スリー・モンキーズ_1 (2008) トルコ

[1173]この家族が見ない、聞かない、言わないの三猿になってしまう本当の理由は何なのか

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私の超お気に入り、
「昔々、アナトリアで」(2011)を撮ったトルコの監督、
ヌリ・ビルゲ・ジェイランの作品。

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本人。カッコ付けても許すけど、
全然似合わんから止めた方が得かもしれない(笑)

彼の作品を観るのはこれでまだ2本目。
だって手に入らないんだもん(泣)
ただいま上映中の「雪の轍」も実はまだ観れていない。
8月下旬に観に行く予定だが(^^♪

ちなみに9月29日から
東京・御茶ノ水のアテネ・フランセ文化センターで
同監督の映画祭が私のために開催されるらしい(^^♪
嬉しいねえ嬉しいねえ。 早速だが、同伴者募る!(笑)

しかし暑い。暑くてほんとに何もする気がしない。
こんな夏は私には人生初かも。何だろう?
きっと安倍なる男のせいだろう。ではお休みなさい。
あ、ごめん。未だ何も書いてなかったんだった(^^♪

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深夜、車で走っていた夫婦が
道路に倒れている男を発見する。
手前に停車してる車が事故を起こしたのだ。
男はまだ生きているのだが、夫婦は「通報すればいい」と、
手前の車のナンバーを確認してさっさと走り去る。
おいおい、いきなりスリー・モンキーズかよ(^^♪

あ、スリー・モンキーズとは
「見ざる、聞かざる、言わざる」という所謂「三猿」の事。
そう。いま日本に蔓延してる連中の事。
ほら、知ってるでしょう、安倍なる男とか東京電力とかさ(^^♪

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事故を起こしたのは右の男、政治家のセルヴェトである。

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彼は配下の運転手エユップを呼び出し、頼む。
私は選挙を目前に控えてる身だし、
いま逮捕されたら政治家生命を絶たれてしまう。
出所してきたらそれ相応の謝礼を払う。
給料も毎月君の息子に払う。
君が運転をしていて事故を起こした事にしてくれないか、と。

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エユップは身代わりを引き受け、刑務所に入る。
ベッドで眠っているのは彼の妻ハジェルである。

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息子イスマイルは父エユップに会いに行く。

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エユップは会いに来た息子に言う、
たっぷり1年ある、今度こそ大学に合格しろと。
イスマイルは受験に落ちた事を報告に来たのか。
彼はやってみると答えるばかりだ。

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母ハジェルは、勉強する気配のない息子を見て
気分転換に何かやったらと薦める。
息子は、車で託児所の送迎をやりたい、
セルヴェトから謝礼を前借して車を買ってくれと
暗に母親を唆す。

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ハジェルはイスマイルに何か仕事がないかと
知人たちに当たるが、仕事は見つからない。

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ある日、イスマイルが血だらけになって帰って来る。
付き合ってる仲間に殴られたのだろうが、
彼は何も言わない。

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ハジェルは夫に内緒でセルヴェトに会い、
謝礼の一部を前借りしたいと申し出る。
セルヴェトの政党は選挙で大敗し、彼も落選したばかりだ。
彼は謝礼の一部を渡すと約束する。

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ばかりか、ハジェルを車で自宅近くまで送る。
そして自分が善き政治家である事を宣伝した後言う。
困った事があったら電話を、何でもします、と。
魂胆が見え透いているのだが、ハジェルは…。

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仲間に殴られて以来、イスマイルはたいてい母親と一緒だ。
その母親の携帯が最近よく鳴る。
イスマイルはもしかしたらと疑うのだが、何も聞かない。
むろん母親も言わない。

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ある日、イスマイルは父に面会しに出かけるのだが、
駅のベンチで突然嘔吐してしまい、帰宅する。

この嘔吐は、彼の心が
何事かを受け入れる事を拒否していることを表わしている。
具体的には、いまの状態で父親に面会へ行く事を拒否している
のだと言って良い。

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帰宅した彼は、研修で出かけたはずの母の部屋に、
母が誰かといる事に気づき、ドアの鍵穴から覗く。
ベッドには母親とあのセルヴェトの姿があった。

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イスマイルは家を抜け出し、
セルヴェトが帰宅するのを見届けてからまた家に戻る。

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母親は帰ってきた息子に驚く。
息子に誰か来たのかと聞かれて嘘を付こうとするのだが、
イスマイルは「セルヴェトだろ、俺は見たんだ」と
母の顔を数発、張る。

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そしてそのまま家を飛び出し、駅に向かう。
皮肉な事に彼は、母親の不倫を目撃した事で
父親へ面会に行く理由を見つけた事になる。

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汽車に乗り、駅のプラットホームで夜を過ごし、
翌日、父と面会する。

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父親エユップが変わった事はないかと尋ねると、
イスマイルは何もないと答える。
エユップは息子が何か隠している事に気づく。
エユップは刑務所にいて何も変わりようがない。
だから隠された家族の小さな変化にも気づくのだ。

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イスマイルは房へ戻るエユップに「父さん」と声を掛けるが、
後が続かない。言えない。言ったら全てが壊れる。
それに元を正せば、事の起こりは自分が母に
車をねだった事にある。

映画サイト「allcinema」を覗くと、
この映画の題名は「Three Monkeys ~愚かなる連鎖~」で、
「スリー・モンキーズ」はソフト名となっている。
映画に「愚かなる連鎖」とサブタイトルが付いてるのかどうか、
トルコ語が読めないので私には分からない。
わかり易くていいかも知れないが、そう付けると
この映画の奥行が少し浅くなっちゃう気もするけどね(^^♪

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家に帰ると机の上に金が置いてある。
セルヴェトが母親に渡した謝礼の一部だ。

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イスマイルは言葉もなく部屋のベッドに身を投げる。

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部屋の扉と玄関の扉が開き、子供が入って来るのが見える。
海水パンツを穿いている。死んだイスマイルの弟だ。
イスマイルの目に涙が溢れる。

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「兄ちゃん」 
弟は声を発するが、イスマイルは何も言わない。
言えない。言葉で言える心ではないのだ。
この死んだ弟だけがイスマイルの心の全てをわかっているのだ
と言うほかはない。
しかしまあ、見てよ、この子の何とも言えない表情。
素晴らしいよねえ(^^♪

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イスマイルはその金で車を買い、送迎の仕事を始める。
そして9ケ月の刑を終えた父を迎えに行く。

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父親が息子にこの車はどうしたんだと問い詰める。
息子は言う、
母さんがセルヴェトに謝礼の一部を貰い、
その金を借りて自分が買ったのだと。
父親は聞く、母さんは事務所に行ったのかと。
息子は、いや電話でだと思うと嘘をつく。

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弟の所へ行けと言われ、
息子は父と一緒に死んだ弟の墓参りをする。
弟が何故死んだのか、溺死なのかはわからない。

イスマイルは受験に失敗した後「憂鬱だ」と母親に言ったが、
憂鬱なのは受験に失敗したからではなく、
私には弟が死んだ日から彼は憂鬱なのだという気がする。
送迎の仕事も、どんな人間の送迎をやっているのか
何も語られないが、園児たちの送迎で、
死んだ弟の送迎をやるつもりでやっているのではないか、
というのは単に私の妄想なのか?(^^♪

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母親のハジェルはセルヴェトに会いたくて電話をする。
だが何度しても彼は出ない。

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ついに彼女はセルヴェトの屋敷へ押しかける。

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妻子と車で出かける所だったセルヴェトは、
屋敷の繁みにハジェルの姿を発見し、驚く。

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ハジェルは帰宅するとシャワーを浴びる。
と、壁に掛けてある彼女の携帯が鳴る。
一度切れてまたすぐに鳴ったので、
夫のエユップが妻のその携帯を取りだす。

非通知設定になっていて相手はわからない。
出た瞬間、相手が怒った声で言う、
「家まで来てどういうつもりだ」と。
エユップは間違い電話だと思い「かけ間違いでは」と返す。
と、電話はすぐに切れた。

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ハジェルがシャワーから上がる。
夫がベランダの端で街の方に目をやっている。
彼女はエユップに声を掛けない。

ちなみにハジェルとエユップの
どっちが先に帰宅したのかは分からない。
この映画はそういう事は、余計な事は一切説明しない。
そう言って良ければ監督のヌリ・ビルゲ・ジェイラン自身が
スリー・モンキーズなのだ(^^♪ 結果、
作品は否応なくクライム・サスペンスの様相を呈する事になる。

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エユップは妻の部屋に入る。
下着が以前とすっかり変わっている。
彼は妻に激しく問い詰める。
謝礼金を前借りしたのか、何に使った、何故俺に黙っていた、
セルヴェトの事務所へ行ったのかと。

ハジェルは答える。
が、当然セルヴェトとの不倫については言わない。
エユップも奴と寝たのかとは絶対聞かない。
さっきの電話の主がボスのセルヴェトだと
すでに気づいているはずなのだが。

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彼は一旦寝室を出る。
と、すぐにまた妻の携帯から着信音が響く。
実を言うと、私はこの映画の中で唯一その着信音が
気に食ってない。
だってその着信音、こういう歌謡曲なんだぜ。

♬あなたの愛が報われなければいい
私のように愛に苦しめばいい
恋しい人と会えない辛さをあなたも味わえばいい
その心をロウソクのように…、以下、省略!(怒)

これだけ「見ざる、聞かざる、言わざる」の
スリー・モンキーズを押し通しているのに、監督さん、
この着信音楽、あまりにも露骨な、
取って付けたような印象を観客に与えてしまわないカニ?(^^♪

ともあれエユップはその着信音楽を聞いて、
また寝室にとって返し、ハジェルを激しくいたぶる。

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エユップは本当は一番問い詰めたい事を
言葉にして問い詰めない訳だから、
すでに見たに等しい事を「見ざる」にしようとしている訳だから、
彼の言葉と行動は当然のようにエスカートして
残忍にならざるを得ない。
ほとんどDVに等しい。

突然、ハジェルが激しく笑い出す。
エユップは「何が言いたいんだ」と詰る。
自分は言わないでおいて何が言いたいかもないだろうと思うが、
彼は頭に来て「メス犬め!」と吐き捨て、家を飛び出す。

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この当たりになるとヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の意図が
少し分かったような気がして来る。
彼は例えばチェーホフが小説で書いたようなものを
映画でやろう、書こうとしているのではないか、と。
「昔々、アナトリアで」にもそうした趣があったが、
実際観ていると、映画を観ているというより
小説を読んでいるような気がしてくるのだ(^^♪

ほんと面白い、凄いわジェイラン、
などと感心している場合ではない。

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夜、エユップは
そのまま仲間のいる居酒屋へと足を向ける。


※「スリー・モンキーズ_1」
※「スリー・モンキーズ_2」
※「スリー・モンキーズ_3」

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■109分 トルコ・フランス・イタリア合作 ドラマ
監督
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
エブル・ジェイラン
アルジャン・ケサル
出演
ヤブズ・ビンギョル
ハティジェ・アスラン
アルジャン・ケサル
アフメト・ルファト・シェンガル

エユップはボスである政治家セルヴェトの罪をかぶって刑務所へ入ることになる。大黒柱を失ったエユップの家では、息子イスマイルがニートな生活を送っている。「憂うつなんだ」と言ってはばからず、夜にはどこかでけんかをし、血だらけで帰ってくるイスマイル。そんな息子を見て、母親ハジェルは彼が欲しがっていた車を買うためにセルヴェトのところに金策に行くのだが…。

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