約束_2 (1972) 日本

[1169]ここには高度成長期に「裏日本」で起きていた事が描かれている

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翌日、女は年下男と約束した海辺の休憩所へ、
約束した時間に行った。
男はまだ来ていなかった。
女は部屋には上がらず、玄関先で男を待った。
男はなかなか現れない。

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裏口に酒屋が注文取りに現れた。
酒屋はおかみを見ると洒落口を叩いた。
「奥さん、きょうはグッと色っぽくて。
何か良い事あったんでしょう、イヒヒ」

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旦那にね、あんまりハッスルすると血圧が上がるって。
ウヒ、ウハハハハ」
阿呆な男はいいねえ(^^♪

女はおかみに部屋を借りたいと言い二階へ上がった。
おかみは「一人でですか」と少し怪訝な顔をした。

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部屋へ上がると手鏡を前に一人化粧直しを始めた、
調子の良いあの年下男のために。
もちろん女が化粧直しを始めたのは、
酒屋とおかみの洒落た無駄口を耳にしたからだ。
つましやかながらも幸福のある場所に気付いたからだ。

このあたり、語らずしてこの女の心を語る台本、演出が
本当に見事だよねえ(^^♪

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時間は過ぎた。
女は三時の汽車に乗るため休憩所を出た。
部屋に女のいた匂い香が残された。

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その頃、年下男は女と約束した場所へ走っていた。
追ってくる男たちから必死に逃れていたのだ。

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男が約束の休憩所へ飛び込むと、
おかみは「お帰りになりましたよ。時間がないからこれをって」
と、女に預かった腕時計を男に渡した。
男は慌てて駅へ向かった。

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女が連れの女といるのが見えた。
男が声をかける間もなく二人は改札へ向かう。

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男は追いかけ、女を掴んで言った。
「ごめんよ。さあ、戻ろう。
後の汽車にすればいいじゃないか」と。
女は首を横に振った。

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男は連れの女(南美江)に睨まれた。
年上女は連れの女とホームへ向かった。

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年下男は改札口を走り抜けて女を捕まえ、頼んだ。
「俺、ムダにした三時間を取り戻したいんだ。
いい加減な気持ちでこんな事言ってんじゃねえんだ。
俺、真剣なんだよ。頼むよ。な、戻ろうよ」
その声にはすでに涙が滲んでいた。

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女は足を止め、堪えながら言った。
「あなたにだけは隠しておきたかった。
私、囚人なの。模範囚なの。だから
刑務所から特別な許可を貰って母の墓参りに来たの。
明日の朝の八時までに刑務所に戻らなければならないの。
ごめんなさいね」と。

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男は茫然とした。「この女が」と信じられなかったからだ。
女は言い残してホームの階段を上った。

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ホームのベルが鳴った。
年下男は階段を駆け上がり、ホームを走り、
汽車に飛び乗った。

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年下男はデッキにいる女を捕まえて告白した。
「実はな、俺も刑務所と似たような所にいた事があるんだ」

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車内に入ると男は女の隣に座った。
連れの女看視官に
「行きも帰りも一緒だなんて偶然ですね」と言い。
だがウヒヒと笑う姿はもう何処にもなかった。

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男と女の膝に掛けられたコートの下で、
少年院出身の年下男は女の手をきつく握りしめていた。

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女に小さな「蛍」の灯が見えた。

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夜行列車は刑務所のある町へと向かっていた。

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女は男のワイシャツが血で汚れている事に気づいた。
そのワイシャツを隠しながら女は、自分が
暴力を振い続ける夫を殺害した五年前の事を思いだした。

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隣席に座る若い女が手にした携帯ラジオがニュースを伝えた。
瀕死の重傷を負った男が警官に発見された。
男は昨夜、信用金庫の現金を強奪した暴力団員の一人で、
仲間割れでメンバーの一人に刺された者とみ、
警察は刺した犯人を追っているというニュースだった。

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男は女と一緒にデッキへ出て言った。
「逃げようか」と。
女が答えないでいると男は続けた。
「冗談だよ。あんたには出来っこないよな。優等生だから」と。
女が言葉を返した。
「今まで逃げるなんて考えた事もないわ。でも…」
「あんたって人は刑務所に入った事が間違いだったよ。
間違いを二度繰り返す事はねえよ」
男はそう言い、女と一緒に席へ戻った。

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夜行列車が突然止まった。
車内アナウンスが流れた、
この先が土砂崩れの為しばらく停車をすると。
女看視官は慌てた。女を朝八時までに
刑務所へ連れて帰らなければならないからだ。
彼女は車掌に状況を確認する為に席を立った。

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男は窓のフックにかかったコートを外して女に渡し、
「行こう」と女の手を引いた。

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汽車から離れると男は女を強く抱きしめ、口づけをした。

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女監視員が車内に戻ると二人の姿が消えていた。
監視員は男が女を連れて逃亡したと直感し、
車掌の元へ走った。

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年下男は言った。懸命に涙を噛みながら。
「一緒に逃げよう。今なら大丈夫だよ」
「本気?」
「当たり前だ。誰も知らねえ町へ行ってよ、二人だけで暮らそう。
俺、結婚なんてんじゃなくていいんだよ。
あんたの弟でも何でもいいんだよ。
俺、一生懸命働くからよ」

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女は込み上げる喜びを噛みしめ、一言、伝えた。
「ありがとう」

そうしてひとり列車へ戻った。

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男はもう何も言わず女の後を追った。

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車内へ戻った女監視員は目を疑った。

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座席に変わらぬ女と男の姿があったからだ。

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鉄道は復旧し、
汽車は再び名古屋へ向かい走り始めた。

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途中の停車駅で二人の男が車内に乗り込んできた。
一人は我が愛する三國連太郎だった(^^♪
二人は仲間割れして暴力団員に瀕死の重傷を負わせた
犯人を追う刑事だった。
展開の巧みさに当然私は狂喜した(^^♪

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男は偶然車内に知人の小母さんを見つけ、
山村ですと名乗った。
小母さんは「まあ、孝ちゃん」と驚いた(^^♪
二人はかつて満州で暮らしていた時の知り合いだった。
小母さんが「あんた、いま何してるの」と聞くと、
山村は「ん?保険のセールスマン」と言った。
私はすかさず「お前が保険屋だったら潰れるだろう、
みんな怖がってお前ん所の保険入らねえだろう」と言った。
「おい、うるさいぞ、そこの」と私は三国さんに怒られた(笑)。

山村は「小母さん、元気でね」と言い、
前の車両へと捜索の足を運んだ。

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急行は終着駅・名古屋のホームへ入った。


※「約束_1」
※「約束_2」
※「約束_3」


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■87分 松竹 ドラマ
監督 斎藤耕一
製作 斎藤節子 樋口清
原案 金志軒 斎藤耕一
脚本 石森史郎
撮影 坂本典隆
音楽 宮川泰
美術 芳野尹孝
出演
松宮螢子 岸惠子
中原朗 萩原健一
島本房江 南美江
村井の女 姫ゆり子
村井晋吉 殿山泰司
護送犯 中山仁
老刑事 土田桂
若い刑事 大久保敏男
山室刑事 三國連太郎

仮出所の女囚と逃亡中の強盗犯の決して成就することのない哀しい愛の結末を描く。監督は「津軽じょんがら節」の斎藤耕一。主演は岸恵子と萩原健一。悲劇を宿命づけられた二人だからこそ、束の間の心の交歓がなんとも愛おしく切ない。日本海を北上する列車の中。若い男は前の座席に座る年上の女性にしつこく迫る。やがて、男の真剣さに心を開いた女は静かに身の上を語り始める。自分が受刑囚で、母の墓参に仮出所させてもらい、明朝8時までに刑務所へ戻らなければならない身であると…。

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