伊豆の踊子_1 (1960) 日本

[1178]川端文学に挑んだ我らが鰐淵晴子の初々しい姿に大拍手(^^♪

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川端康成の「伊豆の踊子」の映画化。
いつしか青春スター、アイドルの登竜門と化してしまったが、
本当は川端の資質がとても良く表れた優れた文学作品である(^^♪

田中絹代を初め何人かが踊子を演じている訳だが、
鰐淵晴子のこの映画が私の一番のお気に入りかな(^^♪
もっとも吉永小百合のは観てない。
小百合が前面に出て来て、どうも本来の作品から
遠ざかってしまう気がするからだ。

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昭和の初め、伊豆路を修善寺へ向かう5人の一行がいた。
母親たつの率いる旅芸人一座である。

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中・母親たつ…、桜むつ子。
左・上の娘、千代子…、城山順子。
右・千代子の恋人、栄吉…、田浦正巳。
原作では栄吉がたつの息子で、千代子は栄吉の恋人である。

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右・百合子…、瞳麗子。 
左・薫…、我が鰐淵晴子。
鰐淵晴子は子供の私にとって初めてのアイドル的存在だった(^^♪

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その日、寮生活をしていた一高の学生水原も
友人坂本が待つ修善寺の湯宿を目指していた。
そしてこの湯川橋でこの旅芸人一座とすれ違う。

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学生・水原…、津川雅彦。
原作では学生「私」が主人公なのだが、
映画化されると主人公はたいてい踊り子の薫になる。

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その薫、鰐淵晴子。どう、超可愛いだろう(^^♪
14歳の少女なのに「私」には最初17歳くらいに見えた、
と原作ではなっているんだけど、
鰐淵晴子だとその感じが物凄くうまく出るんだよね(喜)。
17歳くらいに見えるのはもちろん旅芸人の暮らしをしているから。
ある意味、「私」より世の中を知る少女だから。

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だいぶ昔になるが修善寺には何度か行った。
が、こんな風情はもうなかったぞ(^^♪

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勉強に来たのだが、向かいの湯宿の座敷から聴こえてくる
三味線や歌声が煩くて勉強にならず、
水原は一人静けさを求めて湯ヶ島へ向かう。

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そして薫らも湯ヶ島へ。
行くな行くな、行かんで宜し、とオラ(^^♪
ちなみに一座は大島の波浮港から稼ぎに来ているのである。

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その夜、官吏の客の座敷に呼ばれ、
小原庄助さん♬と一座は「会津磐梯山」を謡い、踊る。

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か、か、可愛い~!可愛い過ぎる~(^^♪

原作の踊り子は…、
古風に結った髪に卵形の凛々しい小さい顔。初々しい乙女。
若桐のように足のよく伸びた白い裸身。美しい黒髪。
美しく光る黒眼がちの大きな眼。
湯殿から無邪気に手を振り、花のように笑う。
尋常小学校二年までは甲府にいたが、家族と大島に引っ越す。
五目並べが強い(^^♪ 小犬を旅に同行させている、
となっている。

お~、まさにオラが鰐淵晴子そのものではないかあ~!
と私は思う(^^♪

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官吏の客に無理やり酒を飲めと言われて困惑している所を、
同宿の学生・水原に危うく助けられる。
薫らが明日天城を越えて湯ケ野へ向かう事を知った水原は
踊り子・薫を追う事にする(^^♪

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津川雅彦の顔に一高はないだろ!と違和感満杯だが、
うん、後ろ姿はなかなか一高生らしくて良い(^^♪

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水に遊ぶ蛙クンたちもなかなか良い(^^♪
この映画、伊豆路の風景を上手く捉えているんだよね。
伊豆へ通ってる私の言う事だから信じた方が良い(笑)。

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峠の茶屋で一行に追いつく。
茶店の老婆は一座と長年の顔見知りで、
水原は婆さんから薫の優しさを聞かされる。

原作では爺さんが生きていてこの旅芸人一座を差別する。
なのでこの映画では爺さんを他界させているのだが、
そこが何とも言えず私には良い(爆)。

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そして愈々天城峠のトンネルに差し掛かる。
薫は学生さんが後ろから来てるのを知り、
チラチラ、チラチラ振り返るんだよねえ。コニャロ(^^♪

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天城トンネルに入る。
水原の下駄の音がトンネル内で大きく響く(^^♪

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薫はその音が近づき、自分を追い越して行くのを
ワクワクとした気持ちで待つ(^^♪

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薫は速度を少し緩める。水原が脇を追い越す。
薫がニコリと笑って水原に目をやる。

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薫はツツツとすまし顔で速度を速め、水原を業と追い越す。
水原は表情を変えない。薫にも目をやらない。
一高生らしく規則正しく一定の速度を保つ(笑)。

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薫はまた業と速度を緩める。水原がまた追い越す。
薫は意地でも知らんぷりしている水原にまた目をやる。

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そしてまたツツツとすまし顔で水原を追い越したかと思うと、
水原の方を振り返り、ご覧のようにニッコリと笑いかける。
ギェ~、オラ、堪らん(^^♪

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二人は初めて言葉を交わす。
薫が「どこまで?」と聞き、水原が「下田まで」と答える。
薫が「じゃあ下田まで一緒に歩きましょう」と母親に紹介する。
母親が「私たちは大島の波浮の港の人間です」と
自己紹介すると、薫がすかさず宣伝する。
「どうぞ大島の方へもお遊びに」
「まあ、遠慮なしに」「学生さんが沢山泳ぎに来るんですもの」
「夏でしょ?」「冬でも」「冬でも泳げるんですか?」
母親が「まあ」と薫の肩を叩き、
三人の笑い声がトンネルの中で大きく弾ける(^^♪

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薫が声の反響を面白がって「お~い」と大声を上げ、
出口に向かって走り始める。
水島がその後を追いかける。

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ずっと硬かった水島の顔に笑顔が弾ける。
脚色は劇作家の先輩である田中澄江さん。
この作品はシナリオも本当にいい(^^♪

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薫は近道だと言い、水島の手を引き山へ入り、
二人だけのデートを楽しむ(笑)。

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村の入口の立札にぶつかる。
「物乞い、旅芸人、入るべからず」
屈託のない、明るい薫の顔に陰が射す。
村に入ろうとすると子供たちに石もて村を追われる。

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河原で迷子の仔犬を拾い、薫が抱きしめる。
「犬好き?」「大好き。大島には3匹いる」
「猫は?」「大好き。大島には5匹いる。水原さんは?」
「好きだけど東京には犬も猫もいない」
「どして?」「宿舎にいるんだもん」
「どして?」「どしてなんだろう」「(犬に)可哀想ね。
水原さんには自分のお家がないのよ、きっと」

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原作では、薫は仔犬と一緒に旅をしている事になっている(^^♪
仔犬を村の子供に返すと、村の子供たちは感謝し
村の中を通して上げるのだが、以後、
薫も清水も人々の芸人に対する差別の強さを
思い知らされる事になる。

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村野ケ湯に着くと清水はすぐに鳥打帽子を買う。
学生が踊り子と歩いていると人々に好奇の目で見られ、
薫に済まないと思ったからだ。

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清水は薫たちと同宿したいと思うのだが、
栄吉が気を使い別の湯宿を紹介する。
湯宿の主人たちも学生と旅芸人を同宿させるのを嫌がる。
薫と百合子が清水を尋ねて来ても部屋に通さず
勝手に返してしまう始末である。

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清水が薫らの湯宿を訪ねると、
旅芸人と行商人らは大部屋で雑魚寝状態である。
この作品は川端康成が伊豆で踊り子に出会った体験を
下に書かれているので、実際そうした差別がまだ当然のように
行われていたのだろう。

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一座は伊豆に金鉱探しにやって来た男たちの座敷に呼ばれる。
男たちは傍若無人である。母親と栄吉は拙いと思い、
すぐに薫と百合子を下がらせる。
案の定、男たちは踊り子を枕芸者だと思っている。

今の若い世代には分からないかも知れないが、
旅芸人は「河原乞食」「白拍子」だという通念に従ってる訳だ。

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白拍子とはその昔、
芸と躰を売りながら諸国を歩いていた女たちの事である。
元を正せば天皇の側近だった巫女たちなのだが、
平安期、天皇の傍に仕える女官たちが
文学を始めるようになったので巫女は不要になった。
結果、巫女たちは白拍子として諸国を歩き、
生きるしかなくなったのである。

で、河原乞食と差別されるようになった訳だが、
もともと巫女で天皇の側近だった訳だから
人々は差別する一方で畏怖の念をも併せ持っていた。
が、時代が下ってこの大正年間になると、
単なる枕芸者と見、畏怖の念などすっかり消え失せている事が
よく分る。

そのあたりの事を理解している人と、していない人とでは、
この「伊豆の踊り子」の見方、感じ方も随分と
変わって来るかも知れない。

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座敷を退いた薫は、
廊下で待っていた清水と連れ立ち散歩に出る。


※「伊豆の踊り子_2」に続く


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■87分 日本 ドラマ/ロマンス/文芸
監督 川頭義郎
脚色 田中澄江
原作 川端康成
製作 小梶正治
撮影 荒野諒一
美術 岡田要
音楽 木下忠司
録音 小尾幸魚
照明 飯島博
編集 杉原よし
出演
鰐淵晴子 踊り子薫
津川雅彦 学生水原
桜むつ子 たつ
田浦正巳 栄吉
城山順子 千代子
瞳麗子 百合子
中村是好 小間物屋
戸塚雅哉 学生坂本
佐竹明夫 事務官
吉川満子 茶店の老婆
小林十九二 湯ヶ野の洋品店主人
浅茅しのぶ  花菱の女将
野辺かほる 甲州屋の老女中

昭和の初め、春浅き伊豆路をゆく疲れた足どりの一行があった。中年女のたつに、娘の千代子、その愛人栄吉、千代子の異父妹薫、それに傭いの踊子百合子で、彼らは旅芸人だった。その同じ道を、一高生の水原と友人坂本が修善寺をさして歩いていた。その夜、宴会の席に出た薫は、官吏の客に無理やり盃をさされ困惑しているところを同宿の水原に助けられた。翌日、後になり先になり天城越えをする薫と水原のむつまじい姿がみられた。そんな二人に百合子が嫉妬の目をむけた。旅芸人と一高生とのそぐわぬ取り合わせは村中の悪童たちにはやしたてられた。水原は薫に対する思いやりから鳥打帽を求めてかぶった。たつは薫が水原に愛情を抱き始めたのではないかと心配したが、千代子は「二人ともまだ子供ですもの」と屈託なげに答えるのだった。百合子が失踪した。薫は自分のためだと泣き出したが、百合子は見知りの小間物屋から芸者になることをすすめられていたのだ。下田に着いた夜、過労のため千代子が流産した。たつは昔の弟子で、今は小料理屋を営んでいるおせんに借金を頼んだが、冷い返事だった。水原はたつの苦境を救おうと、父の形見の腕時計をもって金策に奔走したが思うにまかせなかった。水原が東京に帰る夜が来た。デッキにたたずむ水原の目に、走ってくる薫の姿が映った。ただ一言、「薫ちゃん!」--その声は暗い波間にこだまして薫の胸にしみわたった。

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