豚と軍艦 (1961)

[091]ドブ板通りで豚のように生きて、豚のように死んでいったチンピラ

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(2008/05/03の記事に加筆、修正)


いまのエネルギッシュな韓国映画に負けない邦画はなんだろう。
全盛期はたくさんあったが、とりあえずこれかなあ。
と取り出して観たのが、この「豚と軍艦」。
誰しもが認めている今村昌平の傑作中の傑作(^^♪

なんたってタイトルがいい、抜群。
「ミシンとこうもり傘」じゃないが、ものすごくシュールで、
え~って驚かない? 豚と軍艦がどう繋がんのよって(笑)。
観るとわかるんだけどさ。

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横須賀のドブ板通りを舞台に、
やくざのチンピラ欣太(長門裕之)と、
その恋人春子(吉村実子)の生き様を描いた作品。
はじめて観たのは10代の後半だったのかなあ。

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ラスト近く、欣太が怒り狂って、
トラックに詰め込まれた豚100頭を解き放つのだが、
ドブ板通りを駆け抜けるその豚の大群の映像に圧倒されて
数日、悪夢にうなされたの、いまも憶えてる(^^♪

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欣太が豚をドブ板通りで解放するのは、
結局、自分が豚小屋に閉じ込められた豚みたいな人間だったことに
やっと気づいたからなんだろね。

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最後は、その豚に圧殺される人間たち(やくざたち)。
監督・今村昌平のまさに独壇場。

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しかしどうだい、このキャスティング(^^♪

長門裕之、吉村実子、三島雅夫、丹波哲郎、大坂志郎、
加藤武、小沢昭一、南田洋子、佐藤英夫、東野英治郎、
山内明、中原早苗、菅井きん、西村晃、初井言栄、
高原駿雄、殿山泰司、城所英夫、武智豊子…。

凄いよねえ。(溜息)

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しかもみんな若くて、ドブ板通りでほんと、
豚とひしめきあうかのようにからだ全身張って生きてるよ。
演技してる。
その汗と息遣いがもう画面からはみ出さんばかり(^^♪

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こうした活力はやっぱり
「異なる」米軍兵士たちとともに生きていかざるをえなかった
せいかもしんない。

いまの日本が活力を失ったのは高齢社会のせいもあるのだろうが、
そういう異なるもの(外部)を見失ったせいかもしれない
なんて思ってしまうよね。
異なるものを内部に強引に作りだして自滅の道を歩んでるのかも
しれないって?(^^♪

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私が吉村実子のファンになったのはこの映画から(^^♪

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なに、このわざとらしい俳優? なのになんでこんなにいいの?
と丹波哲郎のファンになったのもこの映画から(^^♪

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それとやっぱり長門裕之だよね。
「太陽の季節」を観たときはそうでもなかったのだが、
この映画観たとき、「あ、やっぱすげんだ!」って感動したなあ。
もちろんいま観ても凄くいい。

まあ、今村昌平の前で、
生半可な気分でやってたらぶっ飛ばされたのかもしんないけど……。

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あ、武智豊子さん。
ちょっとしか出てないのだが、懐かしくて、
あの威勢のいいダミ声を聞いてるだけで涙出ちゃったよ(^^♪

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余談。
横須賀とその周辺は私の通った釣り場なので、
「あ、ここはあそこだ。あ、ここは…」って観る楽しみもあった。
当時とはむろん地形以外すっかり変わっちゃってるんだけどさ。

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久しぶりにまた横須賀行きたくなっちゃった。
いまの女子高生たちも黒人兵たちとマックのハンバーガー食いながら
デートしてんのかなあ(^^♪


●minmiさん
minmiさんとか私のほうが絶対に正しい映画ファンです(笑)。
「変わった趣味してるね」と言った先輩にこんど会ったら、
そんなこと言ってたら、由緒正しき映画ファンから
仲間外れにされちゃうよ~、と、ぜひお伝えください……(笑)。
いや、もしかしたら、先輩、「女性なのによくあんな映画観たね」
と言いたかっただけなのかな……?
いまの東京、日本を築いたのは、おっしゃる通り、
東京湾の水上生活者や、ヤクザ、港湾労働者、工場労働者ですよね。
高度成長期、かれらが東京湾を埋め立てて、
いまの東京と日本を創り上げていったんです。
「ドレイ工場」「酔いどれ天使」よかったですよねえ。
ああいう世界をソフトな形で受け継いでいったのが、
じつは山田洋次の「寅さん」じゃないかと私は疑ってるんですよ……。

●minmiさん
「にっぽん昆虫記」、いいですよねえ。
今村昌平の代表作は、
ひとによって好みで言っていいんじゃないでしょうかね。
笠智衆、小津映画だと空気淀んでますか(笑)。
私は大好きなんですが……。
先輩、お亡くなりになったんですか。
お偲びしてこんど「にっぽん昆虫記」探して観ます……。

●てっせんさん
日本にも昔はいい俳優めちゃくちゃたくさんいたんだなあ
と感動します。
高校生のころ、村山知義・演出、西村晃・主演の
「忍びの者」という芝居を観たことがあるんですよ。
西村さん、なんと天井からストンと飛び降りてみごとに着地しました。
え~っ、と痛く感動しましたねえ……。
殿山泰司や三島雅夫を観ていると、おっしゃるように
こういう俳優、もう二度と現れないだろうなあと嘆息します。
わたしの師の唐十郎はこうした俳優のありようを
「特権的肉体」と呼びました。
いまさらながら上手いこと言うなあと感動ものですが、
なんか日本人、すっかり変わっちゃいましたよね。
噛んでもとんと味がなくなっちゃって……。(笑)

●てっせんさん
「忍びの者」の舞台を名まで観たなんて、いま考えると、
ジャイアント馬場が巨人のピッチャーをやってるのを見たのと
同じくらい奇跡的なことですよね…(笑)。
あ、当然、現役の川上哲治、水原茂監督も見てるわけですが…(笑)。
映画「忍びの者」シリーズももちろん観ています。
わたしはあの形容しがたいお顔の伊藤雄之助さんがもう大好きでした。
これも考えればジャイアント馬場が好きなのと同じ……?(笑)

ありがとうございました。

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■108分 日活 ドラマ
監督: 今村昌平
企画: 大塚和
脚本: 山内久
撮影: 姫田真佐久
美術: 中村公彦
音楽: 黛敏郎
出演
欣太 長門裕之
春子 吉村実子
日森 三島雅夫
鉄次 丹波哲郎
星野 大坂志郎
大八 加藤武
軍治 小沢昭一
勝代 南田洋子
菊夫 佐藤英夫
貫市 東野英治郎
崎山 山内明
弘美 中原早苗
ふみ 菅井きん
矢島 西村晃
つね 初井言栄
宮口医師 高原駿雄
陳 殿山泰司
王 城所英夫
エプロン婆さん 武智豊子

基地の町・横須賀で、米軍の残飯を流用した養豚でひと儲けをたくらむやくざ組織。豚の飼育係を任され一時出世の夢を見たものの、内輪揉めに巻き込まれて自滅していくチンピラ男。その恋人で、男たちに蹂躙されながらも自分の足で歩んでいく女。二人の生きざまを通して、戦後日本の現実を寓意的に描く。
日本を代表する映画脚本家で、社会の片隅に生きる普通の若者を描く山内久の代表作の一つ。

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