雪之丞変化_2 (1934) 日本

[1177]虚実の皮膜で演じられる天才・衣笠貞之助の世界最高峰のチャンバラ前衛劇

画像




物語を進めよう。

画像

雪之丞はその夜、廣海屋、長崎屋に根岸の料亭に招かれる。
土部三斎ほかも一堂に会していて、対面する。
左・門倉平馬はかつて道場の兄弟子でもあった。

画像

同夜、女盗賊のお初は土部三斎の屋敷に忍び込む。
が、雪之丞に発見され追い出される。
雪之丞はどうやら料亭の後、
屋敷に招かれ娘・浪路と会していたようだ。

お初を演じているのは伏見直江は、新派俳優・伏見三郎の娘。
3歳の時に父の旅芝居で初舞台。
1923年(大正12)に父から離れて、後の築地小劇場である
小山内薫の劇団研究生になり、映画にも出演するようになる。
戦後、伏見直江一座を結成した大女優だが、
この作品でみせるべらんめえ口調、演技はまあ見事だ(^^♪

画像

オッと、その屋根瓦には、
雪之丞とお初の活劇を高見の見物と洒落込んでいる
闇太郎の姿があった(^^♪




画像

夜な夜な江戸の屋根瓦をすっ飛ぶ我等が盗賊・お初(^^♪

画像

そのお初を夜な夜なよ追う十手持ちども。
どうよ、音声聞いてるだけでルンルンと乗りまくらないかい?
あ~、三篇全部観てえよなあ(泣)。

画像

そんな或る晩、お初は忍び込んだ旅館花むらで
菊之丞と雪之丞の話を盗み聞きし、
雪之丞の秘密を知った。

画像

お初は早速、飼い犬ムク犬に手紙を持たせ、
雪之丞を森の中へ呼び出し、
命を賭けた雪之丞への愛を告白する。
太夫、秘密(仇討)を喋られたくなかったら
あたいを愛してよお~、と(^^♪

画像

いやいや、よくよく見ると我等がお初、悪党なれど可愛くて美人、
色気も満杯なんだけど、まあ気が短いのがタマに傷(笑)。

画像

雪之丞が今の舞台が終わるまで待って欲しいと頼むと、
待てない、今すぐになんて言うもんだから、
じゃあこれまでと雪之丞が懐の刀に手を伸ばす。

画像

「フン。惚れた弱みで味方になってやろうって親切無にしやがって。
畜生。生まれ損ねえ。勝手にしやがれ。
手前がそんな料簡だったらこっちにも考えがあらあ」
と、お初はそう言って闇に走り消えた。




「生まれ損ねえ」
その言葉が既に私の言った、
現世でも虚実の皮肉を生きるしかない女形・雪之丞の本質を
一言でうまく言い表してる訳だが、しかしまあ、
この場面の二人のやり取りにはホント惚れ惚れとするよねえ。

科白なんてのは冗談で喋ってみせれば良いのだが、
今の俳優は皆いかにも本当らしく喋ろうなんてしやがるからね(笑)。
言いかえると、言葉(科白)と自分との間に距離がないのだ。
演じている自分と、それを見ている自分との間に距離がない。
それは転倒して他人との間に距離がない事を表わし、
その状態を私は「ビョーキ」と言っている事になる。

まあ平たく言えば冗談が利かない訳だよね。
そういう人間がいま日本には山ほどいる。
そういう人間は要注意という事になる。
芝居をやらせるとその事が、その人間がどういう人間か
すぐに分かる。げに恐ろしきは誠に芝居なのである(^^♪

画像

浪路が書置きを残して家を飛びだした。
土部三斎は
我が身の破滅だ、何もかも雪之丞の所為だと
腹心・門倉平馬に雪之丞を斬れと命じる。

画像

平馬は長崎屋の名を騙り雪之丞を呼び出す。

画像

籠の着いた先には平馬と怪しき侍ども多数がいた。
平馬が側女(浪路)を何処へやった、隠し場所を白状しろと迫る。
実は平馬は浪路に惚れているのだ。
雪之丞は知らぬと答える。
「問答無用。斬れ」と平馬が者どもに命じた。




画像

お~、いかにも悪い奴め!(笑)

画像

あっという間にチャンバラ活劇が始まる。
お~、雪之丞、強い!すん晴らしい~!(^^♪

画像

悪人どもはバッタバタと殺られる。
お~、さすが衣笠貞之助らしき素晴らしき死よ!
と私は訳が分からず興奮する(笑)。

ちなみにこの作品のチャンバラ活劇シーンは
一転して通常の10倍速の早回し映像になる(^^♪
つまり通常速度を「実」とすれば
活劇シーンは一瞬にして「虚」に早変わりする訳だ(笑)。
そう。この映画、どこまでも「虚実皮肉」に徹してるのである。
衣笠、凄い!と私が呻くのはまさにその所為なのだ(^^♪

画像

残るは瞬く間に平馬ただ一人。

画像

と思った瞬間現れたのはまたもや盗賊・お初。
その手には何と五連発の短筒が(^^♪

画像

平馬の策略には、
「可愛いお前さんの血みどろの姿が見たかった」
というこのお初が加わっていたのだった。
何ちゅう可愛い悪女だと何処かでニワトリが鳴いた(笑)。
既に夜明け、もうじき市村座の幕が開く。

画像

幕が開いた。いや、開かない、とっくに定刻は過ぎてるのに。
押し掛けた気の短い江戸の客が悲鳴を上げて騒ぎ出す(^^♪

画像

楽屋裏も大騒ぎ。花形・雪之丞の姿が見えないからだ。

画像

その頃雪之丞は、ある屋敷にお初に閉じ込められていた。

画像

お初は相変わらず執拗にその雪之丞を口説いている(笑)。
「ねえ、何とかお言いったら。何だってこのお初さんは
あんな生まれ損ないを諦め切れんのかなあ。
もう勝手にしやがれ」とお初は短筒を撃った(^^♪

画像

オッと、その時たまたま表通りを籠で行き過ぎようとしていた
闇太郎が耳にした。
闇太郎は籠を下り屋敷を覗く。

画像

勿論お初に恋しい雪之丞を撃てる訳がない(^^♪
誰が一思いに殺してやるもんか。
小屋の幕が開いた頃だ、どうなってるか見てきてやる。
そこで怨霊に憑かれ狂い死にしてなと言い残し、
お初はちょっくら屋敷を出る。

画像

小屋を覗くと案の定幕は下りたままで客は大騒ぎである。

画像

お初が惚けて客の男に訳を聞く。
男が言う、
「何でも夕べ雪之丞が何者かに攫われたらしい。
今日は二番狂言で止めるそうだ」と。

画像

お初が
「まあ、せっかく雪之丞さんの綺麗な所を目当てに来たのに、
見られないとは残念なこってすねえ。うははははは」と
堪えられずに笑いを上げたその瞬間、
拍子木が場内に響き渡り幕が開いた。




画像

そして我等が雪之丞が幽閉されていた屋敷の扉の中から…、
じゃなかった、中央の暖簾を掻い潜り登場した(^^♪

画像

アチャー!「あいつ…」と思わず目ん玉を真ん丸にして
驚く我等が悪漢・お初(笑)。

画像
画像
画像

そしてお初の隣にはいつしか我等が闇太郎の姿が(^^♪
そう。あの後闇太郎が閉じ込められた雪之丞に気づき
救出したのだ。
闇太郎が言う、「いつ見ても綺麗なこっちゃありませんか」
お初は既にそれ所ではない。
美しき雪之丞の姿にもうすっかり見惚れているのだった(^^♪(爆)

そして物語は「第二編」へ。

雪之丞は復讐へ動き出す。
その頃江戸は飢饉状態だった。
廣海屋と長崎屋が共謀して米を買い占めていた所為だ。
雪之丞は廣海屋を陥れた。米を投売りにしてはどうか、
そうすれば廣海屋の名が上がる、と。
もともと安く買い入れた米、廣海屋は雪之丞の案に乗った。

画像

予想通り廣海屋の名は上がった。
相棒だった長崎屋は潰れ廣海屋の一人舞台となった。
廣海屋は雪之丞の楽屋を訪れ礼を言う。

画像

と、そこへ長崎屋が現れ、
裏切り者の廣海屋と取っ組み合いになる。

画像
画像

予想通り仲の割れた廣海屋と長崎屋を見て
雪之丞と親方・菊之丞はほくそ笑んだ。

画像

廣海屋は長崎屋を二階から階下の通りへ突き落とす。

画像

長崎屋は二階に向かい恨み声を発した。
「見ておれ、廣海屋。今に目にもの見せてやる!」と。

※「雪之丞変化_3」に続く


画像


■98分 日本 時代劇
製作: 松竹キネマ
監督: 衣笠貞之助
脚本: 伊藤大輔 衣笠貞之助
主題歌: 東海林太郎 「むらさき小唄」
出演
林長二郎  雪之丞・闇太郎・母親
嵐徳三郎  菊之丞
高堂国典  土部三斎
千早晶子  娘 浪路
伏見直江  お初
山路義人  門倉平馬
志賀靖郎  廣海屋
高松錦之助  長崎屋
南光明  浜川
日下部龍馬  横山
原健作  法印
中川芳江  おさん婆
高松栄子  浪路の乳母

長崎の大店の主人の子・雪太郎は、父親はじめ家族一同を、あらぬ抜け荷の濡れ衣を着せられ処刑される。放浪の孤児となった雪太郎は旅芸人の一座に拾われ、やがて女形の看板役者・中村雪之丞となって江戸に現れるが、そのもう一つの顔は親の敵を討つべく剣術を磨きあげた復讐の鬼だった。狙うは今や我が世の春を謳う元長崎奉行・土部三斎とその一味。義賊・闇太郎の助けをうけて、「長崎の敵を江戸で討つ」波乱万丈の物語が繰り広げられる。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック