伊豆の踊子_2 (1960) 日本

[1178]川端文学に挑んだ我らが鰐淵晴子の初々しい姿に大拍手(^^♪

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薫は言う。「私、今まで
私たちの暮らしを恥ずかしいと思った事はなかった」と。
清水は怒ったように返す。
「立派だよ。僕はそう思ってる」と。
そして付け加える。
「僕は君のお母さんが羨ましい」

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「あなたのお母さま、どんな方?」「死んだ」
「まあ。お父さんは?」「死んだ」
「……」「そんな事は黙っていようと思ったんだ」
「でも嬉しい」「どうして?」
「私のお父さんもいないんですもの。半分だけ同じ」

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小説の「私」は川端自身の事である。
川端は1歳7か月で父親、2歳7か月で母親、7歳で祖母、
10歳で姉、そして15歳で祖父を亡くし孤児となった。
原作に「孤児根性」という言葉が出てくるのだが、
20歳の「私」は、自分の性質はその孤児根性で歪んでいるという
思いに囚われ、憂鬱に耐えられずに一人伊豆への旅に出るのだ。

そして途中出会った旅芸人家族、娘の踊り子・薫に惹かれ、
次第にその憂鬱が払拭されて行くというのが
この作品の大筋である(^^♪

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「孤児根性」とは屈折した言い方だが、
私なりに言いかえると家族を知らない「私」はすぐに家族を、
そして自分の「対」なる相手を求めてしまう性癖という事になる。
だがその性癖を潔いが故に素直に認める事が出来ない為、
「私」は一人苦しむ事になる訳だ。

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また「対」なる相手と言っても、
「私」の場合はまだ相手が女である必要はない。
同性でも良いのである。
その事は好きになった薫がまだ14歳で、
子供っぽい所を沢山残している事からも容易に分かる。

川端は中学の寄宿舎時代、
同室の下級生・小笠原義人という生徒に愛情を寄せられ、
床で抱擁し合って眠るなどの同性愛的な心を抱いている。
後にその時「生れて初めて感じるやうな安らぎ」を憶えた
と言っているのだが、この薫にはその小笠原義人のイメージを
重ねて描いていると言える。

思春期、人は概ね同性に近づいて自分の性を確かめ、
そしてそれから異性へと向かうが、
清水と薫の互いに幼い恋心は謂わばその同性から
異性へと向かうちょうど狭間にある微妙な性を感じさせるのだ(^^♪

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薫が宿へ帰ると、酔った栄吉が
こんなに遅くまで何処へ行ってたと薫を平手でぶつ。
座敷で客に侮蔑されて荒れていたし、
薫の事も本気で心配していた訳だ。

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千代子はそんな栄吉が見ていられず庭へ出る。
薫が追いかけて言う。
お姉さん、私、栄吉さん嫌い。
あんな男のどこが良いのよ、別れちゃいなさいよ、と。
千代子があなたにはまだ分からないわと諭す(^^♪
栄吉が庭に現れたので薫はさっさと去る。

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千代子は栄吉に打ち明ける。
実は私、妊娠したの、と。
千代子は栄吉に嫌われたらどうしようと思っていたのだが、
栄吉は不機嫌がいっぺんに吹っ飛び、
俺も父親かとニコニコ大喜びし、千代子を抱きしめる。

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薫は隙間から二人を覗き、
どうなってるの、あの二人?と多いに首を捻る。
すかさずオラは言う、
薫ちゃん、いずれ君も大人になったら分かるさと(^^♪

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翌日、百合子は、旅の途中で一座と一緒になった
小間物屋(中村是好)と姿を消す。
薫は、私が昨夜百合子と喧嘩したからじゃないかと気に病む。
それを清水が慰めるのだが、芸者の方が儲かるぞ、
紹介してやろうと小間物屋に唆されたからだった。

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一座と清水は下田へ向かう。
娘の妊娠を知った母親たつは、
波浮に帰ったら二人の結婚式だねと大喜びである(^^♪

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薫と清水はもう子供みたいに二人して飛び回っている(^^♪
この映画、YouTubeなので例によって画像が酷いが、
実際の映像はもっとちゃんと観れるからね。

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ところが喜びも束の間、
下田へ着くと千代子が旅疲れで流産してしまう。

原作では千代子はすでに流産と早産で二度子供を亡くした。
二度目の子は旅の途中、生後一週間で死亡、
下田で49日を迎えたという設定になっている。
田中澄江はそれを現在形として持ってきた訳だ。
上手いよね(^^♪

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医者に診てもらうと大事には至らないようである。
薫は清水に頼んで一緒に薬屋へ走るが、
薬代もままならず清水に不足分を借りる事になる。

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たつは、以前弟子で今は下田で小料理屋を営んでいる
おせんに借金を申し込むのだが、返事はニベもない。

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たつは薫を連れて二人で下田の町を流すが、
なかなかお呼びが掛からない。

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水原はたつ一家の苦境を救おうと、
恩師の形見の時計を手に金策に走るが思うにまかせない。

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やっとお呼びが掛かって座敷へ上がるのだが、
唄もそこそこに客の勧める酒を飲みまくって母親たつは
ベロベロに酔ってしまう始末(^^♪

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清水はたまたま入った居酒屋で
百合子を連れて出た小間物屋を見つけ文句を言う。
掴み合いの喧嘩になって居酒屋の主人に追い出されると、
つくづく世間が嫌になり、酔って不貞寝をする。

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酔った母を宿へ連れて帰り、薫が
「今夜は商売がほとほと嫌になった」と愚痴を零すと、
「誰のお蔭で大きくなったと思ってるの」と
母の手がバチンと飛んで来た。薫はプイと怒って、
私、一人で大島へ帰ると荷物を纏めようとするのだが、
鼾をかいて眠る母を見て哀れになり思い留まった。

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目を覚ますと母の姿がない。
姉に聞くと、1時間前に三味を手に出たまま戻らないのだと言う。
薫は探しに町へ出る。

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母は深夜、一人で町を流し歩き、
通りで酔った男二人を相手に嫌な顔もせず唄い、
小銭日銭を稼いでいた。

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薫はそこに自分たちを育ててくれた母の姿を見る。

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別れの日が来た。
夜、下田から船で東京へ帰る事にしたのだ。
「ごめんね。僕は何もして上げられないんだ」と清水は謝る。

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「あんなに色々してくれたのに。とっても楽しかった。
随分教わったわ」と薫は礼を言う。
「僕も色々教えて貰った」

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思い出にと薫は自分の簪を清水の胸に刺す。
別れに笑おうとするのだが、溢れたのは涙だった。

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その夜、珍しく三つのお呼びが掛り、
薫は母と座敷へ出て踊った。

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「港へ行っといで」と、たつは娘に声を掛けた。
薫は席を立とうとしなかった。
昨夜、一人で流している母の姿を見たからだ。
たつはまた言った、「行っといでったら」と。

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下田港。
清水は見送りに来てくれた栄吉に鳥打帽を贈った。
千代子さんに卵を買って上げてくださいと僅かばかりの
お金と一緒に。

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薫は母に甘えて中座し、港へ走った。

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船が岸壁を離れた。
「さようなら」と栄吉が手を振る。

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間に合わなかった。

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清水は岸壁に薫の姿を見つけた。
「かおるちゃ~ん!」と必死に声を掛け、手を振った。

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薫は遠ざかる清水を言葉もなくただ見送った。

以下、原作は次のような感じ(^^♪
…私は伊豆半島の南端がうしろに消えてゆくまで、
ずっと沖の大島を一心に眺めていた。
船室で横にいた少年の親切を
私は自然に受け入れられるような気持になり、
泣いているのを見られても平気で、涙を出るに委せていた。
私の頭は澄んだ水のようになって、それがぽろぽろと零れ、
その後には何も残らないような甘い快さだった。

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翌日、薫は母親たつと一緒に、
姉千代子の薬代を稼ぐ為に西伊豆へと発った。

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傍には芸者になるのはやっぱり嫌、
私も連れてってと戻って来た百合子の姿もあった(^^♪

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やっぱりいい映画だなあ。
私の鰐淵晴子はほんとに初々しくて可愛いし、
桜むつ子、 田浦正巳、城山順子、中村是好らは
一歩引いてホントしっかりと脇を固めてくれてるし(^^♪

問題は清水をやってる津川雅彦だな。
いや、良いんだよ、オラが津川雅彦も。
でもやっぱり一高生、童貞って感じには遠いよな(爆)。

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オレだったら清水にはちょっと世間に馴染めない、
硬めのこんな少年を連れて来たいよな(笑)。

で、何処かで「十六歳の日記」を挟み入れたい。
病床の祖父をひとり看病し続ける川端少年の姿を。
そうすると清水の背後にあった「孤児根性」が
よく見えて来るんじゃないかなあ(^^♪

で、「伊豆の踊子」を撮り終ったらすぐに
「続・伊豆の踊子」として「眠れる美女」を撮りたいよね。
老いた老人・清水が、伊豆路で出会った14歳の踊り子・薫を
探し歩く物語として。
どう考えたってアレ、50年後の老人・清水の話だもんな(^^♪

なんてポロポロ涙を零しながら色々と考えちゃったよな、
小説ばかり読んでた学生時代の気分を取り戻して(^^♪

YouTubeの映像、もっと綺麗だから観ようね。
ホント良い映画だよ。アイドル映画を超えてるよ。
ついでに以下、幾つか川端語録を紹介して終わろう。

「文壇や世間の批評を聞くな、読むな、
月々の文壇文学など断じて見るな、(中略)
常に最高の書に親しめ、それらの書が自ら君を批評してくれる」

「子供の作文を私は殊の外愛読する。
一口に言へば、幼児の片言に似た不細工さのうちに、
子供の生命を感じるのである」
「その幼稚な単純さが、私に与へるものは、実に広大で複雑である。
まことに天地の生命に通ずる近道である。(中略)
すぐれた作家の心には、常に少年が住んでをるべきである」

「だまされて戦争をしてゐた人間などは一人もゐないのである。
戦争の間にも時間と生命は流れ去つた」

「自分の両親を写生しなさい」
(小説の勉強はどうしたらいいかと訊ねられた時の答え)

「どんな弱点でも持ち続ければ、結局は
その人の安心立命に役立つやうになつてゆくものだ」

今の日本人が最も肝に銘ずべき語録が並んでいるよねえ(^^♪


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■87分 日本 ドラマ/ロマンス/文芸
監督 川頭義郎
脚色 田中澄江
原作 川端康成
製作 小梶正治
撮影 荒野諒一
美術 岡田要
音楽 木下忠司
録音 小尾幸魚
照明 飯島博
編集 杉原よし
出演
鰐淵晴子 踊り子薫
津川雅彦 学生水原
桜むつ子 たつ
田浦正巳 栄吉
城山順子 千代子
瞳麗子 百合子
中村是好 小間物屋
戸塚雅哉 学生坂本
佐竹明夫 事務官
吉川満子 茶店の老婆
小林十九二 湯ヶ野の洋品店主人
浅茅しのぶ  花菱の女将
野辺かほる 甲州屋の老女中

昭和の初め、春浅き伊豆路をゆく疲れた足どりの一行があった。中年女のたつに、娘の千代子、その愛人栄吉、千代子の異父妹薫、それに傭いの踊子百合子で、彼らは旅芸人だった。その同じ道を、一高生の水原と友人坂本が修善寺をさして歩いていた。その夜、宴会の席に出た薫は、官吏の客に無理やり盃をさされ困惑しているところを同宿の水原に助けられた。翌日、後になり先になり天城越えをする薫と水原のむつまじい姿がみられた。そんな二人に百合子が嫉妬の目をむけた。旅芸人と一高生とのそぐわぬ取り合わせは村中の悪童たちにはやしたてられた。水原は薫に対する思いやりから鳥打帽を求めてかぶった。たつは薫が水原に愛情を抱き始めたのではないかと心配したが、千代子は「二人ともまだ子供ですもの」と屈託なげに答えるのだった。百合子が失踪した。薫は自分のためだと泣き出したが、百合子は見知りの小間物屋から芸者になることをすすめられていたのだ。下田に着いた夜、過労のため千代子が流産した。たつは昔の弟子で、今は小料理屋を営んでいるおせんに借金を頼んだが、冷い返事だった。水原はたつの苦境を救おうと、父の形見の腕時計をもって金策に奔走したが思うにまかせなかった。水原が東京に帰る夜が来た。デッキにたたずむ水原の目に、走ってくる薫の姿が映った。ただ一言、「薫ちゃん!」--その声は暗い波間にこだまして薫の胸にしみわたった。

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