鳴門秘帖 (1957) 日本

[1175]まるで邪心のないこんな美しい映画は女形・衣笠貞之助にしか撮れない

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吉川英治が大阪毎日新聞」に連載した伝奇小説を
我等が大々先輩・衣笠貞之助が映画化したもの。
初めて観たのは中学生か高校生の頃。
リバイバルだったと思う。

以来、50数年ぶりに観たんだけど、
え、こんなに凄い映画だったのかと改めて吃驚したよ。
当時は面白い映画、
凄い映画をごく当たり前みたいに観ていたので
気づかなかったのか、いまだから気づくのか。
たぶん今だからだろうね。
凄い!と思うような映画に出会うのも少なくなった事だし。

あ、ちなみにYouTubeだよ。
大きくしても画像けっこう綺麗だよ。充分観れるよ(^^♪

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徳川十代将軍家治の時代。
阿波藩(徳島)に討幕の動きがあるとの風聞が流れ、
幕府は、阿波藩に隠密・法月弦之亟を送る。

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虚無僧と言えばもうこの映画だよね。

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法月弦之亟。そして我等がスーパースター、長谷川一夫(^^♪
衣笠貞之助は、1927年(昭2)に「お嬢吉三」で
新人だった長谷川一夫(当時は林長二郎)を起用して以来、
実に沢山の映画を二人で撮ってるんだよね。

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当地で弦之亟は、以前に何度もあちこちで会ってるらしい
見返りお綱という絶世の美女にまた遭遇する。
むろん私の淡島千景だ。

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その美しさに私はまたもうっとりニッコリする(笑)。
しかも強いのよ、女忍者だから(^^♪

お綱は実は二年前に当地に送られた隠密・甲賀世阿弥の娘で、
父の行方が分からなくなり潜入したのだ。
弦之亟はお綱の話を聞いて協力を申し出る。
しかもお綱は弦之亟に惚れたみたい。こら、惚れるな!(^^♪

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もう一人、弦之亟の前に絶世の美女が現れた。
弦之亟を父・猪谷の仇と狙い、
若党・森平(林成年)と共に追いかけてきた娘・よねである。
こっちは正真正銘の日本の美女・山本富士子さん(^^♪
弦之亟は、今はお相手する訳には行かぬと立ち去る。

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よねは阿波藩の家臣に怪しまれ、一方で追われる身になる。
こやつがよねの美しさに目を奪われ、よねを我がものにしようと
執拗に追いかけると言った方が良いのかな?(^^♪

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衣笠監督は3年後に
山本富士子と名作「歌行燈」を撮った訳だけど、この作品でも
シーン毎に自分で演じてみせて事細かに指導したんだって。
その甲斐あって山本富士子の動き、立ち居振る舞い、
目を瞠るほど素晴らしいんだよねえ。
あ、衣笠さん、女形で役者やってる時こんな風にやってんだな
と思うよね、観てると(^^♪

え、知らないの?駄目じゃねいかい。
衣笠監督、少年時代に役者になるために家出して、
最初は旅一座の人気女形として舞台に上がってたんだべ(^^♪

そしてもう一人、美貌の弦之亟に懸想した愚か者がいた。
こいつだあ~!

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美貌の徳島藩士、戌亥竜太郎…、我等が市川雷蔵だあ!
ごめん、ちょった違ったかな。
竜太郎が懸想したのは私の淡島千景(^^♪

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こやつ、実は極心一刀流の名人で、
弦之亟を見て出来る奴と睨み、勝負を申し込むんだよね。
さすが剣に生きた我等が雷蔵って感じ。
うまく出来てるよねえ(^^♪

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これは竜太郎が得意とする車返しの剣。
走ってって宙返りして着地した瞬間エイ!と剣を抜いて斬る!
お~、雷蔵、体操の選手だったのかよ、凄え~!
と感心するんだけど、こんな剣ほんとに実践で役に立つのかよ(笑)。

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お綱は山奉行の道場に忍び込んで山絵図を盗み、

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それを頼りに父=甲賀世阿弥が幽閉されている剣山を登る。

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急を知った弦之亟はお綱の後を追うのだが、
見張りの藩士どもに囲まれ、目潰しを食らい谷間に転落する。

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運よくお綱が助けるが目が見えなくなってしまう。

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この間、竜太郎が甲賀世阿弥を救出し、
お綱に会わせようとする。
お綱が落とした密書(?)を拾い、
幽閉されている世阿弥とお綱が実の父娘である事を
知ったからなんだよね。

あ、お綱を我がものにしたくてじゃないのよ。
竜太郎、実は天涯孤独の身。
だから家族の話に弱いのよ、実はめちゃいい良い奴な訳よ、
一方で(^^♪

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途中、たまたま弦之亟を発見。
尋常に勝負しろ!と剣を抜くのだが、
弦之亟が目が見えない事が分かり勝負は預けると剣を収める。
な、良い奴だろう(^^♪
しかしセット、衣笠監督らしくていいよねえ(^^♪

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そこへ弦之亟の為に薬草を取りに行ってたお綱が戻ってくる。
竜太郎が父に会わせてやると言うのでお綱は
薬草を弦之亟に手渡して付いて行くのだが、
行くと甲賀世阿弥の姿が消えている。

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猪谷よねと若党森平が徳島藩士たちに発見され、
森平は斬られ絶命してしまう。
よねは危うく
寺の床下に潜んでいた甲賀世阿弥に助けられるのだが、

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既に弱っていた世阿弥は、阿波藩の
謀反の動きを認めた血書を大阪奉行に渡してくれと言い残す。
藩士たちが現れたのでよねは血書を手に逃げる。

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竜太郎が倒れている世阿弥を発見した所へ
娘のお綱が現れようやく父との再会を果たすのだが、
世阿弥はその場で息を引き取ってしまう。

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よねは結局、藩士たちに捕まり拷問されそうになる。

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と、そこへ
薬草のお蔭で目が見えるようになった弦之亟が現れ、
よねを脱出させる。

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が、よねに我がものにしようした藩士に追いつかれ、
斬られてしまう。
そこへ弦之亟が駆けつけ、藩士を切り捨てる。

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よねは血書を弦之亟に渡した後、
「父はどうして?」の一言を残し絶命する。

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よねは、腕自慢の父が酒に酔って自分から弦之亟に果し合いを
申し込んで斬られたのではないかと、疑い始めていたんだよね。
弦之亟があまりにも良い侍なもんだから(^^♪

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藩士たちが血書を取り戻そうと現れる。
弦之亟が彼等を切り捨てると、

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そこへお綱が駆け付けてきて父の死を報告する。
そして…、そう、きゃつだよね(^^♪

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戌亥竜太郎が現れ、血書を奪い返そうとする訳。
その血書が幕府に届けられると、
この地にまた自分と同じような孤児たちが沢山生まれる
と言って。

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血書+お綱を巡る男二人の闘いって感じだよね。
いや、俺も入れて三人の闘いだあ~!(^^♪

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勝負は…、うん 、引き分けって感じ。
その間に俺がサッとお綱を攫って逃げたいって感じ(^^♪

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竜太郎が立ち去ろうとすると、弦之亟は引きとめ、
彼の前で世阿弥の書いた血書を破り捨てる。
「鳴門を越せば徒らに天下を騒がす因となる。
どうも気違い殿が描いた昔の夢」と言い(^^♪

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実際、殿は気が狂って幽閉されていた。
謀反はその殿を利用した家臣たちの動きだった。

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法月弦之亟は笛を吹き、死者たちを弔った…、
というお話。

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観終わった後、なんだか涙が出ちゃったなあ。
物語的には別に泣くような話じゃないんだけど、
映画があんまり綺麗なもんだからさ(^^♪

演出は綺麗だし、映像は綺麗だし、
俳優さんたちもほんとに綺麗なんだよねえ。
立ち姿、動作、仕草、声の発し方、言葉、そして演じるその心…、
ほんと全てが綺麗なのよ。

邪心というものが全くない。
映画を、作品を創るという事に自分の全てを捧げてる。
古今東西の世界の良い映画を結構観てると思うけど、
それでもこの頃の日本の監督、俳優って
今なお世界一なんじゃないのと私は思うよ(^^♪

舞台観に行ってもこういう素晴らしいものはいま
絶対に観れないよねえ。あり得ない。
地下鉄のホームでラッシュ時の雑音と悲鳴を聞いてるような感じ、
どこ行っても(笑)。邪心だらけ。うんざり。
私、顔面神経麻痺起こしてから
キンキンの雑音を聞かされると右耳が悲鳴を上げて破裂しそうに
なるんだよな、いつも芝居観に行くと(^^♪

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しかし何者よ、衣笠貞之助って(笑)。
この歳になって初めて「狂った一頁」(1926)を観て、
その余りの凄さに卒倒しそうになった。

これはああいうアバンバャルトな映像ではなく、
むしろごく普通の映像なんだけど、1カット1カットが
実に丁寧に創られ、積み重ねられて行くんだよねえ。
そう言って良ければ、凡なるものの非凡さを
嫌と言う程見せつけられた感じ(^^♪

黒沢明や小津安二郎の映像は
ともすれば映像の魂胆が丸見えになって
物語に素直に入れない時もあるんだけど、
衣笠監督のこの作品には全くそれがない。
一見大衆映画に見えるんだけど、観てるうちに
途方もないアバンギャルト映画見せられてる感じに陥るんだよね。
衣笠監督、そんなの有りですか(^^♪

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もう一点。
これは前述したように監督が女形の舞台俳優やってた
若い頃(1910年代)の写真なんだけどさ。
監督の資質、アート感覚、
なんだか物凄く木下恵介に似てるような気がしてきたなあ。

特に物語や俳優、あるいは対象物に対する視線、
距離の取り方が。
黒沢、小津、成瀬、溝口、深作、新藤兼人らは
例えどんなに対象から距離を取ってるように見えても、
視線を引いてるように見えても、

木下恵介と衣笠貞之助の二人に比べると、
対象物に頭から突っ込んでってる、
突進してるって感じは免れないって感じ(笑)。

で、その黒沢らが「男性的」だとすれば、
木下と衣笠はどこか女性的?
と言うより、まさに「女形」の人間にしか取れないような
距離の取り方をしてるような気がする。
いわゆる男には絶対不可能みたいな距離の取り方、
視線を資質として持ってるような気がするんだよなあ(^^♪

実際、二人の使ってる俳優見ても何となく分からない?
長谷川一夫、市川雷蔵、淡島千景、山本富士子。
衣笠監督がここで使ってる俳優は
自分がそうだったように「女形」の俳優だもんね、木下恵介同様。

あ、いけねえ、ブログの文字数制限に引っかかっちゃった。
途中だけど終わろう。終わるよ。終わるからね。
ではお休みなさい(笑)。
あ、これ、YouTubeでも結構観れるから観てね(^^♪


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■101分 日本 時代劇/アクション
監督 衣笠貞之助
脚色 衣笠貞之助 犬塚稔
原作 吉川英治
企画 高桑義生
製作 永田雅一
撮影 杉山公平
美術 西岡善信
音楽 斎藤一郎
出演
長谷川一夫 法月弦之亟
市川雷蔵 戌亥竜太郎
山本富士子 猪谷よね
淡島千景 見返りお綱
林成年 若党森平(猪谷家の若党)
千葉敏郎 内裏大五郎(徳島藩士)
南左斗子 お福(巫女)
中村伸郎 阿波守重喜(徳島城城主)
清水将夫 竹屋三位有位(公卿)
松本克平 関屋孫兵衛(徳島藩山奉行)
信欣三 酒井三右衛門(徳島藩江戸詰藩士)
滝沢修 脇伊豆(徳島藩家老)
石黒達也 甲賀世阿弥(お綱の父)
細川俊夫 山添東十郎(徳島藩士)

吉川英治の人気を決定づけ、過去に何回も映画化された同名伝奇小説を、衣笠貞之助が1949年の「甲賀屋敷」に続いて再映画化。主演も同作の長谷川一夫が務め、大映の四大スターによる競演が話題を呼んだ。
幕府の隠密である法月弦之丞は、幕府打倒をもくろんでいるとされる阿波藩の動静を探るため派遣された。夕雲無双流の使い手である弦之丞を追って、極心一刀流車返しの秘太刀を得意とする戌亥竜太郎、弦之丞を父の仇と狙う猪谷よね、そして剣山に幽閉された隠密の甲賀世阿弥を父に持つ女忍者お綱の三人も姿を現した。それぞれの思いが交錯する中、弦之丞は倒幕を阻止するため暗躍するのだった。

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