラは
第一次世界大戦後の好況を背景に生まれたと言われていて、
ドイツ表現主義が生まれた背景とは異にしているが、
素人感想ながら浅草オペラの手法はドイツ表現主義を
模倣する所から始まったのではないかと私は疑ってる。

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このキャバレー・ショーのシーンについてキャラダインは、
「僕は本物らしさが大切だと常に思ってる。
夢を描くにしても本物らしさが欲しい。
でもこのキャバレーの世界はあまりにもシュールで
現実感が全くない」と言っている。

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キャラダインの読みは残念ながらここでは外れてる。
このシーンで初めてこの映画の意図がはっきりしてくるんだよね。
「現実感が全くない」キャバレー・ショーを盛り込む事で
ベルイマンは、こうしたショーの、あるいはドイツ表現主義の向こうに
ドイツ人たちの現実(現在)に対する極度な不安が
隠されていた事を描こうとしてるんだよね。

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キャラダインはそれが読めなかった訳だけど、
でも読めないことで彼が演じるアベルが
ユダヤ系アメリカ人である事がここで見事に表現されてくる。
と、まあ、そういう仕掛けになってるんだよねえ。
アチャ~、さすがオラがベルイマンと私は感動したのだった(^^♪

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アベルは、現実感を欠いたノー天気なショーを喜んでる
ノー天気なドイツ人たちに頭を抱えて、マヌエラの楽屋を覗く。
と、そこにはあのハンスがいた。
マヌエルに会いに来た、兄上は気の毒だった
と言うハンスに切れて、アベルは一瞬胸倉を掴むのだったが。

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部屋に帰った後アベルがマヌエルに聞く、ハンスと寝たのかと。
ハンスは寝たわ、寂しそうで情が移ったのよと。

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11月6日、火曜日、早朝。
「雨に濡れた敷石から恐怖が立ち昇っている。
空気にトゲがある。
誰もが知らぬ間に毒気を吸い込んでいた」

金がありゃこういうセット私だって作ってみたいがに(^^♪
言葉は映像(世界)を限定してしまうので私だったら
こういうナレーションは止める。
と、結構強気になったりして、わが師に(笑)。

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マヌエルは例によって教会とやらの仕事へ出かけた。
アベルは彼女の仕事が何か知りたくて後をつける。

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仕事というのは嘘で、
彼女は教会のミサに通っていたのだった。
マックスが死んだのは自分のせいではないか、
いつもイライラしている義弟アベルを助けたいのだが、
本心を明かさないのでどうすれば良いのかわからない、
と彼女はこの日牧師に相談した。

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牧師は言う。
私たちは神から遠く離れている。
救いを求めても祈りは届かない。
人間同士助け合うしかない。
許し合おう、遠い神の代わりに。
私が言おう、ご主人は自ら死んだ、君に罪はない、と。

この作品の中で一番感動的なセリフだよ、間違いなく(^^♪

キリスト教と仏教は結構通じ合う所が多い。
仏教的に言えば「何もするな」という教え、
ガンジー的に言えば「無抵抗主義」に通じている。
こんな時代にそんな呑気な事を思うかも知れないが、
私は結構ラディカルな抵抗だと思ってる(^^♪

キャラダインは、
このセリフにベルイマンの絶望を見てるけどね。

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あ、キャラダインがベルイマンに
魂の救済が心配ではないかと聞いたら、ベルイマン、
「私は男娼だ」とトンチンカンな返事をして来たんだって(^^♪
こんなお洒落な冗談を言える男が
なんでいつもこんなに暗い映画ばっかり撮るんだろう
と不思議だよなあ(笑)。

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教会を出るとマヌエルは裏通りを歩き、
聖アンナ病院へと入って行った。
彼女はしばしば自分は病気のようだと言ってるんだけど、
何か関係あるのか。


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マヌエラが入ったのは病室ではなく、部屋だった。
アベルが姿を見せると半分は予期していたのか、
彼女は昨日、ハンスに部屋を貸してと相談したのだと言った。
アベルは彼の施しは受けたくないと一旦部屋を出るが、
彼女と離れられないのかすぐに戻ってきて
そこで一緒に暮らし始める。

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夜、彼はまたマヌエラの踊るキャバレーへ行った。

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突然、反ユダヤ主義の連中が乱入して来て、
この低俗な娯楽はユダヤ人どもの陰謀だ、
このままではドイツはやつらに生きたまま食われ滅亡する
とアジり、経営者のユダヤ男の鼻をへし折り、店を叩き壊し、
火を放つ。

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夜、アベルは部屋の中でカタカタと回るモーターの音を聞く。
マヌエラには聞こえないのか。
酒のチカラでしか眠れないアベルを彼女は抱きしめる。

キャラダインが副音声で語る、
この作品に出演した理由の一つはリヴ・ウルマンと共演し、
彼女の演技の秘密を盗みたかったからだ、と。
ハンスを演じるハインツ・ベネントをも絶賛、
彼と比べると俺はまだ子供だなんて言ってる。
凄いよねえ、自分を低くして演技を貪欲に学ぼうとするキャラダイン。
俳優の鑑。だからこういう素晴らしい演技ができるのだあ~(^^♪


※「蛇の卵_1」
※「蛇の卵_2」


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■119分 アメリカ/西ドイツ ドラマ/サスペンス
監督: イングマール・ベルイマン
製作: ディノ・デ・ラウレンティス
製作総指揮: ホルスト・ヴェントラント
脚本: イングマール・ベルイマン
撮影: スヴェン・ニクヴィスト
音楽: ロルフ・ヴィルヘルム
出演
デヴィッド・キャラダイン
リヴ・ウルマン
ゲルト・フレーベ
ハインツ・ベネント
ジェームズ・ホイットモア

一次大戦でドイツ敗戦後のベルリンで共にサーカスの団員だった兄が自殺してしまい失望したアベル(デヴィッド・キャラダイン)が兄の妻だったマヌエラ(リヴ・ウルマン)と同居を始める。所が彼の周辺で7人もの殺害事件が起き、疑われた彼が逮捕されるが、バウアー刑事(ゲルト・フレーベ)が尋問の上、釈放する。その時、協力してくれと言われるが彼には、その意味が解らなかった。やがてマヌエラのアパートを出た二人は知り合いのハンス(ハインツ・ベネント)の世話で病院の一室を借りることになったが、ある日アベルが部屋に戻るとマヌエラがベッドで動かなくなっていた…。

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